東京が26年ぶりに人口減 課題は? – WEDGE Infinity

BLOGOS

東京都の2022年1月1日時点の推計人口が1398万8129人で、前年同期比4万8592人減と、1年間を通じて減少した。1月1日の都の人口が減ったのは1996年以来、26年ぶりである。報道では、「コロナ移住」などが取り沙汰されているが、それは一面を捉えているにすぎない。見逃してはならないのは、外国人の入国だ。



(SB/gettyimages)

実は東京の人口は外国人が下支えしている。政府は今月から、水際対策の段階的緩和を進めている。詳細は後述するが、今後、東京が世界に誇る「世界都市」の一つとして、外国人に「長く住みたい」と思わせる街づくりを進めていけるかが今後の明暗を分けるカギとなる。

推計人口は、都が20年10月1日現在の国勢調査人口の確定値を基に、区市町村の住民基本台帳人口の同年1~12月を集計し、今年1月1日現在の数値を推計している。

[画像をブログで見る]

内訳を見てみると、他の都道府県との移動を示す社会増減は3897人増、自然増減は3万682人減、出入国などによる「その他」の増減は2万1807人減となっている。昨年1月1日時点の推計人口を見てみると、社会増減が2万9618人増、自然増減が1万8537人減、出入国などによる「その他」の増減が2481人減となる。それぞれの増減の変化で何が起きているのか見ていきたい。

「リモートワーク」だけでない人口減の要因

まず、社会増減について、昨年、約3万人増加していたところから大きく規模を減らしている。これはやはり、コロナ禍の側面が大きい。実際、コロナ前の20年1月1日現在の推計人口では、8万741人の社会増が起きている。景気の悪化によるものもあるが、コロナ禍で進むリモートワークの影響も大きい。多くの企業が人材獲得に向けた雇用条件の一つとして「リモートワーク」を設けており、この流れはそう簡単には止められないだろう。

自然減に関しては、高齢化によるものが大きい。住む場所を変えるのは多くが若者で、高齢者は動かない傾向がある。コロナ禍においてもそれは変わらず、都内に残った高齢者が亡くなったとみられる。また、21年の死亡数が20年よりもかなり増えているので、デルタ株の猛威の影響があろう。

出入国などによる増減で注目すべきは、日本人と外国人の内訳だ。今年は日本人が2979人増、外国人が2万4786人減、昨年は日本人が2万2994人増、外国人が2万5475人減となっている。これに対し、コロナ禍前の19年の数字を見ると、日本人が3595人増、外国人が2万7895人増である。

昨年の日本人の増加は、コロナ感染拡大で海外赴任や留学から帰国した日本人が多かったためだ。対する外国人は、19年の約2万5000人増というのがコロナ前の例年の数字だった。毎年、2万5000人の増加から2万5000人の減少となっては、その影響は大きい。

今年の東京都の人口減は、外国人の入国がコロナで閉ざされてしまったことも大きく起因している。リモートワークの推進という経済および社会の流れが進んでいる中、東京都にとって他の都道府県からの大幅な社会増というのは、今後、期待できない。現状の人口規模を維持するためには、外国人を受け入れる体制を構築することが必要となっている。

インバウンドでなく、共生の街に

日本に入国する外国人の動きとしては、まず、東京に入り、働く場や学ぶ場を求めて地方へと移住することが多い。実際、東京都では、5000人前後の外国人が毎年、社会減している。海外の人にとって、「東京」は憧れの場所ではなく、情報集積の場であり、友人や知人、またはそこで得られた情報を基に住む場所を考えている。

今後、東京は、コロナ前に毎年来ていた2万5000人という数を増やしていくととともに、地方への移住を減らしていかなければならない。それはつまり、外国人に定住してもらう「共生社会」の街づくりを進めていくことが必要なのだ。

現状の東京の街にそれができているのだろうか。まず、街中の標識を見てみると、使われている言語が英語、中国語、韓国語ぐらいだ。これは昨今のインバウンド喚起により進められてきたもので、あくまで「観光客」というのを対象としてしまっている。日本に移住してくる人ということとなると、東南アジア諸国も多くなってくるので、そうした国々の言語にも対応しなければならない。

現代では、スマートフォンの画面上に多言語を表示することもできるようになっており、そうした最新技術の活用も考えられる。街全体で「言語の壁」を乗り越え、国際都市を達成させる必要がある。

また、他国の文化をどこまで取り入れていくのかも考えていかなければならない。イスラム教徒が食べられる「ハラール」認証といった言葉が広まりつつあるが、異国の文化というのはそれだけではない。各国の文化をどう日本風に受け入れていくのか。「郷に入っては郷に従え」と言ってしまってはいけない。

緩く働ける人を増やす

外国人の受け入れでこれまでのように「労働者」として見るだけでは、「回転ドア」のように人が出入りするだけになってしまう。長く住んでもらう、生活することを考えると、地方創生で各自治体が進めていた「移住促進」で強みとしていたことを考える必要がある。それは「治安」や「教育」であり、特に力を入れていくべきは教育だろう。

日本に入国してきた外国人にしっかりした教育の提供、さらに子育てできる環境を整備していかなければならない。それが国際的に見ても日本の強みとなり得る。すでに〝移民大国〟である米国や人口減少が進んでいる中国と人材獲得競争へと突入する中で、賃金や待遇という面で日本が勝つことは困難である。住みやすさ・居心地の良さで魅力を創出していく必要がある。まさに日本が世界に誇る「安全・安心」もウリになるはずだ。

これは、諸外国から優秀な人材を呼び込むことはもちろんだが、一方で、いわば「ケバブ屋で働く」といったような〝庶民〟がたくさん暮らしているという状態だ。そうした人々が経済活動を行うし、子育てや街づくりにも参与する。日本に移り住んだ外国人の二世や三世が大きなことを成し遂げるかもしれない。なぜなら、今、世界を席巻するGAFAの創業者はみな、そうした方々なのだから。

東京は世界都市ランキングの上位を目指している。上位に比べた東京の大きな課題といえば国際性であろう。外国人が活躍できるさまざまな仕事があり、その外国人の活躍が東京の魅力をさらに高めていく、という好循環を生み出さないといけない。そのためには、まずは「来てみたい」と思わせる発信が必要だし、受け入れる努力もしなければならない。

そうした国際性を出していくためには、短期の視点ではなく、長期の視点が求められる。26年ぶりの人口減少は東京にとって外国人との共生社会を築いていくことの必要性が高いことを浮き彫りにしたといえよう。

タイトルとURLをコピーしました