今週のメルマガ前半部の紹介です。
転職というと、ちょっと前まで20代が中心で、企業の側も「中途はあくまで新卒採用の穴を埋めるためのもの」くらいのスタンスでした。
でも最近は40代以降の転職がものすごく盛り上がっていて、むしろ20代の転職はかすんでみえますね(というか“第二新卒”って言葉はもう人事の間では死語になりつつあるような……)。
メディアでも毎週のように40代以上の転職を取り上げています(↓最近の例)。
【参考リンク】40歳以上のITエンジニアの需要が右肩上がりで上昇
【参考リンク】40、50代こそ「資格・検定」の取得に挑戦するべきだ
この40代転職ブームは一過性のものなんでしょうか。。それとも長く続いた終身雇用の果てに生まれた新たなステップとして定着するんでしょうか?
非常に興味深いテーマなので取り上げたいと思います。
40過ぎの転職がクローズアップされるわけ
ふってわいたような転職ブームですが、これはあくまで一過性のものにすぎないと考えている人は少なくないです。
曰く「コロナ禍で人々の労働観が変わったから」「バブル世代が多すぎて、企業が様々な手で早期退職させているから」etc……
まあそれも一理あるでしょうけど、ちょっと動機としては弱いかなという印象です。特にそれだと企業サイドで40歳超の採用が広がりつつある理由が説明不可能です。
結論から言うと、筆者は40歳超の転職はこれから日本に定着し、さらに幅広い業種に浸透するだろうと考えています。理由は、労働者と企業双方にとってその方がメリットが大きいからですね。
働く側から見たメリット
働く側から見た流動化のメリットとは何か。もうこれは単純に、今自分が40歳前後で会社員やっているとして、今の会社で70歳まで働き続ける未来を想像してみてください。
入社時に職務記述書を取り交わすジョブ型と違い、メンバーシップ型は終身雇用と引き換えに会社が会社都合でなんでもやらせるスタイルです。
「たまたま今与えられている仕事が天職でした」という人はもちろんそれで構いませんが、そんな幸運な人はどれだけいるんでしょうか。
あ、よくこの話をすると「仕事なんて我慢我慢!とにかくバカになって会社にしがみついたもん勝ちだ!」って反論が来るんですけど、それって定年が55歳だった頃の考え方ですから。
「70歳まで我慢して、本当にやりたいことはその後に」という生き方はいろんな意味で高リスクでしょう。
だったら、これまで積み重ねてきたキャリアをもとに、自分の希望するキャリアと自身の市場評価を天秤にかけつつ新たな居場所を探すというのは、とても合理的かつ前向きな選択だと筆者は考えますね。
企業から見たメリット
これまで何度か言及してきましたが、今、日本企業が直面する最大の人事的課題とは「中高年社員の低モチベーション問題」です。
・従来の年功序列制度の枠組みだと、役員まで狙えるようなエース級を除き、ほとんどの従業員は40代で出世も昇給も頭打ちになる
・すべてとは言わないが、そうした社員の多くが「挑戦しない、新しいことに手を挙げたがらない」という消化試合モードになる
・従業員の平均年齢が40歳を超える企業では、理論上はそうした消化試合モードの従業員が過半数を超えてもおかしくない状態
よく従業員のことを“人財”とか言ってるキラキラした会社がありますけど、この場合は“人罪”というイメージですね(苦笑)。
ではいかにすればこの問題は解決するか。これも何度も言っているように、ジョブ化して人事評価の基準を勤続年数から担当する職務にシフトし、何歳からでも挑戦できるシステムに変えるしかないわけです。
「年齢なんてどうでもよい、これからどういう仕事で組織に貢献ができるかだ」という環境整備がされてはじめて“人罪”は“人材”にも“人財”にもなりうるのです。
これが現在起こっているジョブ化の背景なんですが、ジョブ化の波は、企業の採用トレンドにも徐々に影響をもたらし始めています。
当たり前の話ですけど、担当できるジョブベースで人材を評価するなら、職歴ゼロ(しかも少子化でただでさえ採りづらい)の新卒にこだわらず、ジョブを身に着けている中高年も選択肢に入れる方が合理的なんですね。
フォローしておくと、現時点では40歳超の採用を増やしているのは新興企業中小企業が中心です。でも大手でジョブ化がさらに浸透すれば、40歳以降の転職は国内においてごく自然な流れとして定着するでしょう。
以降、
40歳過ぎの転職に向いている人、不向きな人
「40代でもう一回就活」が一般的になると日本は劇的に変わる
Q: 「学歴フィルターは文系の方が重視されている?」
→A:「文系でメンバーシップ型採用しようと思ったら学歴くらいしか見るものないですから」
Q: 「リモートワークで楽をするのは悪?」
→A:「手を抜いてもいいですけど、それはたぶん会社も把握してると思われます」