小田急の子ども50円均一は大革命 – 土屋礼央

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2021年11月。小田急電鉄から衝撃のニュースリリースがありました。
https://www.odakyu.jp/news/o5oaa10000020qp8-att/o5oaa10000020qpf.pdf

2022年春からICご利用時の小児運賃を小田急線内一律50円とします。

ギョエーーーー!!! 凄すぎる!!!!

ICカード利用時、どこまで乗っても現在の小児の初乗り運賃63円をも下回る50円均一。という事は新宿から南新宿まで利用しても50円なのはもちろんの事、新宿から小田原まで利用しても50円なのだ!! 全部50円!!

これはお子さんのいる家族は嬉しいだろうなぁ。

今まで期間限定などで小児運賃を値引きする事はありましたが、持続的に大人運賃の半額以下に低廉化するのは、全国の鉄道初の試みとの事。

凄いねー!!! そうそう、これこれ!! 企業努力鉄としてはこれ以上ない興奮!!

あ、失礼しました。企業努力鉄というのは、当たり前に存在しているもの(サービス)を当たり前と捉えず、そこに至るまでの、人々の行動を想像する事でより感動し、より喜びを得ながら鉄道を利用する人たちの事を言います。(僕以外、あまりこう名乗る人はいませんが…)

「私たちの儲け以上に利用される方の笑顔が見たいんです!」って事ですよね。

くーっ!

鉄道の半分は優しさで出来ていると思っている僕からすると、この一律50円化サービスは優しさ以外のなにものでもないのです。

50円均一でもプラスになる計算

「でもそんな事して、小田急は経営大丈夫なの?」

そう思う人も多いでしょう。しかし小田急には勝算がありました。詳しくは色々なサイトで記事になっているので是非読んでいただきたいのですが、

鉄道業界に衝撃、小田急「小児IC運賃50円」の勝算 – 東京経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/470324

ざっくり言うと、
・小田急の鉄道運輸収入に占める小児運賃の割合はおよそ0.7%で8~9億円程度。
・それを50円に引き下げる事での減収は2.5億円ほどの見込みで割合で言うと全体の0.2%
・しかし「子供が50円なら家族で箱根に行こう!」となり、大人も小田急を利用、観光地のグループ会社で買い物してお金を落とす。etc…

50円均一化の効果で他の収入が増えて、減収分は回収できるという目算になっています。かつ、IC乗車券のみのサービスにする事で、切符の紙代のコストカットにもつながるなど良い事ずくめ。

お客さんも喜ぶ、小田急も喜ぶ。少子化問題への貢献で行政も喜ぶ。

なんて全方位に優しいアイディアなのだ…。わたくし、このニュースに何度も感動しております。

こんな感動はiPhoneが誕生した時以来です。

もしかしたら、この子供料金50円均一は、iPhoneが浸透したように、今後の鉄道業界のトレンド、いやスタンダードになる気がしてならない!!

僕の勝手な予想ですが、数年後、他の鉄道会社もこのサービスに追随すると思います。体力のある首都圏が中心だと思いますが、収入がトントンでイメージだけ上がるならやらない理由はない。

もしかしたら全国どこに行っても小児運賃一律50円! そんな時代もすぐそこにやってくるかも知れませんね。

「みんな平等」が正しいとは限らない

でもです。
全方位の人に優しいサービスって、一律平等料金が最も優れたシステムって事はないと思うんです。

これを機に、運賃の差別化も一気に進む気もしております。通勤型列車のグリーン車連結のあれです。

日本の人口減は避けられない状況で、鉄道の利用者は減る一方。今まで通りの運営をしていたら、会社の維持が出来ない。いくら小児運賃を50円にして家族を取り込んだとしても限界があります。

鉄道会社にとってグリーン車運賃収入はドル箱。最近通勤型の列車にも指定座席車両が増えているのはそういう事です。湘南新宿ラインも今は2両がグリーン車ですが、今後は4両、なんなら半分グリーン車みたいな時代がやってくるかも知れません。

このサービスを人口増時代にやろうとしたならば、「おい鉄道会社! なんて事をするんだ! 普通車両が減るから乗車率が上がるぞ! 儲けばかりだなお前たちは!」と乗客を敵に回してしまい、今の小田急とは真逆のイメージになってしまいます。

しかし現在は、人口減に加え自宅でのテレワークも増えました。今後さらに乗車率が下がっていく事が予想されます。ですから、半分グリーン車なんて編成も可能になるわけです。より快適な環境には追加料金を。

ちょっと乱暴な言葉をチョイスするなら、「取りづらい所からは取らず、取りやすい所から取らせてもらう」という事が大切になっていく気がします。

我が国は一律料金でみんな平等! を良しとしている部分がありますが、取れる所からは取った方が良いのです。

「なんかガメツイ考え方ー、冷めるー。差別ー」

そう思う人もいるでしょう。

確かに、以前の1等車、2等車、3等車の等級制だった時代は下等車は劣悪な環境でした。

でも昔とは違うのです。

普通車が既に超快適なんです。グリーン車との格差もだいぶ縮まりました。

それでもその僅かな差にお金を使いたい。そう思う乗客からは、お金を頂けば良いのです。

無料のYouTubeユーザーとYouTube Premiumユーザー、ゲームアプリの無課金勢と課金勢と同じで、最近のゲームアプリは「足元みやがって!」みたいな課金方法は皆無ですよね。素晴らしい進化です。

鉄道業界もこれにヒントにしない手はありません。元々、定期券という、サブスクのパイオニアみたいなサービスを行っていた鉄道会社。お得に利用してもらう事には長けているのです。これから先、快適環境にお金を使う方向にどんどん進んでいくと思われます。

収益がより安定すれば、小児運賃の低廉化のような、利益を求めないサービスの充実も図れる。結果として、どの環境の人にも平等の喜びを感じてもらえるのです。

これもまた、全方位に喜ばれるサービスの循環ですよね。

そう思うと、飛行機はよく出来ていますね。ファーストクラスとビジネスクラスの利益がある事で、我々はエコノミー料金で飛行機に乗る事が出来ている。なんて全方位に優しい仕組みでしょう。

鉄道業界も飛行機ビジネスに近くなっていくと思われ、我々ユーザー側もそれを望んでいると思います。

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