露が一方的に非? 朝日社説に疑問 – 猪野 亨

BLOGOS

 ウクライナを巡るロシアと米国、NATOとの緊張関係は続いています。
 ロシアの安全保障からは、これ以上ロシアに近接したウクライナなどをNATOに加盟させない、兵器を配備しないというのが要求です。
 米国側は、それはそれぞの国の主権に関わることといって拒否。要は、どうみてもロシア包囲網を作り上げますよというシグナルにしか聞こえません。

 どの軍事同盟に参加するかどうかはそれぞれの国の主権(自由)に関わることというのは形式的根拠としては正しいということになりますが、しかし、実質はかえって対立を生む危険な行為でもあります。
米国、NATOとロシアの対立 ロシアが一方的に悪? 軍事力での対抗が招く危機的状況

 朝日新聞が社説を掲載しています。
(社説)ウクライナ危機 ロシアの主張は通らぬ」(朝日新聞2022年2月4日)

 ロシアに一方的に非があるという論調ですが、ロシアの行為を武力による威嚇というのであれば、ロシア包囲網も同様に武力による威嚇ではないでしょうか。
 要は武力による威嚇がお互いにエスコートしている状態と言えます。

 私が朝日新聞の社説でもっとも気になるのはこの部分です。
「各国には安保政策を自ら決める権利がある。他国の主権を勝手に限定するプーチン氏の対外姿勢は到底容認できない。」


2022年1月31日撮影

 自ら決める自由がある…
 形式的にはそうでしょう。でもそれだけですか。
 軍事同盟はその国の安全のためという発想は、これまでの第1次世界大戦、第2次世界大戦のときの発想と同じではないでしょうか。東西冷戦下も同じです。
 東西冷戦の終結に誰もが安堵したのは現実的な軍事衝突の可能性が減ったからです。軍事同盟が戦争抑止ではなく、戦争を大きくしてきたことの教訓こそあったはずです。
 何故、ロシア包囲網を作らなければならないのか、その辺りの視点が朝日新聞からはすっぽりと抜け落ちてしまっています。
 米国中心の世界秩序こそ唯一絶対と考えるのは、もはや時代遅れです。
 米国の相対的地位の低下を補うのが軍事同盟となりました。
 今や米国単独の力でロシア、中国に対抗できるだけの力はなくなりました。それは軍事、経済の分野で同盟国に応分の負担を求めるという意味合いではなく(安保タダの理論)ではなく、もはや米国の国力の低下を如何ともしがたいところまで来てしまっていることを意味します。
 朝日新聞の社説は、そうした米国の思惑に沿うものでしかなく、カビの生えた臭いしかありません。
 ロシアを一方的に非難するだけで足りるはずがありません。

 朝日新聞社説も申し訳程度には触れてはいますが、本質ではありません。
「米国の責任も重い。ロシア側にも非があるとはいえ、ソ連時代に結ばれた中距離核戦力全廃や迎撃ミサイル制限の条約を失効させたことが、ロシアの疑心暗鬼を強めた側面は否めない。」

タイトルとURLをコピーしました