今の東京の魅力とは何か。マーケティングアナリストの原田曜平さんは「それは物価の安さだろう。なかでも数百円でしっかりした食事ができるのは先進国ではたいへん珍しい」という――。
※本稿は、原田曜平『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)の一部を再編集したものです。
※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Hiromi Kudo
東京の一等地の地価はニューヨークの半分以下
「100万ドル(約1億1000万円)でどれくらいの面積の土地を買うことができるか?」イギリスの不動産コンサルタント会社ナイトフランクは、それを世界の各都市における一等地で比較しました。図表1がその結果です(2018年時点)。
『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)より
富豪が密集して住んでいるモナコや、世界的にも有名な人口密集・物件不足地域である香港は別格として、東京の一等地の地価はNYやロンドンの半分以下、シンガポールやLAの3分の2以下。パリやシドニーはおろか、上海より安いのです。ベルリンは東京より少し安い程度でした。
「それでも、現に東京都心の家賃は高すぎて住めない!」という方もいらっしゃるでしょう。たしかに都心の新築マンションの家賃は高い。しかし、都心であっても探せば安い中古物件等がたくさん存在するのが東京の魅力です。築年数や狭さを気にしなければ、一般企業の新入社員の若者が六本木や青山の1Kや1Rに住むことも、決して不可能ではありません。
月34万円でも「ものすごく安い」サンフランシスコ
一方、LAやNYの家賃は東京都心とは比較にならないほど高額です。私が見知ったケースとしては、ブルックリンのかなり端っこ、貧民街の地域にある古い都営団地のようなマンションですら、日本円にして家賃30万円でした。いくらなんでも……と驚いたものです。
日本でも若者に人気のアメリカのドラマ『ゴシップガール』では、マンハッタン地区に住むお金持ちの子供と、ブルックリンに住む庶民の子供できっぱり生活レベルが隔てられている姿が描かれています。
しかし、東京の場合、ある程度同じような傾向はあるかもしれませんが、NY程きっぱりエリアによって人々が分けられていることは少ないですし、「港区女子」(東京都港区を中心とした、ある程度裕福な男性がいるエリアに夜な夜な集う女性たちのこと)という言葉に象徴されているように、実際に本人が港区に住んでいなくても(金銭的に自分では住めなくても)、港区に出没し、港区的なライフスタイルを送ることもできるのです。
以前目にした記事では、サンフランシスコに住む40代前半のエンジニア男性(妻と2人の子供あり)の年収が16万ドル(約1800万円)であるにもかかわらず、「かろうじて食いつないでいる」と語られています。住居費の高騰と物価高のためです。
同記事によると、彼の家の家賃は月3000ドル(約34万円)もしますが、サンフランシスコのベイエリアの家賃は平均4200ドル(約48万円)だそうです。彼曰く「(場所の相場からして)ものすごく安い」のだそう。40代前半の彼ならともかく、これでは賃金の低い若者が住めるはずはありません。
このように東京は、世界の大都市に比べれば住居費がかなり安いのです。
東京ディズニーランドもダイソーも東京が世界最安値
日本経済新聞の「安いニッポン」(2019年12月10日、11日、12日朝刊、後に日経プレミアシリーズより書籍化)という特集記事によると、世界的に見て様々なモノやサービスなどにおいて日本の価格の安さが鮮明になってきているようです。
世界6都市で展開するディズニーランドの大人1日券(当日券、1パークのみ、2019年10月31日時点)の円換算価格は、東京7500円でカリフォルニア1万3934円、パリ1万1365円(ただし変動制)のほぼ半額で上海8824円よりも安く、日本が最安値だそうです。
また、海外26カ国・地域でダイソーを展開する大創産業は、日本では「100円ショップ」ですが、同じ商品が米国約162円、ブラジル215円、タイ214円。中国で生産した商品もダイソーには多いですが、その中国でも153円。
ホテルの予約も、2019年12月13 日から一泊大人2人でロンドンの五つ星・キングベッド・50㎡の部屋は約17万円なのに対し、東京だと同じ条件が約7万円超で済むそうです。
こうした事実も、日本及び東京が、世界的に見て大変物価の安いエリアになってきていることを裏付けています。
ミシュランの星獲得点数は東京がダントツ1位
以上は衣食住の「住」の話でしたが、真に東京が突出してすごいのは「食」です。
世界の都市ミシュランの星獲得数ランキング(2019年度版)を見ると、東京はダントツの1位で、2位のパリの2倍以上の星獲得店があることが分かります。
もちろん、これも一つのランキングに過ぎませんが、これを見ると世界で最もグルメな都市は東京であると欧米人が判断していることが分かります。しかも、欧米先進国には1人一食5万円くらいする高級レストランがたくさんありますが、東京にもそうしたレストランはあるものの、銀座の高級寿司店に行っても1人一食2、3万円程度で、欧米先進国に比べると「最高級」であっても「リーズナブル」なところが重要なポイントです。ちなみに、「食べログ」で1人当たり8万円以上かかるレストランを「東京」で検索すると18件出てきますが(2021年5月時点)、NYにはもっとたくさんあります。