美容業界の関係者以外の人々にしてみると、美容製品を実際に作っているのは誰なのか、そしてその会社のオーナーは誰か、という実情は謎に包まれている。たとえば、一般顧客は、ガシー・レンカー(Guthy Renker)という会社がジェイロービューティ(JLo Beauty)の開発に携わっていたことを知らないかもしれない。またモルフィー(Morphe)を所有しているフォルマブランズという会社が、アリアナ・グランデ氏の新しいブランドであるレム・ビューティ(r.e.m. beauty)を作ったことに気づいていない人もいるだろう。
だが、セレブリティのビューティブランドが一般的になるにつれて、それを戦略的に構築しようとする企業も同様に増えている。この分野に新たに参入したのが、タレントエージェンシーのCAAと提携して設立されたインキュベーター、クリエイティブ・ビューティ(Creative Beauty)だ。CEO兼共同創業者は、ギルト(Gilt)の創業者としてよく知られているアレクシス・メイバンク氏である。
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クリエイターやセレブ主導のデジタルネイティブなブランドを市場に投入
クリエイティブ・ビューティを立ち上げたきっかけについて、メイバンク氏は「業界が一夜にして変化する様を見ていた」と語る。もっともうまくいっていたビジネスは「本当に強い視点をもった人々が率いていて、主にソーシャルメディアに後押しされて若い消費者とまったく(新しい)形でつながっている」ものだった。彼女はそこにチャンスを見出した。CAAで事業開発の責任者を務めていたマイケル・ヤノーヴァー氏との話し合いを重ねた結果、クリエイティブ・ビューティはパンデミックの最中に設立された。現在、ヤノーヴァー氏は同社の役員となっている。
クリエイティブ・ビューティは、クリエイターやセレブ主導のデジタルネイティブな新ブランドを、主にZ世代のオーディエンスの共感を呼ぶようなかたちで、すばやく市場に投入することを目的としている。手始めにチームを組むことになったのは、23歳の俳優ペイトン・リスト氏(インスタグラムのフォロワー数1850万人、TikTokのフォロワー数430万人)である。リスト氏は、ディズニー・チャンネルのドラマ『ジェシー!(Jessie)』で人気を博し、現在はネットフリックス(Netflix)のドラマ『コブラ会(Cobra Kai)』に出演している。1月にローンチしたブランドは、プレイビューティ(Pley Beauty)という。
リスト氏は同社が求めていたパートナー像の条件にかなっていたとメイバンク氏は語る。「私が最初に探す条件のひとつに、すでに美容に対する情熱があり、スタイルやヒント、ルックを共有するなどして美容に関する仕事もしている人というのがある。ペイトンには彼女の言葉に真剣に耳を傾けてくれるファンが付いているはずだ」。
またメイバンク氏は次のようにも述べている。「これはエンドースメント契約でもパートナーシップ契約でもない。私たちパートナーとしてのビジネスだ」。セレブリティの創業者すべてに「起業家としての精力的な気概」があるわけではないが、クリエイティブ・ビューティと仕事をする際には、強い倫理観が必要だとメイバンク氏は主張した。「ビジネスがどのように構築され、製品がどのように開発されているのか、その考え方の細部まで、そしてその処方の品質にいたるまで、本当に重要だと考えてくれる人を私たちは求めている」。
そして「ペイトンはこれまでずっと俳優の仕事をしてきた」点も有利に働くという。「人々は、文字通り彼女とともに育ってきたのだ」とメイバンク氏は述べた。
セレブリティのビューティブランドは流行に終わらず定着する
過去にも企業から依頼されたことはあっただろうと思われるが、リスト氏は今まで自分の名前のついた美容製品を持ったことはない。だが今回の特別な機会に、彼女は真のリーダーシップの役割を発揮することができた。「美容は、私の人生と仕事の面で常にとても大きな部分を占めている。だからコラボレーションの機会が訪れたとき、私はリスクを取ることにした。クリエイティブ・ビューティは真のパートナーとなって、プレイビューティでの私のビジョンをサポートしてくれることがわかった。私にとって、自分のブランドが私という人間を真に反映したものであることが重要だったし、その実現の手助けをしてくれるパートナーとともに仕事をすることができて幸せだ」とリスト氏は語っている。
メイバンク氏によると、プレイビューティのブランドはZ世代の価値観をふまえて持続可能性を重視し、まだ非公表だが、プラスチックニュートラルに関する取り組みも行う予定だ。製品や価格帯などの詳細についてはまだ発表はされていない。
セレブリティのビューティブランドはトレンドに終わらず、定着するだろうとメイバンク氏は考えている。そうした意味でも、クリエイティブ・ビューティは2022年にさらに多くのブランドを発表するつもりでいる。「人々が求める製品に根本的な変化がある。みんなオンラインで商品を見つけたいと思っているし、信頼できる人や、美に対するアプローチに本当に共感できる人から購入したいと考えている。クリエイティビティと自己表現に強く傾倒しており、美しさがどのように見えるものなのかを他人から教えられるのではなく、美しさを自分で定義しているのだ」。
[原文:Exclusive: CAA backs new beauty incubator, Creative Beauty — and its first brand is with Peyton List]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)