箱根駅伝でアシックスが大逆襲 – PRESIDENT Online

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1月2、3日に開かれる、箱根駅伝。今回も20大学210人の精鋭選手による白熱のレースが期待されるが、シューズにも注目だ。前回大会でのシューズシェア率はナイキ厚底の95%。そんな中、今回、アシックスに履き替える選手が増えている。スポーツライターの酒井政人さんが、2年前に始まった社長直轄の逆襲プロジェクトを開発担当者に取材した――。

アシックスが満を持して発売したMETASPEED Sky。
アシックスが満を持して発売したMETASPEED Sky。 – 写真提供=アシックス

アシックスが反撃開始! 「前回0人」だった箱根駅伝で大躍進の予感

2017年夏に本格登場したナイキの厚底シューズはロードレースの風景を一変させた。2018年正月の箱根駅伝は1区と9区を除く8区間で区間記録が塗り替えられ、総合記録は19分近くも短縮。ナイキ厚底の爆発力は凄まじく、従来のシューズと比較して、1kmあたり2~3秒ほどの“アドバンテージ”があると計算できるくらいなのだ。

当然、ランナーたちの足元も“ナイキ一色”に染められた。しかし、ここへきてその流れが少しずつ変わり始めている。

この数年でさまざまなメーカーが厚底タイプのシューズを投入。なかでも国内スポーツメーカーの雄であるアシックスが反撃を開始したのだ。

箱根駅伝を間近に控えた今、アシックス(各該当部門の担当者)の声を紹介したい。

箱根路からアシックスが消えた

筆者は、箱根駅伝に出場経験がある。高校・大学時代(1992~99年)には、シューズといえばアシックスだった。ナイキやアディダスはスニーカーとしてすでに絶大な人気を誇っていたが、レース用のシューズは現在ほどの地位を築いていなかった。

「使用ランナー0人」の屈辱を糧に。
「使用ランナー0人」の屈辱を糧に。 – 写真提供=アシックス

国内で圧倒的な存在だったのはアシックスだ。宗兄弟、瀬古利彦、中山竹通、森下広一、有森裕子、高橋尚子、野口みずき……。日本マラソン界のレジェンドたちは、全員アシックスを履いていた。

「本気ならアシックス」というキャッチフレーズが示していた通り、箱根駅伝ランナーたちが着用するシューズはアシックスがダントツに多かった。

ナイキ厚底シューズ登場前の2017年の箱根駅伝に出場した選手210人の使用シューズは次の通りだ。

アシックス67人(31.9%)
ミズノ54人(25.7%)
アディダス49人(23.3%)
ナイキ36人(17.1%)
ニューバランス4人(1.9%)

その後、厚底シューズが年々シェアを拡大していき、前回(2021年大会)では、こうなる。

ナイキ201人(95.7%)
ナイキ以外9人(4.3%)

2017年大会までシェアナンバー1だったアシックスは2019年大会で首位から陥落すると、その2年後、箱根路から完全に姿を消した。

これはアシックスとして衝撃的どころか、屈辱的な結果だったはずだ。同社は前回大会で、早稲田大、帝京大、山梨学院大、専修大にウエア提供をしていた。シューズに関しては、選手各自の判断に委ねられるとはいえ自社製品をプッシュできる立場にあっただろう。しかし、誰にも履いてもらえなかった。開発担当者のひとりはこう言った。

「2021年箱根駅伝の結果はアシックスの商品が評価されていなかったという現実として真摯に受けとめております」

短い言葉ながら悔しい気持ちが伝わってくる。何しろ、アシックスにとってランニング部門は売上高の約半分を占めるのだ。トップ選手の動向は後々、市場に大きく影響することを考えると、早急に立て直しが必要であることは誰の目にも明らかだ。

実はアシックスは巻き返しを図るべく、2年前から動いていた。それは「C-Project」。

2019年11月、ナイキ厚底シューズに負けない新モデルを開発すべく、社長直轄で研究開発、選手サポート、生産、マーケティングなどの若手スタッフを集めたグループを発足。トップランナーのシューズ作りをターゲットにした開発チームは「C-Project」と名付けられた。Cは「頂上(ちょうじょう)」の頭文字からとっている。

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