史上最大の未解決電波ジャック「マックス・ヘッドルーム事件」とは?

GIGAZINE
2021年11月27日 19時00分
動画



1987年にアメリカで発生したテレビ放送の電波ジャック「マックス・ヘッドルーム事件」は、30年以上が経過してもなお犯人が不明という未解決の事件です。この事件当時一体何が起こったのか、海外誌のAll That’s Interestingが解説しています。

The Creepy And Still Unsolved Story Of The Max Headroom Incident
https://allthatsinteresting.com/max-headroom-hack

1987年11月22日21時16分、シカゴのテレビ局であるWGN-TVが放送するニュース番組「The Nine O’Clock News」が突如として中断され、およそ10秒間画面が真っ暗になった後、マスクを付けた謎の人物が画面に向かって不気味に笑いかける映像が放映されました。映像に登場したマスクは、イギリスの音楽番組のために作られたキャラクター「マックス・ヘッドルーム」を模したもの。この電波ジャックは番組中断から30秒後、WGN-TVのエンジニアが周波数を別の送信機に切り替えたことにより解決しました。以下が電波ジャックが行われた当時の映像です。

WGN Channel 9 – The Nine O’Clock News – “The 1st ‘Max Headroom’ Incident” (1987) – YouTube
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エンジニアは電波ジャックが送信機がある建物の内部で行われたものと考えて侵入者を捜索し始めましたが、すぐに今回の映像が別の場所で録画されたものと判明したため、捜索は立ち消えに。そして電波ジャックのおよそ2時間後、新たなジャックが発生します。

同日23時15分、シカゴの放送局のWTTWがドラマ「ドクター・フー」を放送中、またしてもマックス・ヘッドルームの映像に電波ジャックされます。1度目とは違い、映像に登場した人物は加工されたようなガラガラ声で「もうたくさんだ(That does it)」「彼はひどいオタクだ(He’s a fricken nerd)」などとしゃべり出し、WGN-TVのスポーツ解説者であったチャック・スワースキー氏をけなしたり、ペプシの缶を手に持ちながらコカ・コーラ製品の売り文句を暗唱したりとやりたい放題。

Max Headroom 1987 Broadcast Signal Intrusion Incident – YouTube
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その後映像が切り替わり、マスクを取った人物がメイドにお尻をペチペチとたたかれるというシーンが映し出された後、映像は終了してドクター・フーが再開しました。

2回目のジャックの際はWTTWの送信機タワーに勤務中のエンジニアがいなかったため、映像を止めることができなかったと報告されています。WTTWは電波ジャック時の映像をドクター・フーを録画していたファンから入手し、WGNと共同で事件を報道。犯人を「テレビビデオ海賊」と呼んで犯人探しを始めました。

視聴者の中には事件を面白がる人もいたとのことですが、被害を受けた2社とアメリカ政府は断固として立ち向かう方針をとりました。WTTWの広報担当者は「これを面白がる人もいますが、放送信号の違法な干渉は連邦法違反であるため、非常に深刻な問題です」と発言。アメリカ連邦通信委員会(FCC)は事件の翌日、記者団に対し「犯人には、懲役1年か最高10万ドル(当時約1400万円)の罰金、またはその両方が科されることを知ってもらいたい」と告げました。

FCCの調査により、今回行われた電波ジャックは犯人が送信機タワー間に自分の衛星アンテナを設置したことによるものと判明。犯行に高価な機器は必要とされず、適切な位置とタイミングが犯行を成功に導いたのだと報告されています。また、映像が撮影された場所についても調査が進み、映像に映った倉庫らしき建物がある地区を特定することにまで成功しています。

しかし、肝心の犯人についての調査は全く進まず、30年以上経過してもなお真犯人は特定されていません。ただし、何年にもわたって海外掲示板のRedditなどに犯人についてのいくつかの説が浮上しています。最も有力だとされる説の1つは、アメリカ人映像製作者のエリック・フルニエ氏が犯人だというもの。

フルニエ氏のファンは、同氏が作成する人形やマスクを使った奇妙な映像作品と、電波ジャックに使われた映像の類似点を指摘しています。フルニエ氏が作成した映像の1つが以下。

DANCEHOLE MILKBAGS – YouTube
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このことに関して、フルニエ氏をよく知る人物は「彼は放送通信についての知識はほとんどなかったと確信しており、事件当時シカゴにいたとは思えない。ただ、彼がうわさの対象になることを面白がっていたであろうことは認める」と述べていました。フルニエ氏は2010年に亡くなってしまったため、真相は闇の中へと消えてしまいました。

アメリカでの電波ジャックはマックス・ヘッドルーム事件が初めてではなく、同事件の1年前には史上初の電波ジャック「キャプテン・ミッドナイト事件」が起こったばかり。この事件当時ハッキングは比較的新しい犯罪だったために捕まった犯人に科された刑は軽かったとのことですが、軍事的影響を懸念した政府により、マックス・ヘッドルーム事件までの期間にハッキングは重罪となり、罰金額も20倍に上昇しました。

その後も何度か電波ジャックが発生していますが、ほとんどの場合犯人は逮捕されています。All That’s Interestingは、「マックス・ヘッドルーム事件は奇妙で動機も不明、犯人も捕まっていないことから、電波ジャック事件の金字塔と言えます」と締めくくりました。

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