「中年は若者より代謝が少ないので太る」は間違いの可能性、エネルギー消費は20代から60代までほとんど変化がないとの研究結果

GIGAZINE



太ってしまったせいで昔の服が着られなくなった人の中には、「若い頃は何を食べても太らなかったのに」と嘆いたことがある人も多いはず。「若者は代謝が活発で、中高年になると代謝が落ちるので太ってしまう」と言われることもありますが、そうした一般的なイメージに反して「エネルギーの消費は20代の若者も60代の人もほとんど変わらない」との研究結果が、アメリカ・デューク大学の研究者らによって発表されました。

Daily energy expenditure through the human life course
https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.abe5017

Metabolism Changes With Age, Just Not When You Might Think | Duke Today
https://today.duke.edu/2021/08/metabolism-changes-age-just-not-when-you-might-think

Metabolism Changes With Age – But Exactly When Is Quite Surprising
https://scitechdaily.com/metabolism-changes-with-age-but-exactly-when-is-quite-surprising/

What We Think We Know About Metabolism May Be Wrong – The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/08/12/health/metabolism-weight-aging.html


加齢に伴う代謝の変化に関する研究はこれまでにも行われてきましたが、そうした研究の多くは安静時の消費カロリーなどを元に算出した基礎代謝、つまり生きるのに最低限必要なエネルギーを計測するものがほとんどでした。しかし、人間はただ呼吸をしたり心臓を動かしたりするだけでなく、運動や思考などの活動により多くのエネルギーを消費しているため、生存のために使っているカロリーは消費カロリー全体の50~70%程度に過ぎません。

そこで、デューク大学の研究者であるハーマン・ポンツァー氏らの研究チームは、「二重標識水法」という手法を使って、あらゆる年齢層の人々が1日に使う総エネルギー消費量を調べる研究を行いました。

二重標識水法とは、水の構成成分である水素と酸素の安定同位体を使った測定方法のこと。通常の水を構成する水素は質量数が1、酸素は16のものが大半なのに対し、この手法で被験者に飲んでもらう水には質量数が2の重水素と、質量数が18の酸素-18が多く含まれています。二重標識水は体内で普通の水分と均一に混ざりますが、活動量が多い人は酸素を多く使うため、酸素-18の濃度が素早く薄くなります。この原理を利用すると、活動により消費されたエネルギーも含めた総消費量が求められるので、二重標識水法は1日の総エネルギー消費量を調べるのに最適な手法とされているそうです。


ポンツァー氏らが、二重標識水法を使って世界29カ国に住む生後1週間から95歳までの6600人の消費エネルギーを調べたところ、20歳から60歳までの年齢層では、消費カロリーがほぼ横ばいなことが判明しました。

この研究結果について、ニューヨーク・タイムズからコメントを求められたアメリカのペニントン・バイオメディカル研究所のリアン・レッドマン氏は「極めて重要な論文です。きっと教科書に載ることでしょう」と話しています。


今回の研究ではさらに、人の代謝は一生の中で次の4つの段階に分かれることも分かりました。

1.乳児期からエネルギー消費が急上昇し、1歳の誕生日を迎える頃には成人の50%以上に達する。
2.1歳から20歳までは年に約3%ずつ代謝が低下する。
3.20歳から60歳までは代謝の変化が安定する。
4.60歳以降は年に約0.7%ずつ代謝が低下する。

また、これまでは男性に比べて女性は代謝が少ないと考えられてきましたが、体格や筋肉量を補正した結果、男女間の差はないことも判明しています。


ポンツァー氏を特に驚かせたのが、1歳までに成人の半分のカロリーを消費するようになるということです。この結果について同氏は「もちろん成長に振り向けられるエネルギーもあるはずですが、それを考慮しても体の大きさや身体組成から予想されるエネルギー消費量の増加が予想以上でした。赤ちゃんの細胞内では代謝がより活発になる何かが起きているようですが、それが何かはまだ分かっていません」と述べました。

またポンツァー氏は、思春期を迎える10代の子どもは消費カロリーが増えると考えていましたが、そうした変化が見られなかったことについても予想外だったとコメントしています。

研究チームは、人間の発達と加齢に伴う代謝の変化を明らかにした今回の研究により、子どもや高齢者に対する薬の投与量の設定や年齢に応じた健康管理がより適切に行えるようになるとしています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました