Twitter は、「黒人コミュニティ」をいかに支援しているか? : 同社カルチャー/コミュニティディレクターのG・リベラ氏

DIGIDAY

すべてのはじまりは、1本のプレゼンだった。

2018年、当時グローバルエージェンシーのVMLY&Rで、インクルージョン/カルチュラルレゾナンス担当ディレクターを務めていたゴッディズ・リベラ氏が、TEDトークスタイルのプレゼンをTwitterで行った。同氏には、「Black Twitter(Twitterに存在する、アフリカ系アメリカ人を中心としたコミュニティ)」など、これまでずっと疎外されてきたコミュニティに対する、業界の理解を深めるという任務が課されていた。

Twitterでブランドマーケターとの協働を進めるセクション、ツイッター・アートハウス(Twitter ArtHouse)のグローバル責任者を務めるステイシー・ミネロ氏は次のように語る。「とにかく、TEDトークスタイルにおける彼女のプレゼンは抜きん出ていた。彼女は、目的に導かれてアドボカシーとアクティビズムに関わってきた人物だ」。

Twitterに加わった経緯と現在

ブロンクスで育った現在36歳のリベラ氏は、このプレゼンで注目の的になった。Twitterの幹部の目にも留まった同氏は、これがきっかけで、現職であるTwitterのカルチャー/コミュニティディレクターを務めることになった。この役割を得た同氏は、現在、Twitterを含むメディアや広告で、これまで周縁化されてきた人々やコミュニティと、現実世界の関係を構築することに力を注いでいる。「我々が取り上げているのは、メディアや広告、そこで表現されているものに関して、そのプロセスのさまざまな部分でずっと疎外されてきたコミュニティだ」。

2018年に現職に就いて以来、リベラ氏はTwitterのカルチャー/コミュニティチームの補強に取り組んできた。組織作りに関していえば、シニアマネージャーとしてオルブンコラ・“バッキー”・オジェイフォ氏を、アートキュレーターとしてアリエル・アドキンス氏をチームに迎えている。リベラ氏によれば、同チームは、Twitterのエンフォースメントグループや調査部門、広告事業、顧客とパートナーを手を組むことで、多様な声をTwitterのシステムのうちに反映させるために、全社的に活動しているという。

同チームは発足以来、影響力を持つ多様な人々に足場を与えるため、いくつかの取り組みを展開してきた。イベントシリーズ、「#TwitterVoices」はまさにそのひとつだ。このイベントシリーズは、影響力を持つ多様なユーザー同士を個人的に結びつけたり、あるいは彼らをTwitterの首脳陣と結びつけたりすることを目的としている。リベラ氏の言葉を借りれば、「同じ釜の飯を食う」ということだ。「#TwitterPrism」もそうだ。この取り組みは、エージェンシーをはじめとしたマーケティングパートナーが、よりインクルーシブなマーケティング戦略を立てやすくすることを目的としている。

リベラ氏が率いるカルチャー/コミュニティチームは現在、最新プロジェクトである「Voices X」に取り組んでいる。これは、Twitter上にある多様性と影響力に富む声を、ブランドとのコラボレーションや共同制作に結びつけるためのプログラムだ。正式な発表こそまだだが、実際は密かに運用が開始されている。

この取り組みは、そうした声とブランドがコンテンツを共同制作したり提携したりすることで、彼らのメッセージが、世の中に広がっていくきっかけとして期待されている。なおリベラ氏によれば、同氏のチームは現在、Twitterで活躍するインフルエンサーを、ブランド戦略コンサルタントにプッシュする方法も探っているという。

言行一致のための活動

リベラ氏のチームへの注目が最高潮に達したのは、2020年のジョージ・フロイド氏殺害後のことだった。この事件をきっかけに、リベラ氏たちの活動の重要性は一層強固なものになった。当時は「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)」運動をめぐるツイートが目立ちはじめてきたころで、このトピックに関するツイート数は3億9000万件を超えていた。リベラ氏によれば、一時期は毎秒200以上のツイートが投稿されていたという。 この流れを受けリベラ氏とTwitterは、疎外されている人々の支援活動へと乗り出し、サポートを強化すべく、複数の都市での屋外キャンペーンを開始した。

リベラ氏にとって、こうした取り組みはどれも、Twitter流の言行一致のための活動だ。そしてそれは、同氏がTwitterのカルチャー/コミュニティ担当ディレクターに就任して以来の目標に基づいている。

「私がTwitterに入社したとき、もしどれかひとつの目標にチェックをつけなければならなかったら、それは、これまでずっと『疎外されてきたTwitterユーザーたちとの信頼関係の構築』を選ぶだろう」。

そうした、疎外されてきたコミュニティに属するクリエイターたちは、仕事に対する評価や承認、機会均等を求めて、以前から声を上げ続けてきたゾーラ・ウェルズの物語や、「『#BlackLivesMatter』『#OscarsSoWhite』、そしてバイラルを巻き起こしたポパイズ(Popeyes)のチキンサンドなどについてのTwitterモーメントを思い出してほしい。これらはどれも、米国社会に大きなインパクトを与えた。

Twitterをより開かれた場へ

Twitter社がこの記事のために米DIGIDAYに紹介した、社会活動家であり、アディダス社の北米ソーシャル・インパクト・プロジェクト・ディレクターでもあるジャミラ・バーリー氏は以下のように語る。「黒人と、そして黒人文化は、さまざまなカルチャーに多くの影響を与えている」。

こうした声を社会に広めていくのに、Twitterは安全な場所であり、そこではたった280字以下でも公平に声を上げられる。そしていま、とりわけクリエイターエコノミーが活発化するなか、リベラ氏は人々の訴えを鼓舞し、それを発信する人々へのサポート、およびマネタイズの手段を提供することを自身の仕事にしつつある。リベラ氏がこの取り組みを行う以前は、疎外されてきたTwitterユーザーたちは仲間内で語り合い、Twitterを使って共通の体験を共有したり、関心を高めたるに止まっていたとバーリー氏。同氏によればリベラ氏は、(こうした状況を打開するべく)Twitterと広告主、声を上げるユーザー間で交わされる会話の活性化を行ったのだという。実際、不満や改善に向けたアイデアを持つユーザーのために、オープンドアポリシーなるものも、リベラ氏によって導入されている。

「リベラ氏の取り組みによって、Twitterのなかにも、我々と同じような思いを抱き、主張を理解してくれる人がいる、それを実感できるようになった」と、バーリー氏は語る。「その取り組みは、黒人たちをただ『なだめる』ようなものではない。実際にコストをかけるなど、行動が伴っている」。

リベラ氏躍進の理由と今後

電通インターナショナル(Dentsu International)の、電通クリエイティブ・アメリカス(Dentsu Creative Americas)でダイバーシティ、エクイティおよびインクルージョン(DEI)部門のシニアバイスプレジデントを務めるカイ・デブロー・ローソン氏は、リベラ氏がこの仕事で力を発揮できているのは、リベラ氏が黒人女性として、Twitterユーザーとして、そして広告のプロとしての自身の経験を活かして、これらコミュニティの連絡係としての役割を果たせているからだと述べる。これまで疎外されてきたユーザーたちのために、リベラ氏はTwitterを血が通ったものにしているのだ。

「リベラ氏が達成したことのひとつは、これらのコミュニティを活性化させ、Twitterで行われている議論の重要性を高めたことだ」と、ローソン氏は語る。「こんなことができるのは、彼女が世界を渡り歩いてきたたからだろう」。

とはいえ、リベラ氏の取り組みはまだはじまったばかりだ。今後、カルチャー/コミュニティチームを拡大する計画も進行中だという。彼らは先日、チーム初の戦略、および運用担当シニアマネージャーを迎え入れた。まもなく、より広範なユーザーに向けて発表される予定の「Voices X」を推進する体制を整えるためだ。

「私たちはこれからも、口だけでなく、行動で示していく。そして、これらのコミュニティに投資する責任も負っていく」と、リベラ氏。「自分は行動していないのに、ほかの人に行動しろとはいえないだろう」。

[原文:How God-is Rivera helped put Black Twitter in front of marketers

KIMEKO MCCOY(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)

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