魚肉ソーセージは小学校の給食でよく出た。オレンジ色のフィルムで覆われ、上下が金具で閉じてあった。
フィルムの側面に赤くて長四角の小さなシールが付いていて、そこを引っ張ることでフィルムを破って開ける。
これがめちゃくちゃ開けづらい。
開けづらさは不便というより面白みとして受け入れられて、いかに開けられないか、文句を言いながら楽しむみたいな時間があった。
あれから30年(30年!?)、いま魚肉ソーセージ、かなり開けやすくなっているらしいのだ。なんなら1秒で(1秒で!?)開けられるらしい。
ニッスイの「ラクあけ」がすごいという噂
かなり開けやすくなっている、と街で噂に聞いたのはニッスイの「おさかなのソーセージ」だ。
「ラクあけ」と銘打たれたパッケージが採用され、これがめちゃくちゃに開けやすいらしい。
開けやすさが評判になり、またメーカーも打ち出してくるあたりに、魚肉ソーセージのアイデンティティがその開封性にあるのが知れ風情を感じる。
調べてみるとこの「ラクあけ」というのは2019年に搭載されたシステムのようだ。なるほど「最近開けやすくなった」という噂が流れるのもうなずける。
ちなみに噂は近所の友だちにスーパーで聞いた。「街で噂」は比喩ではなく本当なのだ。
マルハニチロは「1秒オープン」
ぜひ開けやすいパッケージで開けてみたいと思いながらさらに調査をすすめたところ、上記ニッスイをシェア2位で追うマルハニチロもパッケージには工夫を凝らしており、その名も「1秒オープン」というシステムが搭載されているらしい。
1秒ってだいぶ短いぞ。(よ~し、開けるぞ~)と脳内で気合を入れるだけでもう2秒くらい経ってるんじゃないか。
こちらは2015年ごろからのパッケージらしく、というとすでに6年も1秒で開けられるようになっていたのか。
めっちゃ開くじゃん
いきなり言うと、両者ともにめっちゃ開いた。開くじゃん! と声が出る。
1本つかんで空に向けかかげ、走ってクラスのみんなに知らせたい。一瞬で開くよ! 魚肉ソーセージ、めっちゃ開けやすくなってる!
そうしてはっと気づいた。スーパーで教えてくれた友達の気持ちが分かったのだ。
体感として、私はニッスイの「ラクあけ」のほうが開けやすいと感じた。つまむべきびろびろの部分の幅がやたらに広いのだ。
魚肉ソーセージのあのびろびろがこんなにびろびろしているのを私は見たことがない。ちょっと「これ合ってるのかな?」と思ってしまうほどびろびろしているのだけど、これが圧倒的なつまみやすさ、ちぎりやすさに貢献している。
いっぽうのマルハニチロ「1秒オープン」もテープに開封心をあおる文章を印刷するなど、強い意欲を感じ頼もしい。
「1秒で開けられますよ」は「1秒で開けさせますよ」でもあるわけだ。俺がお前に開けさせてやるよと。そういう、これは心意気だ。
魚肉ソーセージを最近買ってなかった人ほどおもしろいはず
私はおそらく今回の2商品ははじめて見た(無意識で買って開けて普通に食べて、忘れている可能性もある……)。それだけに感動もひとしおであった。
魚肉ソーセージというものが徐々に開けやすくなっている、進化している、あの頃の魚肉ソーセージでは、もはやないというのはなんとなく知っていたつもりだったが、今や完全に仕上げの時期に入っているのではないか。それくらいの開けやすさだった。
この感動は、魚肉ソーセージを最近食べていなかった人ほど味わえるはずだ。
魚肉ソーセージが知らない間にだいぶ開けやすくなってるよ。知らせを届けることは、老いた父母や地元で暮らす祖父母への孝行になるかもしれない。