今月31日、約4年ぶりに投開票が行われる衆議院選挙。
小選挙区には857人が立候補しており、候補者たちが議席をめぐって激しい戦いを繰り広げている真っ最中だ。
今回は全国の選挙区の中から、政治ジャーナリストの細川珠生氏、選挙と政治家を専門とするフリーランスライターの畠山理仁氏の2人に、政治にあまり詳しくない人でも選挙を楽しめる、注目の選挙区を教えてもらった。
【香川1区】前デジタル大臣に映画の主人公が挑む
高松市1区、小豆島町など
自由民主党の平井卓也候補は、初代デジタル庁大臣も務めたほか、祖父も父も閣僚経験者という政治一家。その強力な地盤は「平井王国」とも呼ばれる。そこへ挑むのは、立憲民主党の小川淳也候補だ。過去3回の選挙では小選挙区で平井氏に席を譲っているが、2019年公開のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で知名度を上げた。さらに日本維新の会の町川順子候補が立候補しており、激戦となっている。
「前回(2017年)平井氏と小川氏は2183票差で接戦。小川氏は映画で脚光を浴び、全国的にも知名度を上げました。70年続く平井王国の磐石な地盤に挑む激戦が予想されます」(畠山)
【東京18区】元民主党対決 元首相と当時の内閣を支えた元幹部の闘い
武蔵野市、府中市など
元首相で立憲民主党の菅直人候補が初当選の1980年から地盤としてきた同地。今回は、菅直人内閣を防衛大臣政務官として支えたかつての同僚議員である長島昭久候補が、自由民主党入りしたことに伴い国替えし、「師弟関係」にあった2人が争う構図となった。他に無所属の子安正美候補が立候補している。
「旧民主党同士の仲でも右と左の関係だったとは思いますが、政権を共に担った先輩後輩の関係。やりにくさはあるし、支援者も複雑な気持ちがあるはずです」(細川)
【愛媛1区】元官房長官の長男と元Jリーガーが一騎打ち
松山市1区
自由民主党の塩崎彰久候補は、内閣官房長官や厚生労働大臣を歴任した父・恭久氏の引退に伴って地盤を引き継ぎ出馬。その世襲候補者に挑むのは、地元出身かつ地元のクラブでプレーした元Jリーガーである立憲民主党の友近聡朗候補だ。
「強い地盤をもつ元大物議員の息子という世襲候補と、世襲ではない候補者がぶつかり合うということで、選挙らしい面白さが分かりやすい選挙区です」(畠山)
【北海道11区】全国唯一の女性一騎打ち 両者ともに元議員の妻
帯広市など
全国で唯一の女性候補者による一騎打ち。立憲民主党の石川香織候補は元衆院議員・石川知裕氏の妻で、自由民主党の中川郁子候補は党政調会長、財務大臣などを歴任した故・中川昭一氏の妻。元議員の妻対決としても注目が集まる。
「女性同士ということで注目されていますが、個人的には両者ともに私と同じ聖心女子大学出身の同窓という珍しい選挙区で、勝者と敗者に分かれると思うと複雑な気持ちで見ています。候補者のプロフィール情報をチェックするのも選挙を身近に感じるきっかけになるかもしれません」(細川)
【宮城5区】盤石の野党重鎮に挑む元タレント
石巻市、東松島市、南三陸町など
立憲民主党の国会対策委員長も務める安住淳候補が1996年の初当選以来8連勝中と盤石の地盤を築く。そこに今回挑むのは、元タレントの自由民主党・森下千里候補。森下氏自身は愛知県の出身だが、東日本大震災被災地の復興に強い思いがあるとして、石巻市などを含む同地での出馬を決めた。
「立憲民主党の国対委員長も務める安住氏は、与党側から見ても国会対策をする相手として目立つ存在。今回も安住氏は盤石と思われましたが、自由民主党が森下氏を擁立した構図です」(細川)
【茨城7区】14回当選「無敗の男」に5連敗中の女性議員 構図に変化
古河市、結城市など
立憲民主党の中村喜四郎候補は、1976年に同地で初当選し自由民主党入り。建設大臣など閣僚も経験し、その後無所属となったが、無敗の14回当選を誇る。昨年立憲民主党入りし、今回は初めて野党候補者として選挙に臨む。対する自由民主党の永岡桂子候補は5連続当選だがいずれも小選挙区で中村氏に議席を譲っており、悲願の小選挙区での勝利をめざす。他に日本維新の会の水梨伸晃候補が立候補している。
「これまでどんな逆境も跳ね返して無敗で勝ち続けてきた“選挙の鬼”中村氏ですが、昨年立憲民主党入りしたことで情勢が大きく変化。永岡氏は初めて公明党の推薦を得て、小選挙区初勝利をめざしています。今回は共産党が候補を立てておらず、日本維新の会が立った。票の動きが読みづらい激戦区で、個人的には私が最も注目している選挙区です」(畠山)
政治に詳しくなくてもできる選挙の楽しみ方
細川珠生さん
「コロナ禍という状況もあって、今回の選挙活動はオンライン化が加速しています。これまでよりネット上の情報量が格段に多くなったので、調べれば気軽に有益な情報にアクセスできます。ぜひひとつの選挙区に絞ってもいいので、情報を追いかけてみてほしいです。また選挙期間中に盛り上がっても、次の選挙までにはそのことを忘れてしまっていることも少なくありません。選挙後も継続してチェックしていると、次回選挙もより楽しめるはずです」
畠山理仁さん
「期日前投票は誰もが投票しやすくなったいい制度で、どんどん利用してほしいと思います。ただ、直前に候補者のスキャンダルが出ることもあるため、個人的には当日投票がおすすめです。海外では『後悔投票』といって投票先を変えられる制度を持つ国もありますが、日本は1度投じたら変えられないからです。最後まで見極めてほしい。選挙は誰が当選するかを当てるものではありませんが、投票行動とは別に、事前に自分なりの予想で〇、✕、△とつけて、選挙速報を競馬のように楽しむのもいいと思います」