AIによる過去記事リバイバル始めました

デイリーポータルZ

こんにちは、デイリーポータルZ編集部 石川です。

デイリーポータルZは今年19周年を迎えたよみものサイトで、多すぎてもはや忘れましたが1万本だか2万本だかの過去記事アーカイブを保有しています。

例えばこれなんかは2005年のヒット記事。

名称未設定-1.jpg
納豆を一万回混ぜるより

サイドバー等のガワはちょっとずつ変えつつも、本文部分はHTMLごと当時のものがいまだ使用されています。

時事ネタを載せているニュースサイトと違って、いま読んでも楽しんでいただける記事が多いと自負しています。納豆は2005年も2021年も変わらず納豆ですからね。
書き手としても、自分で書いた記事でも15年くらいたつとすっかり忘れてるので、フレッシュな気持ちで読み返せます。

しかしいま読むにはいかんせん、画像が小さい!ネット回線も細かったし、なんたってモニタの解像度が1080ピクセルとかだったころのページです。現代のモニタで見ると、ほとんどサムネイルみたいな画像サイズになっちゃうんですよ。昔の記事。

デジタルリマスター版

そこで2017年から始めたのが、デジタルリマスターという活動。

著者から元データを送ってもらい、オリジナル記事より大きな画像で、過去記事を再掲載しています。毎週1回、日曜公開。

いや、もともとデジタル画像なので「デジタルリマスター」というのは完全に冗談なんですけどね。ってわざわざ冗談を説明することもないんですけど、言っとかないとなにかとマジレスされがちな昨今じゃないですか。まあそれはいいや。

とにかく、たとえば上の「納豆を一万回混ぜる」は、デジタルリマスターでこうなりました。

納豆を一万回混ぜる(デジタルリマスター版)より

画像が大きくて読みやすい!!
いまの記事テンプレートに乗せ換えているので、スマホ対応もできて一石二鳥です。

あらたな問題

これで4年くらいやっているんですけど、ところが。今また新たな問題が浮上してきました。

「みんな元データをいちいちとってない」問題です。
「入稿終わった!はい削除~」って豪快に消してる人、不慮の事故でデータが飛んでしまった人などいろいろですが、なんにせよ19年前のデータなんてそうそう持ってないわけです。

というわけでまだ名作がたくさん眠っているにもかかわらず、「高解像度データがない」というだけの理由で、再掲載する記事の枯渇が危ぶまれています。

AIによる画像拡大技術の登場

そんなさなか、AIによる画像拡大がしばしば巷の話題に上るようになりました。我々もIT業界の端くれとして最新技術には常にキャッチアップしており、日々、技術系ニュースを見ては「ふーん、スゲーなー」と100%他人事として感心したあと3時間後には忘れる生活をしています。

あれ、もしかして、これって自分の仕事に関係あるのでは…!?とメンバーが気づいたのがようやく1年ほど前のことです。

たとえば

035.jpg
この画像を
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Photoshopで普通に拡大するとこんなボヤボヤになっちゃいますが
7_Lets_Enhance.jpg
AIを使ったサービスだとこんなに鮮明に!

なんでこんなことができるのかさっぱりわかりませんが、これで過去記事にある小さな画像を元に、大画像のデジタルリマスター版を作ることができそうです。

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使用サービスの選定

というわけでちっちゃい画像をどんどん拡大していきたいところですが、そのまえによく調べてみると、世の中には多数のAI画像拡大サービスがありました。

それぞれ個性があるようなので、まずはいろんなサービスで写真を拡大して比較してみることにしました。(ちなみに石川が偉そうに書いていますが、このプロジェクトは主に編集部 橋田が進めてくれました。ありがとう橋田さん!)

比較したサービスはこれだけ。

※価格は調査時のもの。また法人向けプラン等、利用ケースで異なる場合があります 

実際どんな感じの画像になるか見てみましょう。モデルは編集部の安藤です。

035.jpg
元画像
1_waifu2x-multi.png
1. waifu2x-multi。後ろの樹木がちょっとモヤっとしてます
2_kakudaiAC.png
2. kakudaiAC。良い感じですが顔がちょっとつるっとしてるのと、なんか目が怖い気が
3_Adobe-.jpg
3. Adobe。ひげが濃く見えます

 

4_Smart Upscaler.jpg
4. Smart Upscaler。ぜんたいにちょっとボケた感じかも

 

5_Vance AI.jpg
5. Vance AI 画像拡大。よいですね

 

6_AI Image Enlarger.jpg
6. AI画像無傷拡大(Imglarger)。クジャクの羽根がちょっとボケて見えます
7_Let's Enhance.jpg
7. Letsenhance.io。かなりひげが濃い
8_upscalepics.jpg
8.Upscale Pics。全体にボケ気味

けっこう鮮明さに違いがあるのがわかりますか?あとひげが濃くなったり薄くなったりするのが面白いですね。

ちょっと違うタイプの画像も見てみます。

029.jpg
元画像

「標準色~」って書いてあるところに注目。文字がつぶれちゃってて復元はかなり難しいと思いますが、どうなるでしょうか。 

1_waifu2x-multi_cache_0ded6ac5-a71d-4f34-cf4e-64c9849589f7029.png
1. waifu2x-multi。そうなるよね。わかるわかる。
2_kakudaiAC_029.png
2. kakudaiAC。独自の文字を作り出してきた感じ
3Adobe029-強化.jpg
3. Adobe。最後「懲りん」みたいになってますが全体としてはかなり再現度高し
4. Smart Upscaler029 (1).jpg
4. Smart Upscaler。これもやむなしという感じ。
5Vance AI_29.jpg
5. Vance AI 画像拡大。がんばってますね。職人タイプ

 

6_AI画像無傷拡大(Imglarger)_029.jpg
6. AI画像無傷拡大(Imglarger)。独自解釈ですがかなり作り込んだ文字が出てます
7_Letsenhance.io_029_auto_x2_2.jpg
7. Letsenhance.io 。後半急にあきらめた感じがして潔いです

 

8_Upscale Pics_029.jpg
8.Upscale Pics。おっと!

文字ばかり注目してしまいましたが、下の試薬の輪郭などにもかなりクオリティの差が出ました。

さいごにもう1枚。イラストです。

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べつやくさんのイラスト記事です。

domperi_03._01jpg.jpg
元画像
1_waifu2x-multi Pro_domperi_03.png
1.waifu2x-multi。1コマ目の写真の顔がけっこうつぶれちゃってますね

 

2_kakudaiAC003.png
2. kakudaiAC。こちらも写真の顔がちょっと怖いことに
3Adobedomperi_03.jpg
3. Adobe。顔は良い感じですが、イラストのベタ塗り部分にノイズが出てます

 

4. Smart Upscalerdomperi_03._01jpg.jpg
4. Smart Upscaler。これも顔がちょっとモヤっとしてて、手書き文字も若干ボケ気味な気が
5_Vance AI.jpg
5. Vance AI 画像拡大。マンガパートの文字がかすれてしまいました

 

6_AI Image Enlarger.jpg
6. AI画像無傷拡大(Imglarger)。わりといい。これくらいが限界かなーと思いますよね。ところが
7_ Letsenhance.io.jpg
7. Letsenhance.io。顔も鮮明だしイラストも文字もくっきり。すごい
8_uscalepics.jpg
8.Upscale Pics。いっこ前のに比べると見劣りしますがかなり健闘

こんな感じでもう何枚かの画像を比較検討していきました。そして

名称未設定-1.jpg
比較表を作ってみんなで投票し

結局、Letsenhance.io がベストクオリティという結論になりました。

その後、利用規約の確認(たとえば新規記事を作らなくなって解約したあとに、これまで作った画像は掲載継続して良いのか、とか)等を行ったり、別のイベントで忙しくなって数か月放置したりしたのち、ようやく有料プランを契約。

こうして本日より、AIによるデジタルリマスター記事を掲載することになりました。

ぜひオリジナルと比較しつつ読んでみてください。

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オリジナル:ヒマワリで作ったコーヒーは、ほぼ麦茶

 

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リマスター版:ヒマワリで作ったコーヒーは、ほぼ麦茶

デジタルリマスターは、今後も毎週日曜に1本ずつ掲載予定です!

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Letsenhance.io 使用感

さて、今回採用した Letsenhance.io ですが、軽くレビューしてみたいと思います。

名称未設定-2.jpg

有料プランに入るとこんな感じの画面になります。ドラッグ&ドロップで画像のアップロードができ、拡大したものをDL可能。その際、オプションで写真かイラストかの指定をしたり、ついでにカラー補正や明るさ補正をつけることもできます。

画像を投入した後、スタートボタンを押すと拡大処理されます(最初それに気づかず2時間待ってしまいました。必ずスタートボタンを押そう)。

処理にかかる時間は画像数枚なら1分以下でした。

他にもプログラミングのできる方なら、API経由で使うこともできます。便利!

というわけで引き続きデイリーポータルZならびにデジタルリマスター記事をよろしくお願いいたします。

 

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