トヨタに垣間見える苦渋のEV戦略 – ヒロ

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トヨタのEV戦略が凡人には少々わかりにくい、そんな気がします。

豊田社長は自工会会長の立場から政府のカーボンニュートラル政策と自動車産業への波及について再三にわたり強い懸念を示してきています。しかし、私も何度か申し上げているようにそれは自工会会長の立場であり、トヨタの社長の立場ではないところに豊田氏ですらかなり苦しんでいるのではないか、という様子が垣間見えるのです。

10月18日の日経には「トヨタ、米に電池新工場 30年までに総額3800億円投資」とあります。北米の経済ニュースでも比較的大きく報じられています。但し、記事の中には「当初はハイブリッド車用のリチウムイオン電池を生産し、電気自動車向けの製造も視野に入れる」とあります。トヨタは引き続きハイブリッド車(HEV)重視の姿勢を貫いているようです。ですが、同社の世界戦略をみると地域によりかなり違うプランを示しています。

今年5月に発表したトヨタの2030年の計画にはHEVと電動車(BEV)を含む比率は欧州と中国(35年)は100%、北米70%、日本95%となっています。但し、その内訳でEVと燃料電池車(FCV)であるZEV(=Zero Emission Vehicle)は中国50%、欧州40%に対して北米15%、日本に至っては10%なのです。つまり、2030年の日本ではトヨタ車においては新車販売はハイブリッド車ばかりで純粋な電気自動車はまだわずか、ということになります。

一方、環境規制や政治主導性の高い欧州や中国ではその方針に従わざるを得ないという泣く泣くのスタンスが透けて見えます。

私がいただけないと思ったのは今週号の日経ビジネスの「電子版編集長セレクト」にある「日本流脱炭素を製造業が目指すべき理由」という記事。筆者がトヨタの役員室で取材した話を解説したものなのですが、これだけ読むとトヨタは反政府的姿勢に聞こえ、「内燃機関が悪いのではなく炭素が悪いのだろう、だから炭素を減せれば内燃機関だっていいじゃないか」というトーンなのです。多分、豊田社長はそこまで反抗的には言っていない気がしており、この役員氏か筆者が盛っているように聞こえるのです。

しかし、いずれにせよ、そうまでして自工会会長の豊田氏が二枚舌的な発言をしなくてはいけないとすれば、それは国内産業への気遣い以外の何物でもないと考えます。つまり、激変対応が苦手な日本にあってその重層な下請けシステムについて「痛み止めの薬」を打たざるを得ないという超日本的対応であると思うのです。

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