NASAの新型月ロケット、打ち上げは8月以降になりそう

GIZMODO

リハーサル難航と中止の影響です。

NASAは6月上旬に改めて次世代ロケットSLS(スペース・ローンチ・システム)のリハーサルを実施するつもりですが、細心の注意を要するため、複数回の実施が必要となるかもしれないと慎重な姿勢を見せています。

問題箇所の追加点検も実施

SLSは現地時間の4月26日、ケネディ宇宙センター内のスペースシャトル組立棟(VAB)に戻されました。技術者たちが上段ステージの不具合のあったヘリウムチェックバルブの交換や、テールサービスマストアンビリカルの液体水素漏れの修理を行います。こういった問題やNASAが“些細”だと称していた他の問題のせいで、地上クルーらは4度目のウェットドレスリハーサル(WDR:ロケットに過冷却した推進剤を充填してカウントダウンを行うテスト)を実施できませんでした。NASAは高さ322フィート(約98m)のロケットが、39B発射台に設置されている間に4度目のリハーサルを行えればと考えていましたが、そうはいかなかったのです。

先日行われた記者会見の中で、NASAの高官は6月上旬か中旬にWDRの全工程に改めて挑むと述べました。猶予が与えられたことで、チームはなかなか消えない技術的な問題を解決してロケットの追加点検を実施できるようになり、窒素ガスのオフサイトのサプライヤーは配管系に必要なアップグレードを施せます。

SLSは50年強ぶりに米国の宇宙飛行士の月面着陸を目指すNASAのアルテミス計画において、不可欠なコンポーネントです。このメガロケットは、月周回有人拠点「ゲートウェイ」(月軌道上を周回する小さな宇宙ステーションのこと)を建設する上でも、将来の火星への有人旅行を可能にする上でも必要になります。SLSプログラムはコスト超過と遅れに悩まされており、このところの失敗はさらに追い打ちをかけているのです。

具体的な日程はまだ明かされず

リハーサルを6月に無事に終えられると仮定して、ロケットは最終的な打ち上げ準備と「ウェットドレス後へと延ばしていたいくつかの作業」のために再びスペースシャトル組立棟に戻されると、NASAの探査システム開発副部長Jim Free氏は説明していました。無人飛行の「アルテミス1」ミッションの今後の打ち上げウィンドウは7月26日〜8月9日(Free氏いわくNASAは7月の打ち上げは検討していないそう)、8月23日〜29日と9月2日〜6日です。Free氏は今年いっぱい分の打ち上げウィンドウは出されていると言ったものの、具体的な日程は明かしませんでした。NASAは次回WDRの結果を待ってから、打ち上げの日時を決定することになるでしょう。

Free氏は現実的で率直な話として、「打ち上げウィンドウを最大限に生かせるような、スムーズな打ち上げカウントに必要な処置を行う」ために、WDRを「2回以上実施するかもしれない」と語っていました。リハーサルを数回行う必要性について耳にしたのは今回が初めてで、最初の3回のテストでは数々の問題に出くわしていたので、NASAが想定していたよりもロケットが複雑だと判明したからなのかと同氏に疑問をぶつけてみました。

Free氏は「SLSが一層複雑だと判明したわけではなく、複雑だというのは分かっていたことだ」と答え、新しい地上システムを初めて稼働させてその反応を見るというのが難題だったとコメント。これまでの3度のリハーサルでの経験から、チームは次のWDRが「素晴らしいものになって当然だとは考えていない」と語っていました。ある程度現実的なアプローチを要し、「チームはわれわれのサポートが必要」だとも補足。これには、長期的に従事してきたチームの作業量を管理することも含まれます。「本当に骨の折れる仕事」とのこと。

WDRは6月上旬か下旬の予定なので、SLSは5月下旬にスペースシャトル組立棟を出発するはず。ですが、以前のテストで上段ステージチェックバルブの作動を妨げていたゴム破片の出どころをまだ特定できていないため、確定というわけではありません。発射台のアンビリカルの液体水素の漏洩もチームの満足いくような修理が必要でしたが、ボルトを締め直して解決したそう。一方、窒素ガスのベンダーAir Liquide社は、仕様通りに気体をSLSに届けられると示さなくてはならないと、NASAの上級ビークル・オペレーションズ・マネジャーのCliff Lanham氏は記者たちに話していました。

良い知らせもあって、過去3回のWDRはセキュリティ上の懸念から音声ナシで行われてきましたが、次回のライブ配信ではコメンタリーが提供されると判明しています。

Source: SpaceNews

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