週4日勤務、そのメリットとデメリット:英・中小企業の38%が導入を検討中

DIGIDAY

パンデミック後の世界で、組織がハイブリッドな働き方を模索するなか、週4日勤務という考えが支持を広げつつある。1日少なく働いても給料が減らないのであれば、こうした現象は理解できるし、すでにこの新たな制度を導入している企業も見られる。

従業員に、賃金を20%上乗せして払う余裕のない小規模企業にとっても、週4日勤務は魅力的な提案だ。また、9時から5時に固定された形で働くシステムも、2021年においては、いまや米国の歌手、ドリー・パートンの名曲のなかにしか存在しないといっても過言ではない。柔軟性、信頼、自律性の向上こそが、優秀な人材を引きつけ、維持するための重要な要素だ。

実際英国では、中小企業経営者の38%が週4日勤務制の導入を検討していると回答している。ただ、理論上は有効とされているこのコンセプト、実際のところはどうなのだろうか。

英国カンタベリーに本拠を置くコンテンツマーケティングエージェンシー、レッドスプラウト・メディア(RedSprout Media)の共同創設者オリビア・ウェブ氏の答えは、はっきりと「ノー」だ。導入を「すぐさま後悔」したウェブ氏は、週4日勤務制度を採用したわずか1カ月後の6月、勤務時間や場所を固定しないポリシーを採用する代わりに、制度を週5日勤務に戻した。

同社は、労働時間を週30時間に短縮しながら、週37.5時間分の賃金を従業員に支払おうとした。その狙いは、この地域で不足しているクリエイティブ人材を獲得すると同時に、従業員の集中力、休息、モチベーション、そしてもちろん生産性を確保することだった。

しかし現実は、休日であるはずの金曜日に、ウェブ氏はパジャマ姿のまま1日中家で仕事をしていた。「経営者としては当然のことだが、ほかのスタッフも皆のんびりしているはずの時間に働いていた」とウェブ氏は明かす。「週4日勤務がそぐわない職場もあるというフィードバックを得た。そのため、4週間で廃止した」。

「ベッドで仕事」と常時オンの悪循環に注意

ウェブ氏は、週4日勤務の試みが失敗した理由について、従来の固定された9時5時の勤務形態を4日間に凝縮するだけでは、ワークライフバランス向上のために人々が実際に必要としている柔軟性は得られなかったからだと話す。

また、「週4日勤務は、形を変えた9時5時勤務にすぎない」とウェブ氏は付け加える。「金曜日になると、人は仕事をしたくなくなる。だが、その解決策は金曜日を休日にすることではなく、社内や顧客に優先順位を確実に伝達するための工夫を行うことだった」。

「人々が本当に必要としていたのは、いつ、どこで、どのように働くかを指示されるのではなく、本当の意味での柔軟性だ」。

英国の医療慈善団体ナフィールド・ヘルス(Nuffield Health)で、エモーショナル・ウェルビーイングの専門責任者を務めるブレンダン・ストリート氏も、デジタル時代の働き方には、柔軟性が不可欠という点には賛同する。しかし一方で、週4日勤務を維持することには多くのメリットがあると主張する。

「すべての人に合う方法はないが、人によっては、勤務日を減らすことが回復力を高め、現代社会の仕事のストレスに対処するのに役立つ」とストリート氏はいう。「我々はしばしば、日常のストレスを対応能力の欠如と混同しがちだが、これは仕事と私生活を切り離すことが難しい状況からくるものだ」。

5日間連続してオフィスにいると、仕事を家に持ち帰ってしまい、スイッチを切ってリラックスするのが難しくなる可能性がある。「この問題はリモートワークをしている人でも悪化しやすく、『自宅で仕事をする罪悪感』に陥ることがある」とストリート氏は述べている。

その一方で、多くの企業ではプレゼンティズム(健康の問題を抱えつつも業務を行っている状態)の文化がいまだに根強く、夜遅くまで仕事をするなど、「常時オン」の状態であることが求められる。「従業員がベッドにデバイスを持ち込んで、寝るまで仕事をする『bedmin(bedとadmin[管理]を組み合わせた言葉)』をはじめとするこれらの不健康な行動は、寝不足や睡眠の妨げにつながる。それが仕事のパフォーマンスに影響を及ぼし、さらなるストレスや働きすぎを招くことになる」と、ストリート氏は指摘する。

幸せな労働者は生産性も高い

週4日勤務の成功例も増えつつある。英国マルドンにあるPRおよびマーケティングエージェンシーのヴェリーベリー(VerriBerri)は、約2年半前にこのアプローチを採用し、CEOのサラ・カウタ氏によると、元に戻すことはないという。

企業の福利厚生関連のテクノロジーを手がける、パークボックス(Perkbox)の調査によると、2020年には英国の従業員の79%が職場でのストレスを経験しており、2018年に比べて20%増加したという。このような調査結果を受けて、カウター氏は週4日勤務の導入を決意した。「1日余分に息抜きをすれば、そうした問題の解消に役立つ」との考えからだ。

週4日勤務を導入して以降、「従業員の幸福度は、ワークライフバランスの改善によって本当に高まっており」とカウター氏は確信しており、生産性のレベルも「急上昇」しているという。同氏はその効果について、まだ定量化は困難として具体的な数字を挙げることはなかったが、週4日勤務を導入してからチームの人数が2倍の17人になったと述べる。「従業員が幸せであるほど、生産性も向上すると考えている」。

特に有益なアドバイスとして、カウター氏は、大きなチームをいくつかに分け、休日や休暇をずらすことで、顧客がいつでも会社とコミュニケーションをとれるようにすることを推奨している。また、効率が重視される週4日勤務の成否のカギを握るのは、「短くて要領を得た」ミーティングだと強調する。

同様の指摘をするのは、カナダのトロントを拠点にする、AIを用いたミーティングソリューションを手がける企業、チーム・ハドル(Team Huddle)の創設者兼CEOのロブ・スミス氏だ。「パンデミックのあいだに、ミーティングの仕方は大きく変わった」とスミス氏はいう。「リモートファーストの環境で働くうちに、人々は主なコミュニケーション手段としてミーティングに大きく依存するようになった。しかし、これによりミーティングの頻度が増え、休憩所のおしゃべりまでもが正式な会議に変わってしまった」。

しかし、こうしたミーティングのあり方も、今後変わってくるだろうとスミス氏はみている。とりわけ週4日勤務を導入しようとする企業においては、ミーティングのスケジュールを引き締めることが求められるからだ。

ハイブリッドワークの時代に勤務日が1日減るかどうかにかかわらず、ほとんどの企業や従業員は、少なくともミーティングの数を減らすことに関しては、ビジネスとして合理的だという意見にうなずくはずだ。ついでに、ドリー・パートンのヒット曲を聴く時間を邪魔されることも少なくなるだろう。

[原文:‘It’s just another 9 to 5’: Employers assess productivity levels after introducing 4-day work week

OLIVER PICKUP(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:村上莞)

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