アフガニスタンを掌握した武装勢力タリバンは6日、抵抗勢力最後の拠点、北東部パンジシール州での勝利を宣言した。同州ではタリバン支配に抵抗する反タリバン勢力との戦闘が続き、同国でタリバンが唯一制圧できていない州とされていた。
タリバンは6日、タリバンの旗を掲げる様子をとらえた動画をオンライン上に投稿した。
一方、タリバンに抵抗する「アフガニスタンの反タリバン国家抵抗戦線」(NRF)は、戦闘員は今も「あらゆる戦略的場所」にとどまり、「戦い続けている」と反論した。
NRF指導者アフマド・マスード氏は、タリバンに抵抗するための「国民蜂起」を呼びかけた。
ソーシャルメディアに投稿された音声録音でマスード氏は、国際社会がタリバンの正統性を認めることで、軍事的・政治的な自信を与えていると非難した。
さらにアフガン市民に対し、「(アフガン)国内・国外にいるのかに関わらず、この国の尊厳と自由と繁栄のために、国民蜂起を始めるよう求める」と述べた。
「戦争の泥沼から抜け出した」
NRFスポークスマンのアリ・マイサム氏は先に、「タリバンはパンジシールを掌握していない。タリバンの主張を否定する」とBBCに述べていた。
また、NRFはツイッターで、「タリバンとその協力者への抵抗は、正義と自由が勝利するまで続く」とした。
しかし、タリバンの報道担当ザビフラ・ムジャヒド幹部は声明で、「この勝利をもって、我々の国は戦争の泥沼から完全に抜け出した」と述べた。
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米軍が20年間にわたったアフガン駐留を8月末に終えると、タリバンはアフガンの残りの地域を制圧。8月15日には、欧米の支援を受けていたアフガン政府の崩壊後にカブールを掌握した。
約15万~20万人が住むパンジシール渓谷は、1980年代のソ連侵攻時代や前回のタリバン政権下でも、抵抗運動の中心地だった。
女性の権利は
アフガン掌握以降、タリバンは以前より寛容なイメージを演出しようとしているが、アフガンの一部地域では依然として残忍な行為や抑圧が報告されている。
タリバンは女性の権利を尊重するとしているが、かつて1996年から2001年にかけてアフガンを支配していた当時のような扱いを受けるのではと、多くの人が恐れている。当時のタリバン政権下では、女性が屋外で顔を覆うよう求められ、軽微な違反にも厳罰が加えられた。
目撃者の話によると、中部ゴール州ではタリバン戦闘員が妊娠中の女性警官を射殺したという。
タリバンはBBCに対し、事件への関与を否定しており、この事件について調査中だとした。
アフガン各地では女性の権利の尊重を求める抗議活動が行われている。
北部マザーリシャリーフで6日に抗議デモを行った女性グループは、タリバン戦闘員に脅されたとBBCペルシャ語に証言した。
「 タリバン戦闘員は私たちを罵り、早く解散しなければ殴り殺すと言ってきた」と、参加した女性は述べた。戦闘員を動画で撮影しようとする人たちのことも脅していたという。
人権団体もまた、宗教的少数派に対する報復殺人や高速、迫害を確認している。タリバンはアフガン政権のために働いていた人々に報復はしないと、公に発言している。
タリバンはタリバン新政権の最終的な人事を発表していない。
タリバンの報道担当ジャヒド幹部は6日朝、記者団に対し、重要な決定はすべて下されており、現在は「技術的な問題」に対処していると説明した。
また、まずは暫定政府を発表した後、変更していくとした。
米市民4人が陸路で退避
こうした中、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は6日にカタールを訪れ、アフガン情勢についてカタール政府関係者と会談。米軍によるカブール退避を支援してくれたと感謝を伝えた。
米軍が8月31日にアフガニスタンから完全撤退する前に、アメリカ主導の退避作戦で12万人以上が空輸で避難した。
ブリンケン氏と共にカタールを訪問した米国務省職員は、米市民4人が陸路でアフガン国外に退避するのを支援したと明らかにした。米軍撤退後に米市民の退避が実現したのは初めて。
同職員によると、タリバンは4人の退避を認識しているという。4人の身元や、アフガンからどの国へ渡ったのかなど、詳細は明らかにされていない。
ロニー・ジャクソン米下院議員(共和党、テキサス州選出)は4人の退避が発表された後、この4人は自身の選挙区の住民だとツイートした。