中田翔 結果残せばいいの筋違い – NEWSポストセブン

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結果的に無期限出場停止処分がうやむやになってしまった中田翔(時事通信フォト)

 日本ハムから巨人に電撃移籍をした中田翔(32)が、移籍早々に活躍している。中田は8月4日、DeNAとのエキシビションマッチ前にチームメイトに暴行を働き、11日から日本ハムから無期限出場停止処分を受けていた。だが、20日に巨人への無償トレードが発表されると、同日限りで処分は解除に。21日には1軍登録されて代打で初出場。22日には『5番・ファースト』でスタメン起用され、移籍後初本塁打を放った。プロ野球担当記者が話す。

【写真】巨人移籍早々、本塁打を放つ中田翔。活躍してもファンは複雑な気持ち

「普通のトレードだったら、ファンにもっと歓迎されたかもしれません。しかし、相手が脳震盪を起こしたと言われるほどの暴力を振るって“無期限出場停止”になったのに、移籍でそれがチャラになって優勝争い中の巨人の貴重な戦力になっている……。さすがに、プロ野球ファンからも不満の声が多く聞こえてきます」(以下同)

“無期限出場停止”が謳われながら、結果的に8月13日のリーグ戦再開後、中田は日本ハムで5試合欠場したのみに。出場停止期間は、わずか10日間で終わった。

「過去、謹慎処分になった選手と比べても、結果的に大甘裁定になったと言えるでしょう。巨人の山口俊は2017年夏に病院の扉の損壊や警備員への暴行で、傷害と器物損壊の疑いで書類送検され、8月18日からシーズン終了まで出場停止処分となった。古くは巨人の桑田真澄が1990年に逮捕歴のある人物からの金品授受などが発覚して開幕から1か月の謹慎処分になっています」

 山口は翌年にノーヒット・ノーランを達成し、翌々年には最多勝を獲得。桑田は同年、勝ち星数、防御率ともにリーグ2位。この前後を挟んで、6年連続2桁勝利を挙げ、1994年にはMVPにも輝いた。

「2人とも謹慎が長かった分、精神的に強くなった面もあったと思います。特に、桑田の場合はバッシングの嵐に晒されましたから、相当堪えたと思います。あの頃はまだJリーグもなく、メディアのスポーツ情報といえば野球ばかり。その中心に巨人がいた。注目度は今とは比べものにならないほど高かったですから」

大甘裁定だと再び問題を起こしかねない

 一方で、不祥事などへの処分は、人気選手ほど甘くなる面もあるという。1989年9月、ロッテの平沼定晴から死球を受けた西武の清原和博は、マウンド目掛けてバットを投げつけるなどの暴行を働いた。平沼は全治2週間のケガを負ったが、清原は2日間の出場停止処分に留まっている。1988年、南海のバナザードは同僚のライトが死球を受けたことに激昂し、ベンチを飛び出して近鉄の加藤哲郎へ暴行。7日間の出場停止となっていた。1986年には近鉄のデービスが西武の東尾修から死球を受けてマウンドに駆け上がり、パンチやキックを見舞って10日間の出場停止に。バナザード、デービスらと比べ、パ・リーグ連盟の清原への処分は甘いと言われた。

「当時パ・リーグは今と比べて人気がなかったし、優勝争いで盛り上がる中で、スター選手の清原を何日も休ませられないという配慮もあったのではないでしょうか。

 中田の“ヤンチャさ”も、今までも能力や人気の高さゆえに許されてきた部分があったでしょう。とはいえ、人気があるがゆえにそうした面を見過ごしてきたことが、今回の暴力事件に繋がった面もあると思います。それなのに、またすぐに処分が解ける“大甘裁定”が下された。これでは、『再び問題を起こしかねない原因を日本ハムと巨人が作ってしまった』と言われても否定できない」

 この問題は、野球で結果を残せば解消されるわけではない。

「もっと反省させる期間を設けなければならなかったのではないでしょうか。人間誰しも間違いは犯しますが、それでも、謹慎期間が長ければ、その分、反省時の苦しみも覚えているものです。たった半月程度の謹慎では、忘れるのも早くなる。トレード自体は良いとしても、“無期限出場停止”というなら、少なくとも今シーズン終了までは解除すべきではなかったのでは。

 中田本人は、プロ野球選手である以上、グラウンド上のプレーで名誉挽回したいと考えているかもしれませんが、プレーとは別の部分で起こした問題なのだから、それは筋が違う。中田が活躍して巨人が逆転優勝しても、他球団のファンのみならず、複雑な気持ちになるG党もたくさんいると思いますよ」

 グラウンドで取り返せばいい──と素直に言えないところに、この問題の根深さがあるのではないだろうか。

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