Amazon発美容ブランド 、リリーアナ・ナチュラルズがD2Cやオフラインのチャネル開拓

DIGIDAY

Amazon発のビューティブランドのなかで、もっとも注目すべきブランドのひとつがリリーアナ・ナチュラルズ(LilyAna Naturals)だ。7年前に誕生したこのブランドは「エブリシング・ストア」を謳うAmazonにとどまらず、独自のD2Cチャネルを拡大し、新たに実店舗のパートナーと事業展開を行うなど、その人気がいま試されようとしている。

より高価な類似のナチュラルブランドにくらべて手頃な価格のリリーアナ・ナチュラルズは、2014年にミシシッピ州で設立され、2020年7月にeコマースブランドの買収・運営会社RDMパートナーズ(RDM Partners)に買収されるまではAmazonのみで販売を行っていた。リリーアナ・ナチュラルズの広報担当者は、ブランドの創業者名を明かすことを拒否したが、トンプソングッズLLC(Thompson Goods, LLC)が行ったブランド登録の記録をたどるとシェリル・トンプソンという名前に行き着く。このトンプソン氏が創業者なのか、ブランドに確認したが回答は得られなかった。

2014年以降、リリーアナ・ナチュラルズはレチノールフェイスクリームに2万9000件以上、アイクリームには1万8000件以上のレビューを獲得しており、そのほかの製品についてもAmazonでは数千件のレビューが付いている。Amazonで「レチノールクリーム」や「レチノールアイクリーム」などの商品を検索すると、リリーアナ・ナチュラルズの製品がページの一番上に表示される。個々の製品の価格帯は11ドル(約1200円)から36ドル(約4000円)だ。

このブランドは、買収以降はレッタ・エイブラハム氏がCEOを務めており、彼の在職中にAmazon限定発売の状態から販路を拡大、10月には全米量販店(非公開)に加わる予定である。また1月にはD2C用のECサイトも開設している。エイブラハム氏は売上高の詳細な数字を明かさなかったが、2020年と比較するとブランドの現在までの売上は前年比100%の伸びを示しており、これは2021年末まで維持される見込みとのこと。リリーアナ・ナチュラルズは2021年末までにD2Cの売上高が総売上高の20%を占めるようになるとエイブラハム氏は予測している。

「リリーアナ・ナチュラルズのビジョンは、Amazonにフォーカスしたすばらしい製品をそろえているブランドだという骨子を常に活かし、それを強化することだ。我々はさまざまなチャネルを競合相手とは考えてない。むしろ互いに補い合う相手だと思っている。それぞれのチャネルは新規顧客を見つけるチャンスになる」と、エイブラハム氏。

顧客データを独自に収集

現在、リリーアナは顧客データをより多く収集すべく、Amazonの顧客を自社のD2Cサイトに移行させようとしている。通常、Amazonはブランドパートナーに詳細な顧客データを提供することはないが、リリーアナは非公開のサードパーティベンダーと協力し、Amazonの顧客を自社サイトに呼び込むキャンペーンを展開している。Amazonはブランドに顧客名を提供し、ベンダーパートナーはそれらの顧客のメールアドレスを見つけ出すことができる(アマゾンはメールアドレスを提供していない)。それを利用してリリーアナ・ナチュラルズはFacebookやインスタグラム上にいる顧客をターゲットにしてD2Cのウェブサイトへと誘導することができる。リリーアナ・ナチュラルズではD2C限定の製品やセットをウェブサイトに追加し、さらに魅力を高めている。

「Amazonは規模のチャネルだ。必ずしも最高の収益を得るためのチャネルではない」と話すのは、Amazonのeコマース代理店であるエンビジョンホライズンズ(Envision Horizons)の創業者でCEOのローラ・メイヤー氏だ。「リリーアナや同様のブランドが今日ローンチしようとしても、Amazonのエコシステムに入り込めるかどうかはわからない。リリーアナ・ナチュラルズがトップセラーである理由のひとつは、何千ものレビューがあることだ。それだけの規模のレビューを獲得するには何年もかかるだろう」。

リリーアナの顧客データを推定するアプローチは、Facebook、インスタグラム、Google、YouTube、Snapchat(スナップチャット)、TikTokのトップファネルの有料広告で補完されている。デジタル動画や静止画の広告は、アンチエイジングやニキビ、そのほかの肌の悩みに関する特定の顧客ニーズを強調するように設計されている。中心となる顧客層は20代後半から60代前半の女性だ。またリリーアナ・ナチュラルズはインフルエンサーネットワークも保持しており、ヨガ、クリーンビューティー、オーガニックフードのライフスタイルなどに注目しているインフルエンサーなど、1週間あたり30人と提携している。2021年の収益の約20%をマーケティングと広告に再投資しているとエイブラハム氏は述べている。

Amazon発のブランドが成功する時代

リリーアナ・ナチュラルズは製品ポートフォリオを拡大しており、9種類のティンテッドモイスチャライザーと一種類のSPF製品を2021年第3四半期に発売する予定だ。2021年第4四半期にはニキビ用製品ラインのほか、ローションやスクラブなどのボディケア製品も発売する。そして現在、チーフデジタルオフィサーを採用し、アドバイザリーボードに小売の経験者と科学的な経験者を迎えることを検討している。

「アマゾンのブランドとして名が知られていることは現在の強みであり、その立場を活用して他のチャネルを成長させていくつもりだ」と、エイブラハム氏はいう。

Amazonでブランドを構築したのは、リリーアナ・ナチュラルズだけではない。1月にマイノリティ成長投資を受けたヒーローコスメティクス(Hero Cosmetics)は、2017年に初めてAmazonにローンチし、その翌年には独自のD2CのECサイトを立ち上げている。日焼け止めブランドのサマーレディ(Summer Ready)が2020年にデビューした際には、D2CサイトとAmazonで同時に販売しており、同じことをキッズヘアケアブランドのTBHキッズ(TBH Kids)が2019年に行っている。

リリーアナ・ナチュラルズは実店舗でのデビューに向けて二次包装にQRコードを追加し、顧客がそれをスキャンすればEメールリストに登録できるようにする予定だ。エイブラハム氏は近い将来に資金調達ラウンドの可能性を検討しているが、明確なスケジュールは決まっていないと述べた。

メイヤー氏はいう。「リリーアナ・ナチュラルズが行っていることはすばらしい。我々はいま、Amazonで誕生したブランドがそののち規模をさらに拡大して、Amazonのプラットフォームを超えた成功を収めることができるという新たな時代にいる」。

[原文:LilyAna Naturals flexes its Amazon success to DTC and offline channels]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:小玉明依)

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