火星は太陽系の惑星の中では最も地球の環境に近いことから、地球外生命体が生息する可能性があるとして多くの研究・調査が行われています。そんな研究の中でも2020年に発表された「火星の地下に多くの湖が存在している」とする研究報告は火星での生命発見の可能性を高めるものとして大きく注目されていました。しかし、その後に行われた研究によって、火星の地下に存在しているのは「液体の水」ではなく「凍った粘土」である可能性が浮上しています。
A Solid Interpretation of Bright Radar Reflectors Under the Mars South Polar Ice – Smith – 2021 – Geophysical Research Letters – Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2021GL093618
Characteristics of the Basal Interface of the Martian South Polar Layered Deposits – Khuller – 2021 – Geophysical Research Letters – Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2021GL093631
Clays, not water, are likely source of Mars ‘lakes’
https://phys.org/news/2021-07-clays-source-mars-lakes.html
2020年に発表された研究は、火星探査機「マーズ・エクスプレス」がレーダーで測定したデータを基に、「火星の地下には大量の塩水で満たされた湖が多数存在することを発見した」と主張するものでした。
火星の地下に塩水の湖がいくつも存在することが判明、生命が発見できる可能性が高まる – GIGAZINE
しかし、ヨーク大学で宇宙について研究するアイザック・スミス氏がマーズ・エクスプレスによる測定データを再分析したところ、液体の水が存在できない低温の地点でも「液体の水が存在する」という測定結果が残っていたことが判明しました。スミス氏は「現在火星について判明している事実から考えると、湖が存在するとされる地点に液体の水が存在するには、もっと高い温度が必要です」と述べ、マーズ・エクスプレスのレーダーが水以外の物質に反応した可能性があると主張しています。
スミス氏が率いる研究チームは、マーズ・エクスプレスのレーダーが反応した物質が、火星に多く存在する粘土の一種「スメクタイト」であると仮説を立てました。そして実際に研究チームがマイナス45度まで冷却したスメクタイトに水を含ませてレーダーに認識させたところ、「液体の水」を示す計測結果が得られました。
また、研究チームが火星の南極周辺で計測されたデータを解析したところ、火星の南極周辺には大量のスメクタイトが存在していることが明らかになりました。スミス氏は「これらの粘土は、火星に水が大量に存在していた大昔から、火星に存在していました」と語り、スメクタイトが大昔に液体の水を吸い込んで、その後に凍りついたと推測しています。
スミス氏は「火星で見つかった他の種類の粘土も、スメクタイトと同様にレーダーへ反応すると考えられます。それらの粘土についても研究を続けたと考えています」と、今後の研究への意欲を見せています。
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