世界的なアルミニウム不足を解消して余りあるアルミニウム貯蔵庫が実はベトナムに存在する

GIGAZINE
2021年12月01日 06時00分
メモ



中国のアルミニウム生産量が5か月連続で減少したことや、アルミニウム価格が13年ぶりに高値を記録したことが2021年10月に報じられました。今後、世界的に大幅なアルミニウム不足が起こると予測されていますが、実はベトナムには、ある理由によってアルミニウム不足を解消して有り余る大量のアルミニウムが貯蔵されています。

The $5 billion hoard of metal the world wants but can’t have – MINING.COM
https://www.mining.com/web/the-5-billion-hoard-of-metal-the-world-wants-but-cant-have/

ベトナム・ホーチミン市から南シナ海に向かって車で約1時間走ったところにある工業団地に、約50億ドル(約5600万円)の価値がある金属の山が存在するといわれています。以下が衛星画像で、上が2014年3月に撮影されたもの、下が2021年1月に撮影されたもの。2021年撮影の画像には、過去にはなかった金属の山が見て取れます。アルミニウムの貯蔵庫としてはアメリカ・デトロイト州やマレーシアのクラン港が有名でしたが、このベトナムの貯蔵庫はそれ以上の規模だと考えられています。


ロンドンを拠点とし金属取引を行うConcord ResourcesのアナリストであるDuncan Hobbs氏によると、アルミニウムはここ20年で最も深刻な不足状態にありますが、ベトナムの貯蔵庫にあるアルミニウムはその不足を解消して余りあるとのこと。

ベトナムで貯蔵されるアルミニウムは2019年にアメリカ政府主導で行われた不当廉売の調査で中国の億万長者から押収されたものです。アルミニウムは中国からベトナムのアルミ製造業者であるGlobal Vietnam Aluminium(GVA)の手に渡って貯蔵されていたとみられていますが、GVAへの初期調査は失敗しており、また調査も続行中であるため、1.8トンのアルミニウムが手つかずのまま当局の監視下で保管されているわけです。

アルミニウムは過去10年以上にわたって余剰のある状態が続いていましたが、2025年ごろに貯蔵がつき、不足に転じると考えられています。このような背景からベトナムのアルミニウム貯蔵庫は大きな関心を集めています。


アルミニウムの需要と供給は、過去10年にわたって不安定な状態が続いています。過去10年は世界的な金融危機で経済が落ち込んでいる期間が長く、自動車メーカーはアルミニウムの購入量を減らしていました。しかし一方でアルミニウムの生産者は製錬所の電源を落とす方が莫大な費用がかかることもあり、メーカーからの購入を期待してアルミニウムを製造し続けました。このため、不要なアルミニウムが過剰に作り出される結果になったのですが、商社はこれを見て「余剰な金属を買い込んで、需要が高まる時期までそれを貯蔵しておく」という行動を取ります。そして2010年になって経済が回復し始めコカ・コーラなどメーカーがアルミニウムを購入しようとした時になって、「港にはアルミニウムが大量に貯蔵されているのに市場ではアルミニウムが不足している」という事態が起こったとのこと。その後、本格的に経済が回復した時に市場にアルミニウムが放出されたのですが、この時にはすでに不足が解消されていたため、市場にはアルミニウムがあふれかえることになりアルミニウム価格はさらに低下しました。


2021年時点でアメリカやマレーシアのアルミニウム貯蔵量と在庫が急速に減少していることが確認されおり、懸念材料となっていますが、2021年において最大の懸念点は、中国の供給抑制です。中国は二酸化炭素の排出量削減を目指しており、今後はアルミニウムの輸出国ではなく輸入国になると考えられています。このため、今後世界的な需要・供給のバランスが崩れるとみられており、ベトナムの貯蔵庫に大きな可能性が見出されているわけです。

一方で、世界の鉱業、金属、肥料市場に注力するビジネスインテリジェンス企業CRUは、ベトナムのアルミニウム貯蔵庫を在庫見積もりから排除しています。これはアルミニウムが10年以上のものであり、スクラップにする必要があると考えられているためです。

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2021年12月01日 06時00分00秒 in メモ, Posted by logq_fa

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