プライバシー問題だけに留まらず…。
近々ちらほらと耳にするようになったBCI(ブレイン・コンピューティング・インターフェース)。人間の脳とコンピュータをつなげるテクノロジーとして注目されるなか、先日インペリアル・カレッジ・ロンドンによって発表された研究では、どのように使われるべきかについて懸念すべきだと示唆されています。
BCIが役立つのはどんな場面?
まず、研究ではこのテクノロジーの理想的な使い方について触れています。たとえば身体活動に制限がある人にとって、義肢や車椅子を動かしたり、スクリーンで文字を打ったり、スマートホーム機器を使いながらエアコンの電源をオン/オフするのに役立つ可能性があります。
また、倉庫作業の仕事をしている労働者の疲労を検知して怪我防止に役立てたり、教室にいる学生たちの情報オーバーロードをモニタリングするといった使い方もありそうです。もちろん実際にどれくらいの人たちがそれを望むかは、また別の話ですけどね…。
中毒、性格の変化…BCIに隠されたリスク
研究では、BCIを使うことの注意点についても次のように示唆しています。
BCIでは固有感覚(目を閉じていても体を動かしていることがわかること)が失われることによって、自律性、自己主体感が損なわれる可能性を指摘。それにより機械が生成している行動出力が、自分の脳によるものだと勘違いするリスクもあり得るとか。結果として性格的特徴(自己アイデンティティ)が塗り変わることが懸念されています。
また、人工的に記憶力や知能を拡張することも可能な一方で、それによりいわゆるオピオイド危機(麻薬性鎮痛剤の中毒)の問題と同じような状態になる可能性も。
「患者のなかには、こうしたデバイスが自分自身の一部となったかのように感じ、臨床試験が終わったあとも取り外すのを拒む人もいます」と、プレスリリースで研究論文共同著者のRylie Green氏は明かしています。
時代は、もうすでに始まっている?
同研究者いわく、このテクノロジーの直近の課題はコスト、エネルギーの効率化。ただ、それが解決するのはもはや時間の問題。
Facebook(フェイスブック)は現在断念中ですが、Microsoft(マイクロソフト)、イーロン・マスクのNeuralinkではすでにBCIの技術開発を進めています。
ゲーム業界では「ニューロエンターテインメント」として、ゲームをする人たちの脳とゲームをつなげるアイデアも実現間近なのだとか。Valve共同創立者のGabe Newel氏によれば、「これについて考えないエンタメは絶滅レベル」としてまもなく標準機能になるという大胆予想をしています。
また、人々の感情や無意識的な意思決定を利用した「ニューロマーケティング」では、(もはやいうまでもなく…)BCIを使って企業がバイオメトリックデータを集めるのに格好の機会となりそうです。
こうしたデータの取り扱いについて、臓器と同じように収集・販売できないものとして、法的に分類する必要があると研究者らは主張しています。ただ残念なことに、法律の制定には何年も何十年も時間がかかるものです。それにかのザッカーバーグ氏は、事前の許可よりも事後の許しを求めるタイプの人ですし…。ブレインテック界隈においては(もちろん善意的な取り組みは応援したいですが、そうでなければ)今後、企業がどのような使い方をしようとしているのか見張っておきたいところです。