子どものころ、金沢に出張する父に「 “鮴” 買って来て!」とよく注文していたものだ。刺身やから揚げも美味しいし、土産にするのであれば佃煮がオススメだ。
記者は金沢以外で、その姿を見かけたことがない。あんなに美味しいのに、捕れる場所が限られているからだろう。久しぶりに食べたくなったので、いっちょ取り寄せてみようではないか。
・ハゼ類の地方名
そもそも、北陸住まいの人以外に『鮴』はどれほど認知されているのだろう。記者は正直、馴染みなければ、まず『鮴』を読める気がしない。これで “ごり” と読むが、知らなければきっと頭を抱えることだろう。
『日本大百科全書』によれば “ごり” は、主としてある種の淡水産ハゼ類の地方名なのだそうだ。全国的にはヨシノボリ類やウキゴリをいい、地方によってハゼの細かな種類が異なるとのこと。例えば近畿地方以西ではカワヨシノボリやヨシノボリを指すという。
しかしながら実際にはハゼ類の識別は難しいため、いろいろな種類を区別せずにまとめて “ごり” と言うのだとか。金沢名物である “ごり” も、カジカ科のカジカとハゼ科のウキゴリを総じてそう呼んでいるようだ。
ちなみに、かつては川中の石などの下に潜む “ごり” を無理矢理追い出し、ザルへと追い込むなどして漁をしていたという。その行為が “ゴリ押し” の語源になったとか、ならなかったとか。真偽は不明だが、かねてより “ごり” が広く親しまれていたことが伺える一例だ。
・佃煮がオススメ
さて。記者はいつだったか金沢に行った際、上にも書いた通り刺身やから揚げにして食べた。いかつい見た目ながらも、引っかかるところのないサッパリとした味わいで、思わずバクバクと食べたような覚えがある。
中でも、個人的に好きな “ごり” の調理方法は佃煮。なぜなら、刺身などでは感じられない “ごり” のクセが感じられるからだ。基本的に “ごり” は川魚の中でも、特有のにおいは少ない方だと言われている。
確かに、非常に食べやすい淡白な味であることは間違いない。しかし甘辛い佃煮になることで少しばかり苦みと、しっかりとした甘みが感じられるように思うのだ。とは言え、ここ最近は食べていなかったので久しぶりに取り寄せてみた次第。
各社出しているが、今回は「金沢の味 佃の佃煮(2592円)」のものをチョイスした。たっぷりと300g入っており、食べ応え十分。さっそく届いた “ごり” を炊き立ての白米に乗せる。
じわりと甘辛さが米に染みて、口に入れるとほんのちょっぴりほろ苦い。もっちりとした噛み心地と、優しい甘さの後味が最高だ。米と “ごり” の佃煮さえあれば、食卓は成り立つと言えるだろう。お腹いっぱい胸いっぱいだ。
どのような食べ方をしても美味しい “ごり” だが、繰り返すように佃煮は中でも飛びぬけてアタリな食べ方であるように思う。石川県をはじめ北陸の方には釈迦に説法な “ごり” であるかもしれないが、未だ味わったことがないという方。ぜひ何かしらの機会に “ごり料理” を堪能してほしい。オススメだぞ。
参考リンク:金沢の味 佃の佃煮「ごりの佃煮」
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.