先日のGoogle I/O 2021基調講演で、Google DocsやSpreadsheetを含むスイートであり、GSuiteからブランド名が変わったGoogle Workspaceにかなり大掛かりなアップデートをこれから年末にかけてロールアウトされることが発表されました。
Smart Canvasと名付けられたこの新機能はなにか単一の機能というよりは、Google Docs, Spreadsheets, Slides, Meet など、すべてのサービスを結びつける体験の変化という側面が強いので説明が難しいのですが、一言でいうと「まるでnotionのように利用できるようになる」と表現すれば伝わる人には伝わると思います。
まずは短い動画でその雰囲気を確かめてください。
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おそらくわかったような、わからなかったような気分になると思いますが、この動画には過去10年ほどGoogle Docsが避けてきた進化がさりげなく組み込まれているといえるのです。
ドキュメントのどこからでも他のサービスを呼び出せる
たとえば Google Docs では「@」マークを入力することで文章のなかで共有している他のユーザーを呼び出すことが可能ですが、このマークにさまざまな他の機能が付与されています。
たとえばミーティング中にとったメモであったり、Spreadsheetで作成したグラフであったり、Google Drive のファイルをここに直接添付したりといったことを指先から直接実行できます。
文章のとちゅうで挿入された他のサービスは、マウスをホバリングさせると直接そこでプレビューを見ることができます。シームレスに複数のサービスが結びついているわけです。
Google Meetで会議をする場合も、映像はZoomで、シェアしているファイルはブラウザでと分ける必要がなく、ブラウザのなかにMeetも、ファイルもすべて展開されます。
これは単に便利というよりも、ブラウザのタブとしてGoogle Workspaceを開いておけば、そこから一歩もでることなく仕事が進行すると解釈するほうがいいでしょう。
極めつけに、とてもさり気なく紹介しているのですが、共有して作成した表のなかで複数のユーザーが投票をおこない、シートのなかにタスクを埋め込むといったことをしています。
ここまでくると、Google Docsは文書を作成するためのツールではなく、仕事が生まれて進行する現場と変わっていきます。そしてこれらの機能はちょうどnotionやAirTableといった、最近成長が著しいサービスから直接インスパイアされたものであることは明白です。
ついにやってきたページレスな文書の機能。Sheetはデータに合わせてビューが変わる
Google WorkspaceのSmart Canvas機能はDocsだけではなく、Sheetsの使い方も変えていきます。表計算のデータにあわせて複数のビューが展開され、ユーザーがデータを利用しやすくするのです。
たとえばこちらはプロジェクトの進行表ですが、これのもとになっているのは一枚のGoogle Spreadsheetで、そこに日付などの情報があるのにあわせてこのビューが作られています。もちろん情報はFormsの機能などを使って編集可能です。
また、こうした変化にともなってGoogle Docsにあった「ページ単位」での編集をしない「ページレス」な状態での編集機能もついに追加されます。ようやく、A4やレターサイズに印刷することを前提とした編集から解放されるのです。
こうしたすべては、notion が可能にしている「文書にデータを埋め込む」「データにあわせてビューを変える」「コラボレーションで文書を編集する」といった特徴を非常に上手に取り込んでいるといっていいでしょう。
むしろ、notion はそれっぽい表示になるまで延々とクリックや設定を続けなければ利用できない印象がありますが、Smart Canvas の機能は限定された機能であるかわりにより洗練されているようにみえます。
notion は notion でとても便利なツールですが、仕事で関わる人がすべて利用できるようにならなければ真価が発揮できない側面があります。Evernoteですら十数年経過してもそこまでは達していない一方で、Google Workspaceはすでに多くの企業や大学で採用されている強みがあります。
逆に、Google Workspaceはそれだけ多くのユーザーがいるからこそ、notion のように冒険心に溢れたアップデートをすることはできず、新機能の導入はゆっくりとしているはずですが、それでもこの Smart Canvas の一連の機能プレビューには実際の仕事の現場で利用できそうな説得力があります。
新興のサービスのよい部分を取り込みつつ進化するGoogle Workspaceが今後さらに広まるのか、新世代ツールが躍進をとげてゆくのか、注目に値するでしょう。