2022年7月24日、中国南部の海南省にある文昌宇宙発射センターから、中国の宇宙ステーション「天宮」(てんきゅう)の実験モジュールである「問天」(もんてん)が搭載された「長征5号Bロケット」が発射されました。
このロケットには大きな問題があります。その問題と、今後の中国のロケット打ち上げ計画について「space」が解説しています。
*Category:テクノロジー Technology|*Source:space(1),space(2),wikipedia,CGTN
「長征5号Bロケット」の問題点とは?
長征5号Bロケットの打ち上げ自体は成功し、コアモジュール「天和」(てんわ)とドッキングしました。しかし、その6日後に25トンある長征5号Bロケットの1段目大型ブースター部分が「制御不能」となり、一部の破片がフィリピンのパラワン島の沖合に落下したのです。
長征5号Bロケットの燃え盛る残骸と思われる物体が上空を照らしている映像があります。
Suspected rocket debris at Sibu Sarawak Area pic.twitter.com/xIROJGM0PD
— tang (@tanghenry3) July 30, 2022
この落下物は5.5トンから9.9トン程あるとのこと。しかし、今回のミッション・マネージャーは「何も失敗していない」と述べています。
しかし専門家は、この大きなロケットが再突入時に完全に燃え尽きないことを考えると、この廃棄戦略は無謀であると指摘。一般的に、使用済みのロケットは、打ち上げ後すぐに安全な方法で廃棄されるか、再利用するために着陸させられます。
また、NASAのビル・ネルソン長官によれば「中国は、長征5Bロケットが地球に落下する際の具体的な軌道情報を共有しなかった」とのこと。
同氏は「宇宙を利用するすべての国は、確立された最も効率の良い方法に従ってこの種の情報を事前に共有し、潜在的なスペースデブリの衝突リスクについて信頼性の高い予測を可能にするために役立てるべきだ」と指摘しています。
実は、長征5号Bロケットの破片が制御不能で落下するのは今回で3回目です。
2020年5月、西アフリカ上空でロケット本体の破片が地球に落下し、一部がコートジボワールの地面に衝突したようです。そして、2021年4月にも発射から約1週間後にアラビア半島上空で再突入し、インド洋上に落下しています。
そして、このロケットのミッションは、これが最後ではありません。
中国は、宇宙ステーション完成に向けて10月に実験モジュールである「夢天」(むてん)を長征5号Bロケットで打ち上げようとしています。
さらに、中国はハッブル級宇宙望遠鏡の打ち上げを目指しています。このミッションも、2023年末か2024年に長征5号Bロケットで実施される予定です。
長征5号Bロケットは、中国にとって重いペイロード(最大積載量)を地球低軌道に投入するための重要なロケットとなっています。つまり、このロケットはこれらの問題点を抱えたまま、今後も大型ペイロードを搭載した打ち上げに利用される可能性があるのです。