「 企画 」という仕事とは何かを見つめなおす

DIGIDAY

ADVERTISING WEEK ASIA2022 が、3年ぶりにリアルイベントとして東京ミッドタウンへ帰ってきます! 本イベントのメディアパートナーを努めるDIGIDAY[日本版]では、「AWA2022 リアル開催復活記念」として、そのカウンシルメンバーが個々のセッションの背景や裏側について語るリレー形式の寄稿連載を掲載。第2段の執筆者は、花王株式会社 DX戦略推進センター DXデザイン部 戦略企画室の廣澤祐氏です。

「企画」ってなんだろう?

世の中には広告業に限らず「企画」と呼ばれる仕事があふれています。たとえば、新商品の企画、販促イベントの企画といった実務上の企画もあれば、営業企画部、戦略企画室など、部署として「企画」を担っているケースもあるでしょう。こうした実態から考えると、本来、企画という仕事のスコープは非常に広いものであることがわかります。しかしながら、企画の仕事に携わる多くの方々が、知らず知らずのうちに自らの役割や能力、あるいは組織としての立場などを意識しすぎるあまり、非常に狭い視野で企画という仕事に向き合っているように感じられます。

無論、所属している組織のミッションや、そこで与えられる自身の役割を理解して、それにそって仕事を遂行するのはビジネスパーソンとして当たり前で重要なことです。他方で、技術の発達や外部環境の資源を手軽かつ安価に利用できるようになっている現代社会において、既存のビジネスの枠にとらわれずに新しいことに挑戦しなければならないという機運が社会的に高まっており、そうした世の中の流れに影響を受けて、各企業のなかでも現場から新たな企画が出てくることを期待されるようなシーンが増えているように思います。実際、急に新しいことへ挑戦せよと新規事業立案を任される、あるいは、突如として社内から自発的かつ積極的な企画提案を募集する制度が設立されるといった場面に遭遇しているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

しかしながら、急に何か新しいことを企画せよと言われても、やる気や熱意よりも戸惑いが先行してしまうという人も多くいらっしゃるかと思います。そういった方々の戸惑いを少しでも低減できればと思い、私がモデレーターを担当するAWA2022のセッション『企画で枠を超えていく』では、広告業界でクリエイティブディレクターやプロデューザーとして活躍しながらも、「広告」という枠組みにとらわれずに、さまざまな企画を実現している「企画のプロ」のおふたりをお招きし、手段に捕らわれずに企画を実現していくためには何が必要なのか、持つべき心構えや思考プロセスについて議論していきます。

『企画で枠を超えていく』のポイント

このセッションでは、元博報堂ケトルで2021年に独立されて株式会社deaの代表を務められている畑中翔太氏と、株式会社電通のコピーライター/プロデューサーの阿部広太郎氏のおふたりから、企画とは何か、企画に携わる者に必要なもの、訓練すべきことは何かを伺っていきます。

おふたりの最大の共通点は、広告会社のクリエイティブディレクターやプロデューサー、コピーライターといった肩書を持ちつつも、最終的なアウトプットは単なる広告コンテンツの企画にとどまらず、さまざまな手段を結合させながら新たな企画を実現している点です。当日のセッションでは、おふたりの代表的なワークを事例としてご紹介いただきながら、そのアウトプットがどのように作られていったのか、なぜ広告といった枠組みにとらわれずに企画を進めることができたのか、おふたりの企画という仕事に対する向き合い方や普段の仕事の進め方について、パネル形式で議論してまいります。

若くからさまざまな受賞歴などのあるおふたりの経歴だけを見ていると、もともと環境や才能に恵まれ順風満帆な道を歩まれたように感じてしまうかもしれません。しかし、畑中氏は入社したての頃は企業に対して自ら持ち込み企画でプレゼンを行い、阿部氏は初期配属の人事部からコピーライターへの転属試験を受けることで自ら企画の仕事を取りに行くといったご経験をされており、自らの道をご自身の努力で切り開いてきたおふたりでもあります。こうしたおふたりの経験に基づくお話は、小手先のスキルではなく、熱意をもって企画に取り組むことの是非をあらためて思い出させてくれるのではないかと考えています。

今年のAWAの重要なキーワードの一つが「熱狂」です。この熱狂というキーワードについて、自らの仕事に対する熱意という意味と、エンドユーザーを熱狂させる企画を創っていくという意味、ふたつの側面から再考していきたいと思います(参考1参考2)。

最後に:若手こそ積極的な参加を

2016年にAWAが日本で開催されるようになってから、今回で7回目の開催となります。実を言うと、私自身、2016年の初回から昨年まで聴講者として毎回参加していました。私がはじめてAWAに参加したのはまだ入社2年目の新人でしたが、幸い、当時の私の上司は外部のカンファレンスへ参加することに対してポジティブだったこともあり、行きたいと言えば参加費など関係なく送り出してくれるという恵まれた環境にいました。そのおかげで、普段、簡単には出会うことのできない他社の方の話を聞く経験や、現地で外部の企業の方々との交流によってさまざまな考え方や意見に触れることができ、ひとりのビジネスパーソンとして視野が広がったと実感しています。しかし、残念なことに、そのような恵まれた環境がある、あるいは、理解のある上司ばかりという企業も多くはないでしょう。実際、当時は私も会場で同世代の方を見かけることはほとんどありませんでした。

確かに、多くの外部カンファレンスはそれなりの負担を要することもあり、誰彼構わず参加を推奨することは組織として難しいというのもまた事実です。外部カンファレンスの参加に対してネガティブな理由は企業によってさまざまあるかと思いますが、代表的な負担のひとつとしてよく挙がる問題が参加費です。この問題について、AWAでは若手のビジネスパーソンが参加しやすいように、若手割引が適用されている「New Gen Delegate」というチケットがあります。もし、若手ビジネスパーソンの皆さんがこうした外部カンファレンスなどの参加について、金額負担などで所属している企業に打診することを躊躇しているのだとしたら、AWAは比較的参加しやすい金額設定になっていますので、ぜひ、一度は上司へ交渉してみてほしいと思います。金額の問題ではないというご意見もあるかと思いますが、若手が自ら外で学びたいという意思を示さない限り、組織や上司の認識はなかなか変わることはないでしょう。熱い想いを秘めていたとしても、声を出さねば伝わりません。若手の方は、ぜひ臆せずにご自身の上長へこうした機会の活用をご相談してみてほしいと思います。

他方で、もし若手の育成について、社内教育だけで限界を感じている、あるいは外部で学んでほしいと思うもののどういった学びを推奨すればよいかわからないと悩んでいるマネージャーの方については、部下の方へAWAのような場への参加を促してみてはいかがでしょうか。個人的な意見ではありますが、学びというのは、最終的には内発的な自分自身の意欲や動機が伴わなければ決して身につくことはないと考えています。強制的に「外部カンファレンスに行かされている」や「勉強させられている」と受動的に捉える人材に機会を与えるのはもったいないですが、学習の場があることを伝え、そのうえで自ら学びたいと考える人材にはぜひ機会を与えてあげてほしいと思います。

2020年~2021年については、Covid-19の影響で残念ながらオンライン開催となりましたが、2022年は久しぶりのオフライン開催となります。若手に限らず、カンファレンスにご参加いただけるみなさまの学びとなるよう、カウンシルメンバーとしても尽力してまいりますので、ぜひ、会場にお越しいただければ幸いです。

※DIGIDAY[日本版]は、ADVERTISING WEEK ASIA2022のメディアパートナーです。

Written by 廣澤祐
Image courtesy of ADVERTISING WEEK ASIA2022

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