信楽に “日本一大きいたぬき” を探しに行ったら「限度ってもんがあるだろ!」って叫びたくなった【巨大たぬき怒涛の11連発】

ロケットニュース24

『信楽焼』と言えば、たぬきの置物。笠をかぶってとっくりを持ち、玄関先によく置かれている例のたぬきだ。

行ったことがある方にはわかると思うが、信楽焼の故郷、滋賀県信楽町にはとにかく大量のたぬきが飾られている。その中でひときわ目立っているのが、建物の2階まで届くほどに巨大なたぬきである。

──ある時、ふと気になった。「信楽町で一番大きいたぬきって、どれだろう?」今回は筆者が信楽中を走り回って見つけた巨大たぬきをドドーンと怒涛の11連発でご紹介しよう!

・巨大たぬきには2種類ある

はじめにお伝えしておきたいことがある。今回のテーマは「日本で一番大きいたぬきを探す」なのだが、調べていくうち、一概にサイズだけではランク付けできないということがわかった。

なぜなら、製造方法が違うから。ほとんどの巨大たぬきはコンクリート製。そして、時々見かけるのが信楽焼製。信楽焼の巨大たぬきを作るには、かなりの手間と技術が必要なのだそうだ。

そのことを考えると、サイズだけに注目したランキングはナンセンス。ということで、今回は筆者が巡った時系列順にご紹介させてもらうことにする。


① 信楽たぬき村

信楽たぬき村は、県道16号線沿いにある。やきものを中心としたお土産の販売や、陶芸体験ができる施設だ。

たぬきたちは小さいものは店内、大きい物は屋外といった感じで所狭しと並べられている。


そして……


本日最初の巨大たぬきはこちら!

デカい! しかも3体もいた!!

比較のために立ってる筆者は、身長156cm。隣に立つと、大き過ぎてマジで迫力が半端ない!

ちなみに両端のたぬきは同じサイズ。写真でのサイズ差は、台に乗っているかどうかという違いだ。ここまで大きいたぬきが3体並べて設置されているというのは、信楽町内でもかなり珍しい。多くの観光客が写真を撮影する人気スポットである。


企画を進めていこう。大体のサイズを推測すると……

約4.5m!

このたぬきはコンクリート製。実を言うと、後ほど同じ形をした兄弟作が続々と登場した。

便宜上、今回の記事内ではこのタイプのたぬきを『コンクリたぬき』と呼ばせてもらおう。筆者調べでは、巨大たぬきの半数以上は『コンクリたぬき』であった。


② 澤善

陶芸体験、お土産物屋、宿泊施設、レストランと幅広く信楽焼を楽しめる施設。筆者が訪れた際も、10名ほどの方が真剣な面持ちで粘土と向き合っていたのが印象的だった。


そんな澤善の巨大たぬきはがこちら!


推定サイズは4.5mほど。

正直、隣に立っていた時はそこまで大きいとは感じなかった。目が大きくコミカルな表情のため、見る者に圧迫感を与えにくいのかもしれない。

なによりも素晴らしいのは信楽焼製ということ。3分割した状態で焼き、組み立てて作られているのだそう。信楽に来たら絶対にチェックすべき巨大たぬきのひとつだ。


③ ラーメン9(ナイン)

国道307号線沿いにある、2021年12月にオープンしたばかりのラーメン屋。今回見た中では唯一信楽焼に一切関係ない、かなりレアな店であることは強調してお伝えしたい。


置かれているのは『コンクリたぬき』

かつてこの場所には『やきもの横丁』という施設があり、たぬきはその名残ということらしい。

ラーメン屋ができるまでは色あせて汚れていたが、開業にあたってキレイに色を塗り直してもらったのだそうだ。心なしかたぬきの表情もハッピーに見える。これからも幸せに暮らしてほしい。


④ マルタカ陶器

国道307号線沿いにあり、信楽焼の販売と陶芸体験の店。③でご紹介したラーメン9から200mほど離れた場所にある。


こちらも『コンクリたぬき』

よく観察してみると、同じ『コンクリたぬき』でも色使いや目の周りの模様に個性がある。

ラーメン9のたぬきがオレンジやミントグリーンと言ったポップな色使いだったのに対し、マルタカ陶器のたぬきは茶色を基調としたオーソドックスなカラーで仕上げてあるようだ。ちょっとした違いだが、それぞれのオーナーのこだわりが見えるようで非常に可愛らしい。


……と、ここで撮影をしていた筆者に店員の方が教えてくれた。

店員「うちのはコンクリやけどね、南に行けば、信楽焼でもっと立派なの飾ってるところもあるで」


⑤ コタニ陶器

国道307号線をさらに1㎞南下した場所にあるのがコタニ陶器だ。信楽焼販売店とうどん屋の2店舗を経営しているそうで、307号線を挟んで両サイドに店がある。


『コンクリたぬき』が飾られているのは北側の店舗。

信楽の中心街にあり、おまけに店舗が平屋のため、大きさが強調されてかなり目立っていた。


ここでも店員の方から

店員「もっと大きい信楽焼のたぬきがある場所、知ってます?」

なんて教えてもらった。情報によれば、信楽焼製の中で一番大きいたぬきが近くにあるということ。巨大たぬき界隈では有名な存在らしい。場所を聞き、早速向かってみることにした。


⑥ かね馬

かね馬は、県道12号線沿いにある信楽焼販売店。中心街からはずれた場所にあるため、教えてもらわなければ行くことはなかっただろう。


ご覧あれ、これが日本で一番大きい信楽焼製のたぬきだ!!!!

店員の方に確認してみたところ「一番大きいのは確実だが、正確なサイズはわからない」ということ。


これまでと同様に推測してみると、

ううう~~~ん……これまた4.5mぐらい……?


……おかしい。このままでは②でご紹介した澤善のたぬきと同じサイズ ということになってしまう。周りの店舗から得た情報でも、かね馬の方のお話でも、このたぬきが一番大きいのは間違いないはずなのだ。

筆者の立つ場所やカメラの距離の違いにより、測定結果に大きな誤差が出てしまっているのかもしれない。あるいは証言が間違っており、澤善のたぬきこそが一番大きいのかもしれない。


真相はわからない。気になる方は実際に訪れて、その目で確かめてみて欲しい。


⑦ 丸伊製陶

再び国道307号線に戻って見つけたのが丸伊製陶。信楽焼販売店だ。

大きな目、ワイルドな口と、頭から足まで寸胴なスタイルが非常に愛らしい。今回見た中でもかなり個性的な顔立ちのたぬきであった。


店員の方によると、

店員「うちのたぬきは信楽焼製で高さ5mです」

とのことだが、おそらく台座部分も含めて5mなのだろう。

たぬきだけで考えると3.5mぐらいかな?

大きさだけで考えるともっと上がいるが、歴史的・個性的な価値があるのは間違いない。独特な雰囲気のたぬきは一見の価値ありだ。


⑧ 信楽高原鉄道 信楽駅前

信楽駅前にあるのはお馴染み『コンクリたぬき』なのだが、ここのたぬきは他と一味違う。


なんと……

コスプレをしているのだ!


浴衣や雪だるま、忍者やセーラー服など季節やイベントにあわせて着替えるそうで、筆者が訪れた時はバレンタイン風の衣装を着ていた。

衣装は信楽町観光協会の方が制作されているそうで、細かいところまで非常に丁寧な仕事である。(こんな奇抜なファッションのたぬきからチョコレートをもらったとしたら、その夜はとんでもない悪夢を見そうな気もするが……)

お腹に公衆電話が埋め込まれているのがチャームポイント。


⑨ 松本陶器

アットホームな雰囲気の信楽焼販売店である松本陶器の店先には、たくさんのたぬきが並べられている。

中でも一番巨大なのは、鮮やかなオレンジ色に塗られた『コンクリたぬき』。頭にかぶった笠(かさ)は黄色に輝き、縁起が良さそうだ。

他にも1.6~3mほどの信楽焼製たぬきが6体ほど並び、どれも顔や体型が違って個性豊か。ひとつとして同じものはなかった。


⑩ 狸家分福

続いてやって来たのは狸家分福(たぬきやぶんぷく)。信楽焼ギャラリー、食事処などを兼ねた店舗に設置されているのは間違いなく信楽で一番大きいコンクリート製たぬきだ。


なぜなら……

店舗そのものがたぬきの形をしているのだ!


大きいにしたって、限度ってもんがある。デカけりゃいいってもんじゃないんだぞ!

……そう思ってよく観察してみれば、筆者の感想が浅はかであることがわかった。これ、ちゃんとしっかり造形にこだわって作られているじゃないか。

プクッとした頬っぺた、ギョロギョロの目に細長~い鼻。ちょっと憎たらしく見えつつも憎み切れない、たぬきならではの愛らしさがある。


実を言うと、筆者は以前からこの店舗を知っていた。というか、この店舗をきっかけに「他にも巨大なたぬきがあるのだろうか?」と疑問に思い、今回調べてみた次第だ。

通行人の方にお話をうかがってみた際も「たぬきの形をした店舗がある」というコメントをいただいており、信楽で一番有名なたぬきのひとつと言っても良いだろう。


ちなみに店舗は奥の建物にも続いているため、正面からの見た目よりもかなり広い。


⑪ 山吉陶器

最後にご紹介する山吉陶器は、残念ながら既に閉業している。

近付くことができなかったため正確なサイズはわからないが、大体3m前後だろう。

夕方近い時間帯になっていたため、オレンジ色の光を浴びたたぬきの顔がどこか寂しげに見え、愛おしくなってしまった。

たぬきの置物に愛おしさを感じるなんて、信楽に来るまでは思ってもみなかったな……。


・どれも可愛い子ばかりです

以上が信楽を巡って見つけた巨大たぬき11選だ。誤差はあるが「巨大たぬきのサイズは大体4.5m前後」という知見が得られたのは、今回の企画における大きな成果だ。

面白かったのはたぬきたちの個性。信楽焼製はひとつひとつすべて顔や体型が違ったし、コンクリート製ですら色や塗装の具合によって違う顔に見えた。


──そしてなにより印象的であったのは、店員の方が皆そろって「可愛くとってあげてね」「きれいに撮ってあげてね」と言っていたこと。

信楽焼のたぬきは八相縁起と言われる縁起物で、持ち物ひとつひとつに商売繁盛や厄払いなどの意味がある。しかし信楽の人々の様子は単なる縁起物というよりも、まるで我が子に対して振舞っているよう。たぬきのサイズに負けないぐらいの大きな愛を感じたのであった。


信楽町内には、今回ご紹介したスポット以外にも巨大たぬきが設置されているスポットがあるらしい。興味のある方は是非、ご自身の足でたぬき巡りの旅に出かけてみてくれよな!

執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.

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