ベルリンでは、1月になるとクリスマスツリーの役目を終えたモミの木たちが一斉に路上に現れる。年に一度しか味わえない不思議な光景なので、ぜひお見せしたい。
私の住むドイツではクリスマスシーズンになると、本物のモミの木をクリスマスツリーとして飾る文化がある。
それまでは組み立て式のプラスチックのツリーしか知らなかったので、ツリーは毎年本物を買うものだと知って、衝撃を受けた覚えがある。
私と夫はクリスマスに対してドライなのでツリーは飾らないのだが、このクリスマスツリー文化、実はクリスマスが終わってからが面白いのである。
1月は路上クリスマスツリー祭り
クリスマスが終わった途端に訪れるのが、私が勝手に「路上クリスマスツリー祭り」と呼んでいる季節だ。
クリスマスツリーとしての役目を終えたツリー達が、こぞって路上に現れるのだ。
ついこの間までチヤホヤされていたクリスマスツリーが、裸の状態で道端に落ちているのを見るのはなんとなくかわいそうな気もする。
路上に転がるツリーたちを見ていると、クリスマスの浮かれた気持ちもかき消され、一気に現実へと引き戻される。
と同時に、普段は覗けない他人のプライベートの空間が道端に曝け出されるこの季節は、個人的には結構楽しみにしているシーズンである。
バイオ燃料としてリサイクルされるクリスマスツリー
そしてこの使い終わったクリスマスツリーは、路上に出しておくと1月中にベルリン市の清掃公社が回収しに来てくれるシステムになっている。
ベルリンでは毎年約35万本のクリスマスツリーが回収されるそうだが、回収された木はシュレッダーにかけられ、バイオ燃料としてリサイクルされるそうだ。
使い終わったクリスマスツリーは動物園の象たちなどのエサになるという噂があるが、一度使用されたツリーは飾りなどが残っていることがあるので、エサとして与えられるのは売れ残ったツリーのみだそう。
ベルリン動物園のパンダもモミの木をもらっててかわいい。
今年の回収期間は1月8日から21日で、各地区につき2回、回収車が路上に出されたツリーを無料でピックアップしてくれるそうだ。
なので、1月21日の最終回収日までが、路上クリスマスツリー祭りだ。それまでは、街中で数メートルごとにツリーが落ちている不思議な光景を楽しむことができる。
毎日散歩がてら、どんなツリーが落ちているか見るのが楽しいのだ。
また、回収日が近づくにつれてツリーの塊が大きくなっていくのを見るのも面白い。
清掃公社のウェブサイトでも、ツリーはまとめた状態で出してくださいと書いてあるので、これでも一応正しい出し方なようだ。
窓からツリーをぶん投げる文化
こうして路上に捨てられているツリーたちだが、たまにアパートの窓からぶん投げられていることもある。
初めて見たときは驚いたが、古くなったツリーは葉がボロボロ落ちるので一気に窓から捨てるのだそうだ。
義理の両親の場合、当時は一戸建てに住んでいたのでまだ分かるのだが、数年前の冬、アパートの4階からツリーが放り投げられるのを目撃した。
夫の母に先日その話をすると
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有名家具チェーン「イケア」の1996年の広告。謳い文句は「クリスマスツリーを捨てて、新しい物を買おう」だ。
イケアの発祥地スウェーデンにはクリスマスシーズンの終わりを告げる「聖クヌートの日」という日があり、飾りを片付けたりクリスマスツリーを捨てる風習があるそうだが、それに便乗してイケアは、毎年1月にツリーを窓から放り投げるコマーシャルを流しているそうだ。
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イケアの店舗では「クリスマスツリー投げコンテスト」も行われる。
窓からツリーをぶん投げる文化がイケアの影響なのか、それ以前から存在したものなのかは不明だが、とにかくベルリンのクリスマスツリーはクリスマスが終わってからが見頃である。
無駄は文化
路上に捨てられる木を見ながら「もったいないなあ……」と思うこともあるが、文化とか楽しいことってほとんど無駄でできている。
そんな自分は人のツリーを毎年タダで楽しませてもらっているので、逆にありがたいじゃないか。
これからも毎年路上クリスマスツリー祭りを楽しませてもらおうと思う。