新大統領で日韓関係改善の行方は – 舛添要一

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 11月17日、ワシントンで行われた日米韓外務次官協議後の合同記者会見は、韓国の警察庁長官が竹島を訪問したために中止された。日米韓の連携にヒビがはいることを恐れたためである。

 アメリカは面子を潰された感じだが、日韓関係を改善するのは困難である。

 来年3月に行われる韓国の大統領選は、与党「共に民主党」では、李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事が正式に候補に決まった。野党第一党の「国民の力」は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長が候補に選ばれた。

 与党候補の李氏は対日強硬派として知られており、文在寅路線を継承するだろうと見られている。これまでも、歴史認識などについて、日本を厳しく批判する言動を行なっている。予備選挙勝利後の10月10日、「日本を追い抜き、先進国に追いつき、世界をリードする大韓民国をつくる」と、日本への対抗心をむき出しにした。

 一方、尹錫悦しは、日本との関係改善を掲げ、「共栄の未来のためのビジョンを、首脳会談を通じて盛り込む」と公約で表明し、歴史問題や安全保障、経済などを1つのテーブルに載せ、一括解決の方式で扱うべきとの考えを示している。

 大統領選挙までに、懸案の徴用工問題について、文在寅政権が日本に対する厳しい姿勢を変えることはあるまい。

 戦後賠償については、1965年6月には、日韓基本条約が結ばれ、両国間で請求権の完全かつ最終的な解決が図られた。ただ注意すべきは、1965年の基本条約によって、損害を被った個人の請求権が消滅するものではないということである。

 徴用工訴訟は日本政府ではなく、日本企業を相手取っているので、その訴訟が無効ではなく、2012年5月23日、韓国の最高裁は、三菱重工と新日鉄に対する損害賠償請求を認めた。これ以降、韓国各地の地方裁判所で、同様な趣旨の判決が続いた。

 2018年10月30日には、最高裁は、新日鉄(現日本製鉄)に対し、原告4人に1人当たり1億ウォン(約920万円)の支払いを命じ、翌月の11月には、三菱重工業に対し元朝鮮女子勤労挺身隊らへの賠償を命じる判決を下した。

 勝訴した原告は、三菱重工業の商標権2件と特許権6件を差し押さえていたが、今年の9月27日に、韓国の大田地裁は、商標権2件と特許権2件を売却し、一人当たり2億973万ウォン(約2000万円)を確保するように原告に命じた。また、日本製鉄の資産の現金化手続きも進行中である。

 今年の1月、文在寅大統領は、「資産の現金化は日韓関係にとって望ましくない」と述べてはいるが、具体的な手は打っておらず、そのため日韓関係は暗礁に乗り上げている。

 来春の韓国の大統領選挙がどのような結果になるにせよ、青瓦台の新主人が対日関係改善に舵を切れるかどうかは、韓国の世論、とりわけマスコミの動向が大きく影響する。

 北朝鮮や中国の軍事的脅威に対抗するためにも、日韓の協力は不可欠であり、両国の指導者が大局的な観点から関係改善を模索する必要がある。文化や経済など民間の交流をもっと活発にすることもまた、好ましい結果を与えるだろう。

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