2021年10月8日、宇宙飛行士のトーマス・ペスケ氏がTwitterに投稿した「国際宇宙ステーションからヨーロッパ上空を撮影した写真」に、青い謎の光が写ったことが話題となりました。この青い光の正体について、科学系ニュースサイトのScience Alertが解説しています。
What The Heck Was This Blue ‘Luminous Event’ Photographed From The Space Station?
https://www.sciencealert.com/what-the-heck-is-this-luminous-event-captured-in-a-photo-from-the-international-space-station
実際にペスケ氏が投稿した写真がコレ。画像上に青く光る部分が確認できます。
実はこれと同様の光を、2015年に宇宙飛行士のアンドレアス・モルゲンセン氏が国際宇宙ステーションからムービーで撮影しています。
Andreas Mogensen captures gigantic lightning from the International Space Station – YouTube
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Science Alertによれば、この青い光は「超高層雷放電」と呼ばれる現象によるものだそうです。超高層雷放電は、通常の雷が発生する場所よりもはるかに上空で放電が発生する現象で、光や発生する場所によってさまざまな種類があります。
例えば、成層圏で発生する「ブルージェット」という現象は、本来下に落ちるはずの雷が上方へ雲を突き抜けて発生することで、大気中の窒素がイオン化して青い光が発生したものと考えられています。実際に2017年7月にハワイ・マウナケア山にあるジェミニ天文台で撮影されたブルージェットの写真が以下。
また、成層圏より上の中間圏で見られるのが「スプライト」と呼ばれる現象で、以下の写真のように赤い光が上に突き抜けます。これは落雷によって高高度に準静電界が発生したときに生じるとのこと。ブルージェットやレッドスプライトが発生する時には、「エルブス」と呼ばれる直径数百kmの巨大なドーナツ上の発光現象も見られるそうです。
さらに、こうした超高層雷放電は地球だけではなく、木星でも確認されています。2020年10月にNASAの木星探査機であるジュノーが、スプライトやエルブスが発生している様子を紫外線カメラで確認しました。
木星の雷は従来の予想と異なり「地球の雷に近い」と判明 – GIGAZINE
超高層雷放電には他にもトロール、ピクシーズ、ゴースト、ノームなどの発光現象が確認されています。ペスケ氏が撮影した現象がどの現象だったのかは不明ですが、Science Alertは、「雷がブルージェットほど上部に突き抜けなかった時に成層圏の下部に見られる『ブルースターター』と呼ばれる現象ではないか」と予想しています。
いずれにしても、超高層雷放電はわずか数ミリ秒~数秒にしか確認できない現象である上に、高高度で発生する上に雲で隠れてしまうため、地上から撮影するのは珍しく、ペスケ氏の写真は非常に貴重。ペスケ氏は「国際宇宙ステーションは雷雨の多い赤道上を飛行しているので、超高層雷放電の観測には非常に適しています」とコメントしています。なお、これらの超高層雷放電が発生する原理ははっきりとはわかっていないとのことです。
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