商店街には万国旗が良く似合う
外国が今ほど近い存在ではなく憧れの対象であった昭和の時代、 華やかさの象徴として商店街の飾りつけに用いられていたのは万国旗。
開発著しく巨大なビルが建ち並ぶ東京にも、 今もなお商店街装飾の古典とも言える万国旗を掲げる商店街がいくつか残る。
今回は、そんなどこか懐かしいレトロな雰囲気を持つ商店街を訪ねてみたい。
※2007年10月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
熊野前商店街
今回訪ねたのは東京都荒川区にある熊野前商店街。
はっぴぃもーる熊野前という愛称で親しまれている熊野前商店街は、 その名の通り、東京レトロの象徴とも言える都営荒川線の熊野前駅の駅前から伸びている。
一見、何の変哲も無い商店街。 しかし、ふと頭上を見ればつづら折りに連なる万国旗。 うかれ装飾の典型とも言えるこれらの旗が、 レトロな商店街の雰囲気とあいまって哀愁を誘う。
私は、このような万国旗で飾られた商店街が大好きだ。
午前中に訪れたため、まだシャッターが閉まっている店舗が多く、 行きかう人も少なめだが、それでもこの商店街には寂れた雰囲気は全く無い。開店前の準備に勤しむおじさんおばさんや、丁寧に整備された道路などが活気ある商店街というイメージを与えているのだろう。
この商店街は、端から端まで血が通っているような感じがする。商店街が一丸となって盛り上げていこうという努力を感じる。その最たる要因となっているのが、商店街を彩る万国旗であろう。万国旗は、商店街を構成する一軒一軒の店舗を縫い合わせ、 一つのまとまりにしているように見える。
万国旗って素敵だ。
祖父と万国旗
万国旗を眺めていると、祖父を思い出す。
祖父は世界の国旗に詳しい人だった。小学校の運動会、私はよく祖父と世界の国旗当てクイズをしたものだ。それは、掲げられた万国旗の国名を、端から順番に当てていくというもの。私はサウジアラビアの国旗がどうしても分からなかった。祖父は笑いながら、その国名を教えてくれたものだ。
そんな祖父はもういない。
しかし、祖父の国旗好きはどうやら私へと受け継がれたらしい。
私は、世界の国々の国旗を見るのが好きになった。
私は、地図を見るのが好きになった。
私は、旅行が好きになった。
現在、私のデスクの本棚には、必ず地図帳が常備されている。暇なときにはこれを見て時間を潰し、忙しいときにもこれを見て気分転換をはかる。世界の国旗や地図が描かれた地図帳は、私にとって欠かせないものとなった。
頭上に張られた万国旗をたどっているうちに商店街の端へと達する。 私は後ろに向きなおし、再び頭上の万国旗をたどっていく。それを二度、三度繰り返す。
空が青い。青い空には万国旗が良く映える。
尾久本町通り商店街
先ほどの熊野前商店街の一番奥まったところから東へ250mほど進むと、もう一つの万国旗を掲げた商店街、尾久本町通り商店街がある。
ここもまた、レトロで昭和な雰囲気を持つ商店街である。
この尾久本町通り商店街はやや落ち着いた印象がある。それは道路の幅がより狭いためだろうか。ただ単に人が少ないためだろうか。しかし、まぁ、そういうことが相まって、このノスタルジックな雰囲気は醸されているのだろう。
途中、この商店街の会長をやっているという和菓子屋さんで、万国旗に関する話を聞くことができた。
こちらの商店街では、毎年10月下旬にバザールをやっているという。 毎年、その時期になると、商店街を飾る万国旗を新しいものへと交換するそうだ。ちなみにこのバザール、今年で20回目となるということ。つまりこの万国旗は20年以上の歴史を持つということである。 いやはや、20年。驚きだ。
さて、今日は二つの商店街を歩いてみたが、意外に見るところが多くて結構疲れた。最後に、商店街が最も美しくなる時間である夕暮れ時の尾久本町通り商店街の風景を紹介して終わりにしよう。
そうして今日も日は暮れる
万国旗は良い。そして万国旗で飾られた商店街はもっと良い。万国旗の無い商店街など、商店街では無いと言っても良いくらいだ。万国旗に飾られた商店街は美しい、そして活気がある。
近年、商店街が廃れ、シャッター通りなどと呼ばれる商店街も多くなったが、 万国旗のある商店街は、いまだ活気のある商店街であることが多い気がする。少なくとも、今回訪れた商店街はそうだった。
今一度言う。私は万国旗がある商店街が好きだ。大好きだ。皆さんもぜひ、こういった商店街を見つけては、そのノスタルジーに浸ってもらいたい。いっそのこと、商店街萌えというのはどうだろう。