TikTokで大きな話題となり、インフルエンサーブランドは終わったという性急な宣言が出たことに続いて、セルフレス・バイ・ハイラム(Selfless by Hyram)がセフォラ(Sephora)から撤退し、次の動きを発表している。元祖Z世代のスキンフルエンサーのひとりであるハイラム・ヤーブロ氏は、同ブランドが閉鎖でもスローダウンでもなく、新たに価格を下げてターゲット(Target)に移ったことを、Glossyに対して独占的に認めた。
美容業界は劇的に変化している
1月初め、セルフレス・バイ・ハイラムがセフォラから撤退するというニュースは、同じくインフルエンサーであるアディソン・レイ氏によるアイテム・ビューティ(Item Beauty)がセフォラのサイトで大幅に値引きされたという報道とほぼ一緒に扱われていた。同じ時期に、アイテムのD2Cサイト全体が40%オフになっていた。セフォラから同ブランドが削除されているらしい件に関して、アディソン・レイ氏はまだ言及していない。彼女は11月に自身のTikTokで同ブランドを使用しているのが最後に目撃されている。
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セルフレス・バイ・ハイラムはセフォラのサイトではもう見つけることができない。同ブランドの製品は16ドル(約2060円)から30ドル(約3860円)で販売されており、セフォラが独占的な小売パートナーだった。2月5日から、同ブランドはターゲットのウェブサイトと店舗で販売スタートした。製品の価格帯は13ドル(約1670円)から24ドル(約3090円)となる。
「業界は劇的に変化している。さまざまなブランドが閉鎖され、美容に関するインフルエンサーのコンテンツを消費する方法が変化しているなかで、人々が(こうした)議論を行ったり、目にしたことにコメントしたりすることは責められない。確かに、セルフレスをほかのいろいろなものと一緒くたにするのは簡単だ。でも、自分自身は(ターゲットとの提携を)発表できるようになるまでとにかく待っていて、みんなには『ちょっと待って! もうちょっとなんだ。本当にエキサイティングなニュースがあるんだよ!』と伝えたかった」。
会社の状態については、「いまも全速力で前に進んでいる」と語った。
ますます美容の注目の小売の場となるターゲット
「つねにこのブランドがもっと入手しやすくなってほしいと望んでいたが、ターゲットはそれを意味している。(ターゲットによって)人々が本当に買い物をしている場所で(セルフレスを)手に取ってもらえる」。
ヤーブロ氏はフォロワーの多くが買い物をしている場所であることから、つねにドラッグストアの美容製品を勧めてきたと話す。「セルフレスがターゲットにあることを目にすれば、このブランドが今後どこに向かおうとしているのか、もう少し明確になり、理解もされるだろう」。ターゲットはますます美容のホットスポットになりつつある。アルタを300以上の店舗に拡大して以降、2021年には100カ所のアルタ(Ulta)のショップインショップをローンチしている。また、ナチュリアム(Naturium)、カラーポップ(ColourPop)、オリーブ・アンド・ジューン(Olive & June)など、話題のブランドも多数取り扱っている。
ヤーブロ氏はジ・インキー・リスト(The Inkey List)の創業者であるコレット・ラクストン氏とマーク・カリー氏と提携し、2021年にセルフレス・バイ・ハイラムを初めてローンチした。ブランドのメッセージでは、セルフレスがジ・インキー・リストに「支えられている」と表現している。
セルフレスのソーシャルポストとブランドポジショニングでは、成分に詳しく、時に「スキンテレクチュアル」と呼ばれ、#DermTokで肌のバリアとレチノールについて学んだであろうZ世代にアピールことを目指している。また、社会的影響への取り組みも若い買い物客から支持を得ている。すべての製品が、購入すると社会に還元される。
製品が入手しやすくなり、リーチを拡大できる
セルフレス・バイ・ハイラムがセフォラにローンチされた際は、世界的に発売された。ヤーブロ氏は、それによってもたらされたリーチに感謝していると語る。さらに、ラクストン氏とカリー氏はすでにセフォラと関係があったため、セフォラでの発売は理にかなっていたとも述べている。ジ・インキー・リストは、2019年からセフォラで販売されている。
だが、ヤーブロ氏は、今後はターゲットの方がより適していると言う。「(ターゲットの)チームとつながることができたのは、すばらしいことだった」。ヤーブロ氏がこの小売業者とのコンタクトを開始した。「自分のコンテンツやチャンネルになじみがあって、それが大きな足がかりとなった」。同ブランドは、全米50州にあるターゲットの775店舗で展開される。
新しい小売パートナーについて、ラクストン氏とカリー氏は声明で次のように述べている。「ターゲットとともにセルフレスをローンチすることに、非常に興奮している。それにより製品が入手しやすくなれば、さらに多くの顧客にリーチし、人々のためになると同時に、特別な才能のあるハイラム氏が手がけた高い効能の製品を顧客に届けることができる」。
ブランドを維持するためには膨大な労力が必要
ヤーブロ氏は、金融経済とクリエイター経済の双方の潮流が変化していることに気づいている。「ネット上でのクリエイターと人々との関係は進化している」と彼は言う。「TikTokは、製品について発言してリコメンドする人を民主化し、そしてさらに多くの人々がコンテンツを投稿したり、美容製品をレビューしたりするようになった。美容業界は、リコメンデーションのために主要なインフルエンサーにはそれほど注目していない。日常の人々が製品をレビューするのを見ることができるし、また皮膚科医や業界では異なる立場で働いている専門家のような、美容のエキスパートも存在する」。
また、彼はCovidが人々が美容コンテンツを消費する「スピード」を加速させたとも付け加えた。その結果、「集団的な疲弊」が起きているという。
ヤーブロ氏は明らかに、インフルエンサーブランドが終わったとは思っていない。だが、ブランドを維持するためには膨大な労力が必要であることを身をもって知っていると話す。
「特に美容の分野では、すべてのインフルエンサーがブランドをローンチする必要はない。コンテンツ制作の世界とはまったく違う」と彼は指摘した。「自分は苦労してそれを行った。自分たちが開発しているすべての製品の、本当に些細なあらゆるディテールについても知りたいと思ったし、ブランドづくりのすべての部分に参加したいと考えたから。でもそれは正しいことなんだ」。
[原文:Exclusive: After Sephora exit, Selfless by Hyram lands at Target]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)