乃木神社(東京都港区)を訪問した中国人俳優が非難された問題に便乗する形で、中国共産党系の「環球時報」が日本のアイドルグループ乃木坂46を、やり玉にあげている。
記事では、騒動をきっかけに「各種の戦犯を祀った神社がいまだに多く存在する」ことに警戒を呼びかけており、そのうちのひとつとして乃木神社が登場。陸軍大将の乃木希典を祭った神社で、記事では「日本の女性アイドルグループである『乃木坂46』の名前も、乃木希典にちなんだものであることは注目に値する」と主張している。
アイドルグループを歴史問題と結びつけた格好だが、このグループ名は最終オーディションが行われた建物「SME乃木坂ビル」(当時)に由来する。
2019年の乃木神社訪問が批判浴びる
そもそもの発端は、中国人俳優の張哲瀚(チャン・ジャーハン)さん(30)が、19年に乃木神社で行われた友人の結婚式に出席したことだ。当時の写真や、過去に靖国神社で撮った写真が21年8月になって中国のネット上で拡散され、批判が殺到。張さんは
「私は無知な自分を恥じ、これまでの不適切な行動を深く謝罪します」
「私は親日家ではありません、中国人です! 」
などとする声明を出したが、人民日報は
「公的人物として、このように一般的な歴史の知識がなく、民族の苦難に無自覚であることは許されない」
といった記事を掲載して批判を展開。微博(ウェイボー)をはじめとする各種SNSの公式アカウントを削除されるなど、芸能人としてきわめて厳しい局面に立たされている。
環球時報の記事は、この件に便乗する形で「ご用心!日本で戦犯を祖先として祀っている神社は他にもある」と題して8月25日にウェブサイトに掲載された。張さんの件に言及しながら、
「中国の世論は、こうした人気者の悪行を批判することに集中しているが、日本にはいまだに様々な戦犯を祀る神社があり、軍国主義の亡霊が浮かんでいるという事実にも警戒すべきだ」
と主張。東京裁判で死刑判決を受けて処刑された7人の軍人・政治家を祀った興亜観音(静岡県熱海市)に言及し、
「日本には、興亜観音のようなA級戦犯が祀られている場所のほかに、特定の軍国主義者を祀った神社が数多くある。 その中でも有名なのが、乃木神社と児玉神社だ」
と続けた。乃木希典は旅順を苦戦の末に攻略し、日露戦争勝利に導いたことで知られるが、環球時報の記事によると「悪名高い軍人」で、「日清戦争、日露戦争には、それぞれ旅団長、軍司令官として参加した。日清戦争後は第3代台湾総督を務めた、残虐な人物。 特に日清戦争では、悲惨な旅順の大虐殺に関わった」。神社については、次のように解説した。
「そんな血まみれの処刑人が、生前に対外侵略・拡大政策を忠実に実行していたことから、死後、日本の軍国主義者に『軍神』として崇められ、乃木神社は日本の軍国主義の重要なシンボルとなった」