ブラックホール入ってみた。
ブラックホールのことを名前くらいは聞いたことがあって、光が抜け出せないほどの暗闇…ってことは聞いたことがあるかもしれません。もしかすると、映画『インターステラー』で入った時の暗闇のイメージを見たこともある。なんて方もいるかもしれません。けれど実際に入ってみたらどうなるのか? というはっきりと答えの分からない疑問にNASAが映像で答えてくれました。
映像では、ブラックホールに落ちる人視点の映像をコンピューターシミュレーションしていて、約4億マイル(約6億4,373万キロメートル)からブラックホールにダイブするところです。まずは以下の動画をご覧ください。
ブラックホールにダイブしたら見える渦は何?
ブラックホールは宇宙で最も密度の高い物体の一つで、光であっても一度その中に入ってしまうと事象の地平面(ブラックホールの内側)から抜け出すことができません。それはブラックホールの重力が強烈であることによってもたらされているのですが、その中心の重力があまりにも強いため、これまでに吸い込まれた天体や光が、ブラックホール中心の周りにガス(降着円盤)として形成されます。
これらはブラックホールに吸い込まれる(降着する)時に数百万度に加熱され、オレンジや黄色の渦を形成します。これがダイブした後に見えていた渦の正体です。この一部を天文学者が観測して可視フレアと呼んでいます。一度境界を越えると、人間は13秒以内にスパゲッティ化する(スパゲティのように長く引き伸ばされる)そうです。何それ…恐ろしすぎる。
作者はどんな思いでこのシミュレーションを作ったのか
NASAのゴダード宇宙飛行センターの天体物理学者ジェレミー・シュニットマンは、リリースで次のように語っています。
私は2つの異なるシナリオをシミュレーションしました。ひとつはカメラが事象の地平面をかすめてもどってくるパターン。もう一つは、事象の地平面を超えてブラックホールの中心に向かうパターンです。
実際のところ、人類はブラックホール画像の撮影に成功していますが、捉える難易度は非常に高いので、コンピューターシミュレーションは理論を視覚的に理解する場面で大いに役立っています。
スパコンの圧倒的なスペックのおかげ
今回のレンダリングを普通のノートPCで行ったとすれば、その作業時間は10年以上はかかる作業量だったそう。NASAはスーパーコンピュータを使って今回の映像を作成し、そのために要した日数はなんと5日、スパコンのパワーの0.3%だったそうです。なんと強力なパワー。恐るべし。
スパゲッティ化した地点から、観測者は、ブラックホール中心の特異点に到達するまでのわずか79,500マイル(128,000キロメートル)の旅は、距離で聞くと長いですが、ブラックホール内ではほとんど一瞬で終わるそうです(ちなみに地球一周は4万キロ)。