航空会社に騙されたくない!っていう気持ち、なぜかある。
旅行へ行くのはワクワクするのに、航空券の予約は結構ストレスを感じませんか? 昨日見た時より高くなっていたら焦るし、もうちょっと待てば下がるのかも?と思って待ってみたり。そんな経験のあるみなさんなら、もしかしたら聞いたことがあるかもしれない、ネットで航空券を買う際のちょっとしたライフハック。ブラウザをシークレットモードで検索すると航空券が安くなるというもの。信ぴょう性がありそうですが、これ都市伝説らしいです。
格安航空券の通知サブスク会社GoingのCEOであるScott Keyes氏は「この都市伝説、私が死ぬ日まで世間に信じられ続けてしまうんだろうなぁと、もはや受け入れていますよ……」と米Gizmodoのインタビューに答えてくれました。Keyes氏は格安航空券の会社をやっている方なので、このライフハックが本当かどうか聞くには適任ですよね。
この都市伝説が始まったのは、オンラインでのユーザーの行動を追跡するために使用されるツールCookieが原因。航空会社がCookieを使用して航空券の検索を追跡し、その人がどのフライトを買いたいと思っているかを知って、価格を引き上げると信じられているのです。でもこれは航空券の価格設定についての根本的な誤解なんです。
航空券もジーンズも同じ
Keyes氏は、どのようにCookieが航空券以外のサイトで使用されているかを見てみることを勧めてくれました。たとえば、ジーンズのサイトを例にしてみましょう。Googleで「Levi’s」を検索すると、その会社から広告や割引が送られてくるかもしれませんが、Levi’sはあなた個人にジーンズの価格を上げることは絶対にありません。ジーンズも航空券も、あなたの興味がお金を落としてくれることが目的だからです。
でもジーンスと違って、航空券は日にちや季節によっても値段が変わるでしょ、とおっしゃりたい気持ち、わかります。ジーンズと航空券は違う、それ完全に正しい意見です。あと、航空券は必要ですが、新しいジーンズは絶対に必要というわけではないですしね。他にも航空会社は顧客を不当に扱ってきたいろんな問題もありますし。もし航空会社が一斉に協力して、Cookieを使用してあなたが見る価格を一斉に引き上げていたらどうでしょうか?
それはやっぱりないんです。
経済学者の調査
バークレー、イェール、シカゴ大学の経済学者チームが、大手の米国航空会社の価格設定アルゴリズムを研究しました。その研究では、全体的な予約は価格に影響を与えますが、個人の興味は全く影響しないということがわかっています。実際、研究では航空会社同士のフライトの価格が価格設定アルゴリズムに影響を与えないことも示されました。
「あなたの検索行動はほとんど影響はありません。しかし、もし最後の座席を最低価格で予約した場合は、そのフライトの他の全ての人に影響を与える可能性があります」と研究に取り組んだイェール大学の経済学者Kevin Williams氏はインタビューで述べています。
Consumer Reportsでは2016年にこの都市伝説を調査し、シークレットモードのブラウザと通常のブラウザで合計372回の航空券検索をおこないました。シークレットモードでは、約7%の割合でより安いフライトが表示されましたが、同時に約5%の割合でより高いフライトも表示されていました。そして88%の割合で、Cookieの有無に関係なく航空券の価格はまったく同じでした。ということで、Cookieのせいで航空券が高く表示されるという証拠はありませんでした。逆に、Cookieのおかげで特別なディスカウントが表示されている可能性さえあるそうです。
都市伝説の始まり
1978年以前の航空券予約はとてもシンプルでした。旅行代理店に行って、フライトをリクエストし、旅行代理店のスタッフが価格本を見て料金を確認。そして、航空会社に確認の電話をかけて、予約が完了。比較したり、セールを待ったりなどがないので、これはこれでいいと思うんですが、航空券はすごく高価でした。
1978年、米国議会は「航空会社規制緩和法」を可決し、航空運賃を大幅に安くすることとなります。しかし同時にそのシステムがとても複雑になってしまうのです。突然、安い航空券をゲットするための競争が激化しました。
2000年代初頭には、ExpediaやKayakなどの多くのフライト予約サイトが立ち上がり、さらに複雑化しました。ニューヨークからロサンゼルスへの航空券を購入するための1つの設定価格ではなく、選択肢が何十にも増えたのです。そして、現在に至るまで、航空会社は需要やその他の要因に基づいて、一日中フライトの価格を変更する動的価格設定をおこなっています。これにより、常に変動するチケット価格が非常に予測不可能なったのです。Keyes氏は「この都市伝説は、航空運賃が非常に不安定であるという事実から生まれたと言ってもいいでしょう」と述べています。
航空会社は航空券を買うすべての人にそれぞれ細かく価格を調整して利益を最大化しようとがんばっているなんてことはありません。航空会社にとって重要なのは、長期的な顧客。頻繁に利用してくれる顧客のための贅沢なラウンジや特典を作ったりすることからもわかるように、経済学者はこの考慮事項が価格設定アルゴリズムに取り込まれていることを発見しています。航空券の価格には多くの要因が影響していますが、ネットでの航空券検索はその要因に含まれていないのです。
でも信じてしまうのはなぜ?
この都市伝説が広まっている理由のひとつは、航空会社が私たちからできる限り搾取しようとしているという考えが信じられているからです。長距離移動で飛行機を利用するしか私たちは方法がないですし、航空会社はそれをわかっています。航空会社は食事、水、足元のスペースなど、基本的に必要なものに結構な金額を取ってきます。飛行機の機内では、誰がお金持ちかを顕著に見せられてしまうのです。
もうひとつは、私たちは企業がCookieで私たちを監視していることにに慣れているから。ソーシャルメディア企業は私たちの不安に応え、広告主は私たちに色々売り込んでいます。航空会社も同じことをするだろうと思ってしまうのは理にかなっているのです。
ではどうすればお得な航空券をゲットできる?
この記事を書くにあたって相談した航空券予約の専門家や経済学者が、最も安い航空券を見つけるためにできることがあると教えてくれました。最も重要なことは事前予約です。理想は、夏休みの航空券は冬のうちに予約してしまうこと。冬休みの予定は、夏に立ててしまうこと。とにかく半年前には航空券を取ることだそうです。
その他の方法は、いろんな航空会社やウェブサイトで航空券を買うこと。時間に余裕がある場合、数日間フライトの価格をチェックし続けてください。数日比較していれば価格が安くなることも結構あります。シークレットモードを使っているかどうかに関係なく、です!