宇宙に長期滞在すると、なぜ「骨がスカスカ」に? 解決に一歩前進

地球以外の星に引っ越す前に、そもそも宇宙に長く滞在することで起きる問題あれこれ。

人間の体への影響の1つに骨密度の低下があります。JAXAいわく、宇宙環境では、地球上の骨粗鬆症患者の10倍のスピードで骨密度が低下していくケースもあるといいます。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とマサチューセッツのフォーサイス研究所が、宇宙で骨スカスカ問題に関する研究論文を発表。対策の糸口が見えてきました。

なんで宇宙では骨スカになるの?

そもそも、なぜ宇宙に長く滞在していると骨密度が低下してしまうのでしょう。その理由は重力。

当然ですが、宇宙空間では地球と比較してわずかな重力しかありません。だから、物も人間もフワフワ浮遊できます。

しかし、骨は負荷がかかることによって、骨を作る細胞を生成します。逆に言えば、重力という負荷がないと、骨を作る細胞の生産が滞るということ。「重力で骨にストレスかかってないから、新しいやついらないっしょ?」って思われちゃうんです。その結果、宇宙にいると骨密度が下がります。

宇宙飛行士は、宇宙滞在1カ月で骨密度が最大1%ほど低下。それを食い止めるため、宇宙滞在の宇宙飛行士にとって運動は必要不可欠。ただ、それも完全な対策ではなく、応急処置レベルに過ぎません。骨密度は地球帰還後は回復しますが、その回復には数年を要するのだとか。

骨密度の発達に関係する遺伝子NELL-1

今回の研究では、「NELL-1」と呼ばれる特定の分子が、骨密度の発達/維持を助ける役割があることが示唆されました。そこで、この役割を長く維持しながら体内に止まることができる特別バージョンのNELL-1を生成。骨粗鬆症の治療薬であるビスフォスフォネートとNELL-1を合体させました。

ビスフォスフォネートとNELL-1合体治療を、地球のマウスと国際宇宙ステーション(ISS)滞在マウスに施して比較を実施。地球班のマウスはケネディ宇宙センターに滞在、宇宙班のマウスは4週間半滞在組と9週間滞在組に分かれました。宇宙班が地球に帰還し、実験期間を終えるころには、この治療を受けたマウスすべてに、骨の成長の兆候が見られました。それも、明らかな副作用はなしで!

人間での臨床試験、長期的効果はまだこれから

あくまでもマウスの話、それも短期間での話。長期的な安全性や有効性を示すには、まだまだデータが足りません。実験は始まったばかりではありますが、研究チームはポジティブな結果がでたことから大きな期待をもっています。

UCLAのプレスリリースで「宇宙探査の未来を強く約束できるものかもしれません」と語る筆頭著者のChia Soo氏。宇宙空間だけでなく、そもそも地球での骨密度の治療にも役立つかもしれません。

この実験論文は、NatureのMicrogravityにて公開されています。

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