スポーツの世界には、しばしば見落とされているひとつの逆説がある。スポーツリーグは熱狂的なファンダムで繁栄しているにもかかわらず、ファンとは意外と遠い距離を保っているということだ。
しかし、スペイン最高峰のサッカーリーグであるラリーガ（LALIGA）はアプリを刷新し、ファンとの直接的な関係を構築することで、この皮肉な状況から脱却しようとしている。具体的には、結果の重視をやめ、エンターテインメントハブのような存在を目指している。
アプリの刷新により、ファンは試合のハイライトを見たり、アーカイブ映像を探したり、お気に入りのチームや選手の統計データにアクセスしたりできるようになる。さらに、リーグのスポンサーによるコンテストや限定コンテンツも提供される。自身の詳細情報を登録したファンは、これらすべてを無料で利用できるという。現在のところ、アプリに広告を導入する予定はないようだ。
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アプリの刷新でファンを分析
「これにより、サッカーファンをより深く知ることができる」と、ラリーガのデジタル戦略ディレクターを務めるアルフレッド・ベルメージョ氏は語る。「結局のところ、ファンはニュースサイトからソーシャルメディアまで、さまざまな方法でサッカーを消費しており、多くの場合、チームやリーグは彼らについて何も知らない」と話す。
多くの熱狂的なサッカーファンが定期的にアプリにログインし、そこでのやりとりがリーグにとって、ファンの嗜好（しこう）についての貴重なインサイトになることを想像してみてほしい。この豊かな情報が力となり、リーグはメディアに関する野望の実現を目指すことができる。
「ファンから情報を集めることで、彼らがどのように行動し、どのようなプロダクトを好み、どのようなコンテンツを視聴しているかがよくわかる」とベルメージョ氏は語る。「これはスポンサーシップに関する提案を改善したり、特別なスポンサーシップパッケージを開発したりすることへの助けとなる」。
備えあれば憂いなし
単一のアプリには難しい注文に聞こえるかもしれないが、アプリは現代のスポーツ組織に必要不可欠なものとなっている。アプリは、一般的なデジタルメディアとともに、新たな収益源を切り開く存在だ。FCバルセロナ（FC Barcelona）、バイエルン・ミュンヘン（Bayern Munich）、チェルシー（Chelsea）などの有名サッカークラブは、スポーツ組織が急速にメディアブランドそのものへと変貌している実例だ。
「ある時点で、独自のOTTサービスをつくることになったとしても、このアプリがあれば、ゼロから始める必要はない」とベルメージョ氏は言う。「ラリーガと関わり合い、そのようなサービスに興味を持つようなオーディエンスを獲得できるだろう」。
しかし、ラリーガのより大きな野望が具現化する前に、アプリの刷新によって、リーグのオーディエンスに目に見えるインパクトを示さなければならない。ラリーガによれば、昨シーズン、アプリの月間アクティブユーザー数は160万人だった。
結果を把握するだけではないアプリへ
試合のハイライト動画は、オーディエンスの拡大に極めて重要な役割を果たすと期待されている。実際、ラリーガは動画を専門とするWSCスポーツ（WSC Sports）の協力のもと、AI技術を駆使し、試合ハイライトの制作と配信を自動化している。この技術はさまざまなハイライトをほぼリアルタイムでインデックス化し、自動ハイライト動画を制作してくれる。自動ハイライト動画はアプリ、ソーシャルメディアプラットフォーム、さらには、OTTサービスで共有可能だ。動画は標準的な9対16の縦型動画フォーマットでインデックス化されている。
「エコシステムを構築する最善の方法のひとつは、ラリーガ内でデータを生成することだ」とベルメージョ氏は話す。「私たちは（その種のデータを）ソーシャルメディアに頼りたくない。私たちにとって重要なことだが、（アプリを通じて）私たちが行っていることは、私たち自身のコミュニティをどのように構築するかに大きく関係している」。
アプリは今夏、2023/24年のフットボールシーズンに先駆けてリニューアルされる予定だ。
スポーツとエンターテインメント専門のエージェンシーであるフューズ（Fuse）のパートナーを務めるジェームズ・イングリッシュ氏は、「従来、リーグのデジタルサービスは、試合スケジュールや統計データといったファンへの情報提供に重点を置いていた」と語る。「リーグがオーディエンス、なかでも、特定チームではなくそのスポーツ全体をフォローする国外のファンを活用しようとするにつれて、このような状況が大きく変化している」。
［原文：Why Spanish soccer league La Liga is relaunching its app as part of a DTC play］
Seb Joseph（翻訳：米井香織／ガリレオ、編集：島田涼平）