販売員とAIをペアに。ショッピング体験を向上し、コンバージョン率もアップ

DIGIDAY

AIが支援するバーチャルライブ販売員は、ブランドにとって収益を向上させるとともに、オンラインショッピング体験をより魅力的なものにし、さらに商品の返品を減らすことにも貢献している。より多くのブランドがAIチャットボットに投資することによって、人間とAIのコラボレーションはよりポジティブな効果をもたらしているのだ。

アマゾン(Amazon)は、オンラインショッピング体験にAIを組み込んでいる最大の企業のひとつだ。2023年5月第三週、同社がショッピングプラットフォーム上での「対話型のインタラクティブな体験を再構築する」ために、シニアソフトウェアエンジニアの求人募集をしていることが報じられた

しかし、2022年に英国のカスタマーサービス研究所(Institute of Customer Service)は、AIチャットボットのようなサービスを利用する際に顧客がまだ信頼感を欠いていることを明らかにした。5人中2人(42%)が複雑な問い合わせをする際にチャットボットを避け、15%がテクノロジーを使って企業に問い合わせることに自信を持てずにいると報告されている。

一部のブランドは、AIカスタマーサービス戦略を最適化し、人間らしい要素を取り入れるようにしている。ニューヨークを拠点とするレディースファッションブランド「ルティ(Ruti)」もそのひとつで、元テック企業の幹部だったルティ・ジッサー氏が2009年に設立した。同ブランドは設立当初から、ショッピング体験にテクノロジーを組み合わせてきた。2010年には、購入履歴を追跡するシステムを開発し、ユーザーとより親密な関係を築けるようになった。

店舗では、AOV(平均注文金額:Average Order Value)と売上高に基づき、顧客と強い関係性を築くことができていたが、オンラインで同様の体験を再現することが難しかった。45歳以上の典型的な顧客層は、店舗でよりユニークな商品を購入しても、オンラインでは常にシンプルでクラシックな商品を選んでいた。このブランドは、2020年に販売プラットフォームのフィール(Feel)と協力し、バーチャルアシスタントの取り組みを開始した。ユーザーは、予約制のオンラインビデオセッションで「バーチャル・スタイリスト」と会話し、ブランドの品揃えを案内してもらうことができた。

「オンラインショッピングでは、お客様がサイトに行き、見て回り、カートに入れても、支払いを終えないことがある。そして、お知らせのメールを受け取ってから購入する。それが1週間かかることもある」とジッサー氏は言う。「しかし、誰かに話を聞くことができれば、自分に合うか合わないかを教えてもらえる。そのため、すぐに購買に結び付くことが多くなるのだ」。

2023年、ルティの3人のバーチャル販売員は、オープンAI(Open AI)のChatGPTにサポートされている。同ブランドはコンバージョン率を2022年下半期の54.3%から2023年上半期に57.2%まで高め、同期間に平均注文金額の改善率を54.4%から59%に上昇させた。接客の評価は、フィールのデータ分析ツールで行なっている。

フィールのAIは、まず、ブランドパートナーの標準的な顧客からの問い合わせ情報や顧客の検索内容を学習する。システムに統合されると、顧客との直接のやり取りもあわせて学習を開始する。たとえば、「おすすめの紫のイブニングドレスはありますか?」といった問い合わせがあったとする。AIが商品データベースから似合うアイテムを顧客に提案するサポートをし、バーチャルアシスタントは顧客の質問に答えることができる。

「多くの在庫を抱えるサイトでは、誰かが商品カタログを手作業で見ていくのに比べ、このセットアップは非常に優れた、迅速な回答を提供する」とフィールのCEOであるオーレン・ハーネヴォ氏は述べている。「売り手の効率を格段に上げることができるのだ。このAIモデルは購買データにもつながっている。だが、ブランドがより多くの商品を販売するのは、AIを通してというよりも販売員との会話を通してなのだ」。

ジェネレーティブAIをめぐる対話で一貫しているテーマのひとつに「ジェネレーティブAIはeコマースツールに高額投資ができない中小企業にとって、役立つツールになることが期待されている」というものがある。「ジェネレーティブAIの利用を成功させるには、巨大なチームが必要なわけではない」と、コンサルタント会社マッキンゼー(McKinsey)のパートナーで、2022年12月のレポート『生成AIの出現(Generative AI is here)』の共著者であるロジャー・ロバーツ氏は述べている。「この技術は基盤モデルの概念に基づいて動作するものだ。比較的小規模な技術者チームのサポートさえあれば、そのモデルを活用し、自社の独自データや商慣習などに合わせて微調整することで、とても良い結果を得ることができる」。

[原文:Brands are pairing customer service associates and AI to improve the shopping experience

(翻訳:SI Japan、編集:山岸祐加子)

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