屋外広告 がスタートアップとダイレクトレスポンスマーケターに大人気な理由:「景気低迷下でも、DOOH支出は変わらないだろう」

DIGIDAY

ブランドアウェアネス向上を求め、かつてはダイレクトレスポンスマーケティング一択だった小企業やスタートアップ勢がいま、積極的にデジタル屋外広告(DOOH)をメディアミックスに取り入れている。

「多くのスタートアップは、これまでパフォーマンス一択だった。実際、超が付く効率性を求めるなら、そうするしかない」と、デジタス(Digitas)北米のSVP/プレシジョンメディア部門トップであるリア・アスキュー氏は話す。「しかし、上のファネルに向かうなら、OOH(屋外広告)は極めて明快な次の段階であり、はっきり言ってそうすることが求められている」。

DOOH戦略に切り替える企業

たしかに、デジタル広告市場が大量の広告主、CPMの圧力、データプライバシーに関する取り締まりでますます混沌とするいまは、とりわけそう言える。事実、多くがさまざまなブランドアウェアネス戦術に切り替え、Facebookおよびインスタグラムにおける広告について再考を始めている。DOOHは、技術的優位性のおかげでターゲティング、効果測定、プログラマティックマーケティングツールに加え、メディアバイイングおよびクリエイティブにおける柔軟性をくれるからだ。

「時代は、ビルボード(広告看板)やバス停留所の広告枠を買っていた頃から、大きく変わった。それよりもはるかにインタラクティブ(双方向な)ユニットが、しかもさまざまな場所にそれぞれ独自のユニットが、いまや当たり前に存在している」と同氏は言い添える。「業界はデジタル化を急速に進めている」。

こうした状況に鑑み、オーラルケアブランドのココフロス(Cocofloss)、ヒーローコスメティクス(Hero Cosmetics)、ジョアビューティ(Joah Beauty)といったブランドはこのほど、SOS(ニューヨークのロックフェラーセンターやボストンのフェンウェイ・パークをはじめ、一般の人の出入りが多い全米各地のトイレにスマート自販機を設置する企業)と共にDOOH戦略を開始した。

「2023年度、ブランドアウェアネスに積極的にフォーカスしている」と、ジョアビューティのブランドディレクターであるヘイジン・チャン氏は話す。「だからこそ、DOOHは我々にとって極めて重要だ。美容スペースはいま、非常に混み合っている。そのなかで、いかにしたら新規顧客を掴めるのか? DOOHはその一手だ」(DOOH費の具体額は、チャン氏は明かさなかった)。

実店舗での買い物が続く以上、DOOHは欠かせない

飲料ブランドのレモン・パーフェクト(Lemon Perfect)と、生花販売企業のヴィーナス・エ・フルール(Venus et Fleur)も同様の試みに投資している。両社ともにパフォーマンスマーケティングに留まらず、ブランドアウェアネス向上を含め、メディア支出を多様化し、キオスクやほかのデジタルスクリーン経由でDOOHを活用している。

レモン・パーフェクトにとっては、これが初の投資であり、ポストコロナの変化傾向が続くなか、消費者の目の前に出るためにDOOHを試している。DOOHには、検索またはソーシャルメディア広告といったオンラインメディアチャネル同様、予算およびクリエイティブに関する柔軟性があると、同社は話す。費用対効果、キャンペーン実施期間に関する柔軟性、クリエイティブを交替できる能力が、今回の決断の決め手だったという(DOOHの具体的な支出額については、同社は明かさなかった)。

「人々が今後も実店舗で買物をし、生活様式に基づくPOI(ショッピングモール、ゴルフコースなど)を訪れる限り、DOOHは我々のマーケティング戦略に欠かせない存在になるだろう」と、レモン・パーフェクトのブランドマーケティング部門ディレクターであるリチャ・アナンド氏は米DIGIDAY宛てのeメールで語った。

成長の初期段階にあるブランドにとってはとくに魅力的

ヒーローコスメティクスは一方、2023年度にDOOH投資を増額しており、同社マーケティング部門VPエイミー・カルホーン氏によると、投資額はブランドアウェアネスメディア予算の約5%を占めるという。同社がDOOHを利用するのは今年で3年目であり、「その額は2021年から2022年、2023年と確実に増えている」と同氏はいう。なお、同社は2021年夏に、デジタルタクシートッパーから同戦略を始めた。

また、「2022年にDOOH顧客需要が概算で20%増加した」と、クアン・メディア・グループ(Quan Media Group)CEOのブライアン・ラッパポート氏は話す。「今年1月、あるブランドがDOOHのみのキャンペーンを実施し、ディスプレイやキオスク、電子看板を利用するとともに、効果の程がわかるよう、QRコードも付けた」とも付け加える。

「クリエイティブに関する柔軟性を活用でき、なおかつ余計な制作費を負担せずに済む。また、提供に必要な時間を短縮でき、何よりも実生活のイベントを引き立たせられるうえ、UGC(ユーザー生成コンテンツ)も利用できる能力は、成長の初期段階にあるブランドにとって、非常に魅力的なものになっている」と、同氏は米DIGIDAY宛てのeメールに書いている。

柔軟性に富むこともポイント

OOH収益は2022年、前年比で20.7%増加し、86億ドル(約1兆1180億円)に達したと、全米屋外広告協会(OAAA)は報告した。さらに、OAAAによれば、DOOHセグメントは2021年に比べて24.2%増加し、2年連続で20%以上の成長を遂げたという。

DOOHの柔軟性は多くの広告主にとって大きなセールスポイントだと、エージェンシー幹部らは話し、「そのため、たとえ景気下降によってメディア予算が厳しく精査されることになっても、DOOH支出は変わらないだろう」と予想する。

「DOOHはアウェアネスとコンシダレーション(検討)において著しい伸びを見せている、というデータがある」とアスキュー氏は話し、「DOOHにほかのメディア、すなわちソーシャルアドバタイジングと並行して実施すると、パフォーマンスを上げてくれる」という。「支出額の前年比増が、我々にとってはその証だ。だからこそ、個人的には2023年もこのまま続くものと期待している」。

[原文:Why DOOH is a big draw for startups and direct response marketers

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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