書籍レビューの未来を担うはずだったGoodreadsをダメにする「レビュー爆撃」

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Amazonが運営している書籍のレビューサイト「Goodreads」は、以前からなりすましアカウントを止める手だてがないという問題が指摘されていましたが、これに加えて、書籍や著者を攻撃する「レビュー爆撃」を防ぐ方法がほとんどないことが指摘されています。

Goodreads, Amazon’s website for book lovers, causes problems in publishing – The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2023/07/01/amazon-goodreads-elizabeth-gilbert/


Goodreadsは2006年にサービスを開始した書籍のレビューサイトで、読書リストや書籍の感想・評価・批評などが公開されています。創業者はスタンフォード大学で知り合ったというオーティス・チャンドラー氏とエリザベス・クーリ氏。チャンドラー氏は日刊紙・Los Angeles Timesで20年にわたりトップを務めた同名の編集者であるオーティス・チャンドラーの子孫にあたります。

Goodreadsのアイデアはチャンドラー氏が友人の本棚を見ていてひらめいたもので、初期は口コミでユーザー数を増やしました。2011年にはレコメンドエンジンを持つDiscovereadsを買収し、ユーザー数は500万人以上に達しました。


ユーザー数が1600万人に達した2013年、AmazonがGoodreadsを買収しました。AmazonはGoodreadsと競合する書籍カタログサイト・Shelfariを2008年に買収済みでした。2016年に、AmazonはShelfariをGoodreadsに統合しています。

しかし、Goodreadsそのものは2013年のAmazonによる買収以来、ほとんど姿を変えていません。

作家で本に関するポッドキャスト配信も行っているマリス・クライツマン氏は「全盛期のGoodreadsは本の販売を助けてくれました」と述べる一方で「Goodreadsの軌跡は、革新的ですばらしいことをした、刺激的なものでした。そしてAmazonが買って、終わりです」とも述べました。

AmazonによるGoodreads買収の金額は非公表となっていますが、1億5000万ドル(約216億円)ほどとウワサされています。元Amazon従業員のクリスティ・コールター氏によれば、GoodreadsのデータをKindleの機能強化に活用する予定があったとのこと。

しかし、実際にはGoodreadsは技術が古く、データも十分に整理されておらず、最新状態にするためには多額の投資が必要な状態でした。また、大きな変更を行うとユーザー離れが起きる可能性もあるため、AmazonはGoodreadsに大きな投資をすることなく、ほぼそのままの姿で運営が続けられることになりました。

その結果、放置されることになった問題がモデレーションです。Goodreadsには「Goodreadsエキスパート」なる肩書きの人物がいて、「本の内容とは無関係に著者を攻撃している」などのルール違反の投稿を削除しています。しかし、管理は手動で行われているため、処理に時間が必要となっています。

モデレーションの不備によって生まれたのが、低評価レビューによる「レビュー爆撃」です。ニュースサイト・Timeは「レビュー爆撃」によってお金を作者からゆすり取る詐欺師の存在を報じています。

Goodreads’ Problem With Extortion Scams and Review Bombing | Time
https://time.com/6078993/goodreads-review-bombing/


また、ジュリア・ロバーツ主演で映画化された「食べて、祈って、恋をして(Eat, Pray, Love)」の作者であるエリザベス・ギルバート氏は新作「The Snow Forest」の出版延期を決めています。これは、作品の舞台が1930年代のソビエト連邦であり、ロシアによるウクライナ侵攻が進行中であることから、一部のウクライナの読者が強い反発をしたことが理由だとのこと。


反発は、Goodreadsでレビュー爆撃という形で意思表明されていて、「The Snow Forest」はGoodreadsで大量の1つ星レビューがつけられていました。Goodreadsはマーケティングに利用されることもあって、書籍の出版前からレビューを書くことが可能な仕組みになっているため、こうしたことが可能でした。

出版業界のコンサルタントであるジェーン・フリードマン氏は、良質な出版社でも話題創出のためにGoodreadsで高度なレビューを行う案を提示することはあると説明した上で、「出版社にとってGoodreadsは強力なツールです。ただし、武器としても用いられる本当の『諸刃の剣』なのです」と述べました。

「バッド・フェミニスト」などの著作で知られるロクサーヌ・ゲイ氏は、ギルバート氏の出版延期を受けて「Goodreadsには一つ星レビューの爆撃を阻止するための仕組みが本当に必要です」とツイートしています。

Goodreads really needs a mechanism for stopping one-star attacks on writers. It undermines what little credibility they have left.

— roxane gay (@rgay)

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