50年以上前に人類を初めて月面へ運んだアポロ月着陸船に搭載されていたプロセッサはこんな感じ

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アメリカが推進した人類初の月への有人宇宙飛行計画がアポロ計画です。このアポロ計画の月着陸船に搭載された、通信用のプレモジュレーションプロセッサ(PMP)を入手したとして、コンピューター歴史家のケン・シリッフ氏が画像を公開しています。

Talking with the Moon: Inside Apollo’s premodulation processor
https://www.righto.com/2022/05/talking-with-moon-inside-apollos.html

PMPは、およそ38万kmも離れた月面から宇宙船が地球に通信を行うために、通信音声・データ・映像信号を組み合わせて処理するための装置です。重さは14.5ポンド(約6.6kg)です。普段はケースに入っているそうですが、シリッフ氏は中身を見るためにケースを外したとのこと。


中身は11個の部品で構成されています。各部品は金属製の基板銅線やトランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオードがスポット溶接されており、グルーガンで固定されています。ICなどの集積回路は一切ありません。


以下の図はPMPを含んだシステム全体の回路図。アポロ宇宙船から発信される信号のほとんどがPMPで処理されており、音声・映像・データ信号を組み合わせた信号が超短波あるいはSバンド無線で送信されました。


以下はPMPのスイッチング電源で、18Vの電圧を供給します。


地上から超短波で送られてきたデータと音声を受信するモジュールにはアメリカの老舗時計メーカーであるBulovaによって作られたバンドパスフィルターが搭載されていたとのこと。


地上に送信するためのテレメトリデータを0・1のデータに変換する二相変調器モジュール。内部にある金属の箱は1.024MHzのバンドパスフィルターとのこと。


アポロ月着陸船は地上と直接無線で通信していたそうですが、月着陸船に問題が発生して地球までの通信ができなくなった場合に備えて、司令船を介して通信できるようにするためのモジュールがこれ。

他にもさまざまなモジュールがあり、すべてがシリアルポートなどで接続され、1つのPMPブロックとして構築されました。


シリッフさんは「PMPは、アポロ宇宙船がいかに複雑だったかを物語っています。音声・データ・映像という3種類の信号を送るだけならそれほど難しくありませんが、すべてを冗長化する必要があったのです。さらに、地球とは通信しづらい月の裏側にいる時もデータを記録したり、司令船や月面の宇宙飛行士とも通信を行ったりします。その都度に信号を切替えて、それぞれの状況に合わせて無線通信を最適化する回路が必要だったのです。PMPは、アポロの通信システムに必要な数多くの箱の1つに過ぎないのです」と語りました。

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