TikTok に賭けるESPN、1年で21万人のフォロワー獲得:「若いオーディエンスにアピールするにはもっとも効果的なプラットフォーム」

DIGIDAY

ESPNとESPN+を「ホッケーの拠点」に。そう位置づける戦略の一環として、ESPNはZ世代の視聴者とホッケーファンに狙いを定めた。ナショナルホッケーリーグの新シーズン(2022-2023)開幕に向けて、同社はクリエイティブエージェンシーのファロン(Fallon)と連携し、新たな広告スポットの制作をはじめ、ホッケー全体を盛り上げるような施策を展開しつつ、主にTikTokを通じてファンとのつながりを深める考えだという。

ESPNでNHLマーケティングのシニアディレクターを務めるルーカス・フェラーロ氏はこう説明する。「TikTokを活用して、スター選手の個性や独自性を、普段氷上で目にするのとは異なる角度で紹介し、見る人に共感と関心を持ってもらえる方法で、彼らの注目度を高めたい」。ESPNがNHLの試合を放送するのは昨年に続き、2シーズン目になる(ESPNは2004年以降、NHLの放送から遠ざかっていた)。

ファロンとの広告制作には14人のスタッフが参加し、将来殿堂入りが期待される選手や若手成長株、激しさを増す今日の試合のもようなどに焦点を当てている。ウォルトディズニー(The Walt Disney Company)が保有するスポーツプラットフォームも動員した。さらに、今回の「ザット・イズ・ホッケー」キャンペーンでは、NHLのアナリストで元花形選手のマーク・メシエ氏を起用し、ESPNとESPN+がホッケーファンにとって最高の場であることを視聴者に印象づけている。

1年足らずで21万5000人のフォロワーを獲得

NHLのシーズンが始まり次第、このスポット広告はESPNの「マンデーナイトフットボール」を含め、ディズニーその他のリニアおよびデジタルの有料プラットフォームで放映される。また、インスタグラム、Facebook、Twitterに加えて、今季はTikTokでのプロモーションにも注力する計画という。

ESPNがTikTokに開設したNHLのアカウントは、立ち上げから1年足らずで21万5000人のフォロワーを獲得するまでに成長した。ESPNがNHLのために策定したソーシャルメディア戦略は、NFLのコンテンツクリエイターネットワークで展開している戦略と同様に、若年層の視聴者をターゲットにしている。「TikTokはNHLのソーシャルメディアアカウントの柱であり、若いオーディエンスにアピールするにはもっとも効果的なプラットフォームでもある」とフェラーロ氏は述べている。

ESPNとファロンが手を組むのは今回が初めてではない。金銭的な合意内容は不明だが、両者は昨シーズンの「オール・フォー・ホッケー」キャンペーンでも連携した。ESPNはこのキャンペーンを通じて、17年ぶりに実現したNHLの帰還を祝し、ホッケーに対する愛と献身を宣言した。

ESPNのポジショニングを次のレベルに引き揚げるため、「ザッツ・ホッケー」キャンペーンでは、昨シーズンの取り組みをベースに、ESPNのホッケーに対する深い造詣をより明確かつ宣言的にアピールすることをめざしている。「ホッケーの世界から、本質的に話題性があり、視聴者が共感できて、インパクトの強いストーリーを提供したい。今季の『ザット・イズ・ホッケー』は、シーズンを通してそのためのプラットフォームの役割を果たす」と、フェラーロ氏は語った。

フェラーロ氏はESPNの広告予算についてはコメントを控えた。そのため、このキャンペーンの予算も不明だ。パスマティクス(Pathmatics)によると、同社が今年これまでに支出した広告予算は4200万ドルをやや上回る。コネクテッドテレビ、ソーシャルメディア、ストリーミングプラットフォームの予算配分についても、フェラーロ氏は公表を避けた。

ホッケー文化の柱としての位置づけも期待

昨シーズンのキャンペーンの展開中、ESPNのレギュラーシーズンの視聴率は過去最高レベルに達した。一方、スタンレーカッププレーオフの視聴率は、ケーブルと地上波を合わせ、前年の全プレーオフよりも60%増加した。イースタンカンファレンスファイナルの視聴率は82%の大幅増となった。ABCとESPN+で放送された昨シーズンのスタンレーカップファイナルの視聴者数は460万人にのぼり、その前年のスタンレーカップファイナルの平均と比べて84%増加した。

テレビ広告会社のアンパサンド(Ampersand)でリージョナルバイスプレジデントを務めるナタシャ・シナゴーグ氏は、「NHLの復帰は、スポーツのことなら何でもESPNに聞けというブランドイメージの強化に貢献する」と述べている。「最高のテレビ視聴率と熱烈なファンベースを誇るマンデーナイトフットボールは、NHLの新しい広告を公開するには最適の番組だ」。

ESPNは、ホッケーに関するあらゆる情報を提供するワンストップショップをめざす一方、ホッケー文化の柱としての位置づけも獲得できればと期待している。フェラーロ氏によると、現在、ESPNが潜在的な成長領域として狙うのは若者層と女性だという。「この層の視聴者をESPNのエコシステムに誘引することに加え、昨シーズンに伸びを見せたデモグラフィック属性に基づいて、視聴者拡大の機会を模索したい」。

[原文:ESPN bets big on TikTok to become ‘home of hockey’ for Gen Z fans

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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