TikTok で有名人の整形手術が大きな話題に。そしてそれが物議を醸している

DIGIDAY

TikTokには無数の奇妙なトレンドやニッチな話題が転がっている。そのなかでも依然として興味をそそるのは、特定の有名人が行ったかもしれない(あるいは行っていないかもしれない)整形について整形外科医が推測するというものだ。

整形手術はTikTokで大きな話題になっている。ハッシュタグ #PlasticSurgery は180億ビュー以上を記録している。これは以前、Glossyポップ・ニュースレターでも取り上げたトピックだ(Z世代インフルエンサーの間で豊胸手術がカムバックしているという記事を参照)。それに豊胸手術だけではない。整形外科医は、Z世代の患者が目立って急増していると報告している。実際、米国顔面形成外科学会(American Academy of Facial Plastic and Reconstructive Surgery)が2月に発表したデータによると、75%の形成外科医が30歳以下の患者の急増を経験している。

ソーシャルメディア上で有名人の整形手術を語ることの是非

前述したセレブリティの整形手術に関する動画には話題性がある。そして場合によっては、訴訟の脅威に拍車をかけている。2020年、TikTokに200万人のフォロワーがいるビバリーヒルズの形成外科医ダニエル・バレット医師が、ヘイリー・ビーバー氏は多くの顔の手術や注射に加えて鼻形成術を受けているとほのめかした件で、ビーバー氏は医師を訴えると脅しているが、その投稿は今も残っている。そして6月中旬にはクリッシー・テイゲン氏がケイ・ドゥライラジ医師(別名@beautybydrkay)の投稿に反応した。その投稿で医師は次のように書いている。「この投稿には悪意はない。単にオーバーフィル(ヒアルロン酸の入れ過ぎ)とそれによって起こりうる結果について議論するためのものだ。クリッシー・テイゲン氏の『新しい顔』。間違ったやり方をすると、あなたの顔がどうなってしまうか見て!」

これに対し、テイゲン氏はインスタグラムでコメントした。「悪意はない? でも、やり方を間違えたら、こんな顔になるかもしれないって言うわけ? 最低だ。私は太っただけ」。

過去にも2020年に、バレット医師は「E!オンライン(E! Online)」で自身のTikTokを次のように擁護している。「私のTikTokアカウントの目的は、整形手術の透明性を高め、整形手術について人々を教育することだ」。形成外科医やセレブリティ、そして両者が選択した整形手術は、この話題について広く議論するためのきっかけであり、非現実的な美の基準を打ち砕くのに役立つのだという人もいる。

一方で、ソーシャルメディア上で整形手術について議論したり、自分自身や自分の診療所を売り込んだりするのは間違ったやり方だし、単純に倫理的ではないと考える人もいる。この記事に情報を提供してくれた何人かの形成外科医が、TikTokへのアプローチの仕方や、セレブリティの顔について議論することについてどう考えているかなど、それぞれのやり方について明かした。

有名人の整形を指摘する理由

この種のコンテンツを作成したことのあるバレット医師は次のように語る。「このタイプのコンテンツには細心の注意を払わなければならない。自分の患者でない限り、確かなことは言えない。だが自分の患者であっても、HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)の関係で、患者の許可がない限り、実際にその患者について話すことはできない。だから自分の意見として話すしかない」。

バレット医師は、一般人を取り上げてこの手の動画を作ることはないだろうと述べた。しかしセレブリティに関しては「整形の証拠となり得る兆しを指摘する必要性を感じている」という。

「明らかに整形しているセレブリティが、整形していないと言いふらしていれば、実在の人物の見た目に関する誤ったイメージを作り出してしまう。そして、それは社会全体にダメージを与える。それが私がこうしたことをやる主な理由だ。もうひとつの理由は、こうした話題について実際に話ができる場では、フォロワーとのエンゲージメントが大いに高まるからだ。私は人々を教育することができる。整形手術ってどんなものなのか? クールだし、楽しいものだ」。

憶測で語ることへの反対意見

カリフォルニア州メンローパークの顔面形成・再建外科医、ドミニク・ガダレタ医師の意見は違う。ガダレタ医師は、セレブリティが行ったかどうかわからない手術について推測することは、医師の倫理規定に反すると考えている。問題となっている投稿の類を見ると「ぞっとする」と医師は言う。「セレブ文化は明らかに、人々が魅了される非常に興味深いテーマであり、人々はそれを利用しているが、じつのところ私はこうしたセレブリティに同情している。セレブリティはスポットライトを浴びていて、人々はセレブが自分の体や顔に何をしたかを知っていると主張している」。それは効果的なマーケティングかもしれないが、結局のところ「整形手術をいかがわしい職業のように思わせる」ものであり、すでに一部の人々はそうした認識だ、とガダレタ医師は認めている。

別の方法としてガダレタ医師は、ソーシャルメディアを使ってビフォーアフターの画像を見せているが、これは「それ自体に説得力がある」し、将来的に患者になりそうな人々が見たいと思っているものだという。また、医師はよくある質問にも対応している。

ロサンゼルスを拠点とする形成外科医、アレクサンダー・リヴキン医師は、過去にセレブリティ関連のソーシャルメディアコンテンツを投稿したことがあるが、今はもう投稿していないという。今ではそのようなコンテンツは「この分野の品位を落とす」と医師は考えている。

「自分が知らない、会ったこともない人のことを憶測している。ある照明の下で決まった位置で撮られた画像一枚を見ただけで、その画像について結論を出している。バカみたいだ」とリヴキン医師は言った。

セレブリティは仕事の性質上、イメージで商売をしているため、リヴキン医師はプライバシーの問題については懸念していないという。とはいえ、カーダシアン家のような私たちが目にしているセレブのイメージの多くは現実的ではないという認識を持つべきだ、と医師は考えている。「Photoshopなど、こうした人々のイメージを作り上げる業界全体が存在する。本当に大切なことは、非常に操作されたこれらのイメージに自分の価値を左右されないことだ」。

ソーシャルメディアが若者に与える影響への懸念

複数の外科医が、カーダシアン一家やジェニファー・ロペス氏が非現実的な美の基準を広めていると指摘している。ロペス氏は、見た目を若く保つのはオリーブオイルのおかげだという。オリーブオイルについて、ガダレタ医師は次のように話す。「明らかにジェニファー・ロペス氏のような人たちは、決して何もしていないと言っている。肌をそのように保っているのは、1日に小さじ1杯のオリーブオイルを飲んでいるおかげとか、そういったことを言う。だがどう見ても、外科医として、そして素人としてさえも、それが真実でないことはわかる。カーダシアン一家もこの手のことでは昔から有名だ。でも結局のところ、自分が何をして、何をしていないかを共有するかどうか決めるのは、その人個人の判断なのだ」。

最終的に、おそらくもっと重大な懸念であり、対処すべき課題となっているのは、ソーシャルメディアがこれまで以上に大きな影響を及ぼしているという点だろう。これは特に若い患者が診察室を訪れるようになる中で、ガダレタ医師が日々考えていることだ。最近、18歳の患者が来院したという。「初めて会ったとき、彼女はスナップチャットで自分を撮っていて気づいたという小さなことを執拗に繰り返した。私は彼女に顔の非対称性と、それがいかに一般的であるかについて説明した。誰かの顔を鏡で見て左右を反転させれば、顔はまったく違って見える。だから彼女と向き合って、そういうことにこだわらないようにすることについて話し合った」。

[原文:Glossy Pop Newsletter: Celebrity plastic surgery is huge — and controversial — on TikTok]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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