たとえば職場で、学校で、新しい人を迎えるときにこんな風に出迎えてほしいメソッド
週刊少年ジャンプをはじめ、少年マンガ誌には独特のやり方がある。
私がとてもジャンプらしいなと思う展開が「次のステージに上がったときに、個性豊かな面々が一気に出てくる」というものである。
この手法をマスターしておけば新入りが来たときにとても盛り上がるので覚えておこう。
ジャンプっぽいなと思う一斉登場
最近マンガ喫茶でランダムにたくさん読んでみた。すると週刊少年ジャンプ作品はどれも独特のノリがあった。
なかでも私がこれがジャンプっぽいなと思ったのが…
・次のステージに進むと
・個性的なキャラクターたちが
・一気に出てくる
というコマだった。
たとえば宇宙惑星オリンピックという大会に出ることになり、その会場にいくと各惑星の出場選手が一斉に出てくる。「惑星四天王の一人、炎の星代表、ファイヤーマン」「惑星四天王を束ねる将軍、水の星代表、ウォーター・ドラゴン」というような。
とにかく一斉に出てくる。細かいエピソードはその後で一人ずつ描く。私がこの手法を意識したのが落語マンガだった。落語に弟子入りすると兄弟子がたくさん出てくるのだ。
私達の生活にも導入できるのでは?
落語にもジャンプ手法が通用するのかと驚いたものの、いやいや、たしかにこれは普遍的なことかもしれない。
たとえば私がデイリーポータルZで書くことになり、会議を訪ねたとき(次のステージに進んだ)時、知らない新しい人達が一斉に出てきた。
でもそれはあなたの職場で学校で起こっていることでもある。こういう状況は人生で頻出するのだ。
そう、今日皆様に提言したいのは「ジャンプ的な出迎え方を知り、新入りを盛り上げてあげよう」ということだ。
新入りが盛り上がって好印象を持ってくれると、やめたりしないし、すでにある輪を尊重してくれたりと、とにかくいいことづくめだ。
新人にはどのように見えてるのか?
それでは実際にどうすればいいのか。その盛り上げ方を具体的に考えてみよう。デイリーポータルZの会議を訪ねたときをマンガだとするとこうなる。普通はこうだ。
これでは個性が足りていない
日本全国でこういうことは起こっている。だけど「ジャンプっぽいな…!」と思ったことは少ないだろう。それはなぜか。上記の条件から見ていくと個性が足りてないのではないか。
ためしに今と同じ構図で「この人はインテリで」などキャラクター性をポーズやちょっとした小道具で強めてみた結果がこちらである。
個性を出して出迎えるとジャンプ的盛り上がりが高まる
成功である。私の思う週刊少年ジャンプ感がここにある。読者でなくても当事者からすると「なんだかおもしろそうなところにやってきた」感があり、物語が生まれ、盛り上がる。
もっと個性を出したいなら衣装も
なぜ4月に入った社員があなたたちの会社を辞めたのか。それはスーツが4人並んでいたからではないか。
今のはポーズやちょっとした小道具で個性を出したのだが、衣装から変えるとより個性が出るのではないだろうか。
今度は衣装から変えてみよう。
個性が強いと盛り上がる
盛り上がった。手術中の人がデイリーポータルZをどうしているのかバントの指示は誰に出してるのかさっぱりわからないが、物語が始まった。なんだかわからないままに盛り上がっていく。
様々なスペシャリストが集うのは盛り上がりを生む。それはパーティーを組むRPGゲームやアニメ映画『サマーウォーズ』を考えても確かだろう。特殊な衣装を身につけると適材適所を勝手に感じ取って盛り上がるように人の脳はできている。
問題は一般的な会社のように、特殊な衣装を身に着けにくいシチュエーションだろう。もっと簡単に個性は出ないものだろうか。
簡単に個性を出す方法は? たとえば帽子は?
もっと言えば個性はどこまで減らしても大丈夫なのだろうか。たとえば青の人、赤の人、と色違いの名札をしていても個性か。いや、想像するにそれは「カラフルな名札の人」という枠組みに回収されてしまうだろう。
帽子はどうだろう。「あの麦わら帽子かぶってた人」など帽子は印象に残りやすそうだが、帽子で個性が出てくれるならかんたんだ。
様々な帽子をかぶったうえでそれでも個性は出るのだろうか。
帽子が流行しているグループでしかないか
これはある。「なんかこのサークルの人たちよく帽子かぶってるな」「流行ってるんだろうな」という状況はある。そこになってしまう。
とはいえ、ノーマルに比べて多少の個性は出ているだろう。「なんか楽しそうだな」と少しだけ盛り上がってくれそうではある。
一旦ここまでの結論。
・個性が出ると新入りとしては物語が生まれて盛り上がるものがある。
・なのでできるだけ個性を出して盛り上げてあげたい。
・個性を出すためにはなんらかの演出があったほうがいい。
さてここから考えてあげたいのは個人事業主問題である。
個人だとどうすればいいのか
会社はいい。人数がいて各々が個性を出せば盛り上げられるのだから。だけど私のようなフリーランスのライターを含む個人事業主たちはどうなんだ。インボイス制度に引き続きここでもまた不遇をかこつのか。
それではいけない。弱者を切り捨てる社会は強者をも息苦しくさせるだろう。いや、個人事業主でなくてもいい、チーム内で孤立している一人はどうやって新人を出迎えればいいのだ。一人でも出迎える方法を考えたい。
モノじゃだめなのか
たとえば人ではなくモノで個性を出すことはできないのだろうか。最近うちに届いたキーコーヒーのギフトセットには3種類の味があった。これだって立派な個性じゃないのか。
一体どういうことかというと……
となるのだろうか。ならんだろう。さすがにコーヒーは地味すぎるのではないか。もっとはっきりとした……
ならん
ブタメンの味は個性豊かだとは思うのだがやはりまだちょっと足らないか。全部ブタだからだ。
そこでブタではなく、キャラクター性を強めてみてはどうだろうか。
この人はなんなんだ
おやさいかりんとうをならべてこの人は何をしているんだ。
負けを認めよう。だが負けだと思っていても突き進むべきときが、人にはあるのだ。
ここまではコーヒー、ブタメン、おやさいかりんとう、とモノの種類を縛った上で個性を発揮させていた。だがもっとモノ自体から変えてみてはどうか。負けそうだろう。そう、突き進むときは今だ。玉砕は覚悟のうえである。
「さようなら、すべての個人事業主たちよ……」とエヴァンゲリオンの映画の最後で言ってた気がする。私にはどうにもできなかったが、せめて世の中の人は一人でいる人にやさしく温かい声をかけてあげてほしい。
今までのご愛読ありがとうございました!
こうしたどうでもいい実験でも、一握りの真理をつかみとることがある。それは砂のようなもので、たちまちにこぼれ落ちて、残っているのは小さじ半分程度の真理ではあるかもしれないのだけれど。
今日ここに残っているのは、新入りを出迎えるときはちょっと個性的にいってあげようということと、一人の人にやさしくしよう、安藤さんってどういう人なの、この辺りだろう。
安藤昌教さんはデイリーポータルZの編集部で私の担当であり、この記事の編集者であり、ものをむかずに食べるむかない安藤という活動をしている人でもある。