JR北海道、道内駅の1割を廃止か、経営効率化を加速…日本の安全保障上の懸念も


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札幌―稚内間を結ぶ特急「宗谷」。261系気動車で運転される。(2023年6月、札幌駅にて本稿記者撮影)

「北海道にある334駅のうち、約1割にあたる無人駅42駅が廃止される」

 このような情報が飛び交ったのは今年6月中旬。北海道新聞が6月17日に報じたものだ。経営難にあえぐJR北海道はここ数年、経営効率化を目的としてさまざまな手を打っているが、その動きはさらに強まりそうだ。

宗谷線では16駅を廃止、「特急列車専用路線」は確実か

 北海道新聞の報道によると、「JR北が廃止などを検討する42駅」として、函館線では国縫や比羅夫、根室線では東滝川、石北線では緋牛内などの駅を廃止、宗谷本線では最多となる16駅の廃止が検討されているという。旭川から順に駅を見てみると、旭川四条、新旭川、永山、北永山、比布、蘭留、塩狩、〇和寒、剣淵、〇士別、多寄、瑞穂、風連、名寄高校、〇名寄、日進、知恵文、智北、〇美深、初野、恩根内、天塩川温泉、咲来、〇音威子府、筬島、佐久、〇天塩中川、問寒別、糠南、雄信内、南幌延、〇幌延、下沼、〇豊富、兜沼、勇知、抜海、〇南稚内、〇稚内と39駅ある(〇は特急停車駅)。このうち、廃止されるのは瑞穂、日進、智北、初野、恩根内、天塩川温泉、咲来、筬島、佐久、問寒別、糠南、雄信内、南幌延、下沼、兜沼、抜海の16駅とされる。

 地元関係者は「もし報道のように廃止が実施されれば、残りの駅は23駅。特急が停車する駅は(宗谷線内で)10駅であり、ほぼ特急専用路線といわれても仕方ない」と見解を示す。

 旭川から出ている稚内方面の特急は、札幌‐稚内間を結ぶ特急「宗谷」1日1往復と、旭川‐稚内を結ぶ特急「サロベツ」1日2往復のみ。一方、快速としては名寄まで向かう快速「なよろ」が1日4往復のほか、普通列車の運転もある。もし本当に特急専用路線になるのであれば、運行形態の変更も生じてくる。例えば特急を増やして設定し、停車駅を変更。その特急でしか止まらない停車駅を設定するなどの案もあろう。ただ考えだしたらキリがなくなるため、ここで終わりにしておく。

宗谷線は安全保障上重要な役割、安易な路線廃止は慎むべき

 稚内というのは日本の安全保障上、重要な場所でもある。現在も続くウクライナとロシアの戦闘だが、日本はロシアと隣り合っている国である。稚内は日本国内で最もロシアと近い場所にある。もし稚内が危機に陥れば、国の危機にもつながる可能性がある。それを食い止めるには人員を送って戦力を増強すると同時に、住民を避難させる必要がある。そこで必要となるものの一つが鉄道だ。航空機だけでは足りないこともあり、第2の手段として鉄道を使うことができれば、国の安全保障において有効な手立てを保有することになる。

 有事の際、高速道路などを航空機の滑走路として使用する「代替滑走路」という考え方もあるが、国内での議論はあまり進んでいない。航空法79条には「航空機は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない」とある。基本的には空港等以外の場所で離陸・着陸できないものの、国土交通大臣の許可さえあれば可能となるのであれば、活用できなくはない。ただし、「高速道路の強度があるのか」などといった懸念もあることから、実現できるかどうかはわからない。

 北海道では現在、高速道路は士別剣淵インターチェンジまでつながっている。国土交通省によると、道内では北海道縦貫自動車道(国道40号)音威子府バイパスが令和7年度に全線開通する予定となっており、利便性はさらによくなるはずだ。

 JR北は路線の廃止をこれからも進めていくのだろうが、せめて宗谷線と函館線、石北線、根室線は路線を残しておき、前述の通り有事に備えておく必要があろう。採算が取れない駅などは積極的に廃止すべきだが、すべての路線や駅を廃止すべきではない。JR北はこうした点を理解して路線の廃止にはできるだけ慎重になるべきだ。

(文=小林英介)

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