イントロダクション
現代のマーケターからはYouTuberの信頼性とリーチの向上がますます求められている。YouTuberのニッチなオーディエンスが今日のマーケティング戦略の鍵となることが多いからだ。だが、ソーシャルメディアプラットフォームのサイロ化が進み、コンテンツ作成がさらに特化するにつれて、提携のために適切なインフルエンサーを選択することが重要になっている。そして、これは複雑でもある。
ユーザーが毎日投稿するコンテンツの量が急増するにつれて、ブラウジングエクスペリエンスはさらにカスタマイズされて個別化されている。「インターネット(または、少なくともインターネット動画)は、ひとつの町の広場のように感じられたものから、関心あるトピックについてだけではなく、個人を中心に組織された広大なマイクロコミュニティへと変化した」と述べているのは、デジタルコンテンツ企業、ポータルA(Portal A)の共同創業者兼マネージングパートナー、ザック・ブルーム氏だ。「作成されているコンテンツは膨大な量だが、それは、人々がもっと小規模なグループや特定のグループに分かれ始めるには十分だったのだろう」。
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ハワード大学のユヴァイ・マイヤーズ・ファーガソン准教授は、特定のブランドの主張に高い関心を持っている一部の少数グループ、特にZ世代の若い消費者にリーチできるユニークな機会が存在していると述べている。デジタルネイティブのこの世代は、嘘のない真正で本物のオンラインインタラクションに新たな期待を抱いている。最大の成長を続けているこの消費者層は、Googleによると2025年までに労働力の27%を占めると予測されており、ブランドにとってこの若い市場を獲得することは極めて重要である。また、メディアエージェンシー、ホライゾン・メディア(Horizon Media)の調査によると、18~25歳のZ世代の大多数(91%)が「主流の」ポップカルチャーは存在しないと回答したという。
ホライゾン・メディアの文化的・社会的行動を調査するWHYグループ(WHY Group)で文化情報担当のシニアバイスプレジデント、マキシン・ギュアヴィッチ氏は「(Z世代は)もはや単純にひとくくりにできない。そして、その細分化はますます激しくなっている」と述べている。
こうした文化的・社会的行動の変化を推し進めているのは、クリエイターとも呼ばれるソーシャルメディアインフルエンサーである。彼らは、ニッチなデジタルコミュニティ内の最新のトレンドをしばしば定義している。モーニングコンサルト(Morning Consult)によると、YouTubeはZ世代からもっとも利用されているプラットフォームで、この世代の80%から利用されており、YouTuberはブランドと若い購入者をつなぐ重要なポイントになっている。特に小売業者やD2CブランドにとってのYouTubeパートナーシップは、ショッパブル動画などの次世代テクノロジーでデジタル世界と実店舗の間のギャップを埋め、よりシームレスなオムニチャネルエクスペリエンスを生み出すのに役立つ可能性がある。
Glossy+リサーチでは、YouTubeで注目されている影響力のある美容・ファッション インフルエンサーのリストを挙げて、ブランドパートナーとしての彼らのパフォーマンスを分析し、長所と短所の両方を考察する。このシリーズでは、まずYouTubeのブランドパートナーシップとさまざまなマーケティング目標に最適なインフルエンサーのタイプについて取り上げる。パート2では、YouTubeアフィリエイトマーケティングに見られる幅広いトレンドについて詳しく解説する予定である。
メソドロジー
このGlossy YouTubeインフルエンサー指標では、13人のインフルエンサーと彼らのYouTubeチャンネルからデータを収集し、一連の重要なディメンション(項目)を採点して、指標となる合計平均スコアを算出した。各インフルエンサーには、特定のディメンションにおいて平均以上または平均以下のパフォーマンスを示すための指標の平均から導き出した偏差値が与えられる。
これらの結果はインフルエンサーのリストとデータ収集期間に依存するものであり、ある特定の時点におけるインフルエンサー分野の評価を生成している。Glossy指標では、2022年(2022年1月1日〜2023年1月1日まで)のYouTubeデータを2023年2月に収集した。
インフルエンサーは、「スキンフルエンサー」としての専門知識を提供しているという評判に基づいてGlossy編集チームが選択した。長文の貴重な美容コンテンツを作成したり、フォロワーが十分な情報に基づいて美容製品の購入を決定できるようにサポートする正直な意見を提供しているかが考慮された。
この指標では、インフルエンサーのパフォーマンスを測定するために、主要な4つのディメンションを用いた。以下、今回のセレクションにあたり、あまり影響を与えない項目からもっとも影響度の高い項目へと順番に紹介する。
•非スポンサードエンゲージメント:非スポンサードコンテンツの平均視聴回数と比較したインフルエンサーのエンゲージメントの尺度。インフルエンサーの非スポンサードコンテンツの影響と視聴者の質を示す。エンゲージメント率が高いということは、視聴者数が多く、フォロワーと共鳴するインフルエンサーであることが示されている。
•スポンサードエンゲージメント:スポンサー付きのコンテンツの平均視聴回数と比較したインフルエンサーのエンゲージメントの尺度。非スポンサードエンゲージメントと同様に、スポンサードエンゲージメントはブランドスポンサー付きのインフルエンサーコンテンツが一般にそのインフルエンサーの視聴者の共感を呼んでいるか、また、共感の程度を示している。
•ブランドプロミネンス:ブランデッドコンテンツの存在、ブランデッドコンテンツの種類、インフルエンサーとパートナーブランド間の相乗効果を測定し、インフルエンサーが優れたコラボレーションパートナーとなるケースを判断する。
•オーディエンスインパクト:インフルエンサーの昨年の総リーチの尺度。このディメンションではオーディエンスの規模と全体的な投稿活動を測定する。
インフルエンサーの大部分(13人中12人)は美容インフルエンサーに分類され、もっとも一般的な製品カテゴリーに基づく「その他」カテゴリーのインフルエンサーは1人だけだった。「その他」カテゴリーには、食品、ゲーム、テクノロジー、アルコールのブランドとのコラボレーションが含まれる。2022年に有料パートナーシップの投稿を行わなかったインフルエンサーは、スポンサードディメンションに分類されず、スコアもつけられなかった。
インフルエンサーのほかに、YouTube動画を長尺動画とショート動画という2つの主要グループに分類した。ショート動画は60秒未満のバーティカル動画形式として分類してある。この指標では、さまざまな動画製品のエンゲージメントを適切に評価するために、動画の2フォーマットを非スポンサードエンゲージメントとスポンサードエンゲージメントというディメンションで別々に測定している。
全員の合計では1060本の動画があり、この指標では570本の長尺動画と490本のショート動画が評価された。
支出額あたりで高いエンゲージメントを得るのに最適
ケイト・ガードナー氏とラモン・パガン氏
ケイト・ガードナー氏(YouTubeでは@StateofKait、登録者数は2.05万人)とラモン・パガン氏(YouTubeでは@GlowByRamon、登録者数は5.52万人)は、非スポンサード動画とスポンサード動画の両方で視聴者からの強いエンゲージメントを引き出し、Glossyのインデックスでトップにランクされたインフルエンサーである。
インフルエンサーのおすすめを観てそれを購入する可能性の高い忠実なオーディエンスに対して広告を打ちたいブランドにとって、オーディエンスの規模は最重要なメトリックではないかもしれない。むしろ、このグループは特定のオーディエンスからの注目を確実に保証している。
彼らの登録者ベースはこの指標のインフルエンサーにおいては最小だが、登録者数に対する平均視聴数の割合はほかの大規模なインフルエンサーと比べて非常に高く、また、それはあらゆる種類のビデオ形式やスポンサードコンテンツにまで及んでいる。たとえば、ガードナー氏とパガン氏の平均視聴者数は、それぞれの総購読者数の38%と23%を占めているが、この2人のインフルエンサーを除いた指標の平均は6%である。
また、両氏の動画の視聴者は「いいね!」やコメントで動画に関与したいという強い意欲を持っている。ガードナー氏とパガン氏の動画は平均視聴数がもっとも低かったものの、非スポンサードコンテンツとスポンサードコンテンツ全体でもっとも高いエンゲージメントスコアを獲得した。これがブランドにとって意味するのは、実際のエンゲージメント数は少ないかもしれないが、忠実な購読者のオーディエンスが関与する可能性は高いということであり、小さなオーディエンスで高いエンゲージメント率というのは支出額あたりのエンゲージメント数が高い可能性が示されている。
ガードナー氏は、非スポンサードエンゲージメントとスポンサードエンゲージメントの両方で最高スコアである10を獲得した。パガン氏は非スポンサードエンゲージメントで9.1、スポンサードエンゲージメントで9.2を獲得。これは全インフルエンサーのなかで2番目に高いスコアである。この2人のオーディエンスは、非スポンサード動画と同様のレベルでスポンサードコンテンツに関与している。2人とも(スポンサードと非スポンサード)両方のエンゲージメントにおいてほぼ同じスコアを獲得した。
ガードナー氏とパガン氏には、彼らの専門知識とアドバイスを信頼する消費者がいる。したがって、両者がもっとも一般的に投稿しているのは、レビューやお気に入り、ベストビデオだ。両者は、そのような動画や説明テキスト全体で製品のおすすめにスポンサーが付いているかどうかについての透明性を持っている。これは、正直で信頼できる情報のチャンネルとしてオーディエンスからの信頼を確立するのに役立っている。
インスタグラムやTikTokなど、広告のように感じられることもあるショート形式のスポンサードコンテンツを優先するほかのプラットフォームとは異なり、YouTubeの長尺形式ではスポンサードコンテンツはオーディエンスにとってより優れており価値が高いように感じられるようになっている。ガートナー氏のスポンサード動画が受け取った「いいね!」とコメントの平均総数を昨年の平均視聴数と比較すると、同氏のオーディエンスは、指標内のほかのインフルエンサーと比べて4倍近いコメント数をガードナー氏の動画に残している。ガードナー氏は1.9%で、指標の平均は0.5%である。
これは、(異なる)プラットフォーム全体でオーディエンスとの自然なタッチポイントを作りたいと考えているブランドにとって非常に有益だ。YouTubeでは有料コンテンツが本物であると感じられ、また、このようなインフルエンサーはオーディエンスにとってよりオーガニックな統合を生み出すためにうまく機能している。
信頼性が高く確立されたブランドパートナーシップに最適
アレクサンドラ・アネレ氏、ジェームズ・ウェルシュ氏、ステファニー・レッダ氏、エイヴァ・リー氏
コンテンツ制作に携わり、生の視聴数とエンゲージメントを確実に獲得できる経験豊富なパートナーに興味のあるブランドは、チャンネルでスポンサードコンテンツを提示する方法を確立している次のようなインフルエンサーに注目すべきだ。
アレクサンドラ・アネレ氏 (YouTubeでは@AlexandraAnele、登録者数120万人)、ジェームズ・ウェルシュ氏(YouTubeでは@JamesWelsh、登録者数150万人)、ステファニー・レッダ氏(YouTubeでは@SMLx0、登録者数110万人)、エイヴァ・リー氏(YouTubeでは@GlowWithAva、登録者数38.6万人)は、レギュラーのオーディエンスを多く抱えており、美容の専門家として高い評価を得ている。
これらのインフルエンサーのプラットフォームではブランデッドコンテンツが大きなプレゼンスを持っているため、これらのインフルエンサーはアフィリエイトマーケティングに精通している。オーディエンスインパクトとブランドプロミネンスのスコアが高いこのグループは、ブランドとの協働経験が豊富で、どのような種類のスポンサードコンテンツが自分のオーディエンスに共感されるかを理解している。
昨年チャンネルに投稿されたスポンサードコンテンツの量を見ると、アネレ氏は、非スポンサード動画と比べてスポンサード動画の割合がもっとも高かった。投稿のうち、89%に製品広告またはブランドスポンサーシップが含まれていた。アネレ氏と同様に、レッダ氏の場合も動画の大部分(78%)にスポンサーシップが含まれていた。
このインデックスの全インフルエンサーと比較して、アネレ氏、リー氏、ウェルシュ氏はオーディエンスリーチとブランドプロミネンスの合計スコアがもっとも高かった。レッダ氏はブランドプロミネンスに関して7.1のスコアを獲得、指標のグループ内で最高だった。ハイラム・ヤーブロ氏やタティ・ウェストブルック氏、アリーシャ・マリー氏らメガインフルエンサーと比べてフォロワー数は数百万人少ないにもかかわらず、この(4人のような)インフルエンサーらは同じほど高いスコアを達成した。
良好なエンゲージメントと多数のブランドパートナーシップを持つベテランのインフルエンサーらは、スポンサーシップ分野で関与するパートナーを求めているブランドにとって優れた選択肢である。ケイト・ガードナー氏とラモン・パガン氏を除いて、このインフルエンサーのグループは「いいね!」やコメントに基づいたもっともアクティブなオーディエンスを抱えている。レッダ氏は非スポンサードエンゲージメントで7.5を、スポンサードエンゲージメントでは4.5を獲得。ウェルシュ氏のスコアは、非スポンサードエンゲージメントでは6.1、スポンサードエンゲージメントでは5.5だった。アネレ氏とリー氏はスポンサードエンゲージメントスコアがそれぞれ6.1と3.4だった。この数値は両氏の非スポンサードエンゲージメントのスコアよりも高かった。
このカテゴリー内のインフルエンサーは、オーディエンスの信頼を得るために透明性のあるマーケティング手法を使いながら多くのフォロワーを獲得している。たとえば、ジェームズ・ウェルシュ氏は全動画に一貫した意味を明確に伝えるマンガのアイコンを含めている。
•プレゼントの箱 – ギフトアイテム: 製品はギフトとして送られたもので、金銭との交換や投稿義務はない。
•メガホン – スポンサードアイテム:ブランドは動画に登場したアイテムに対してインフルエンサーに支払った。
•チェーンリンク – スポンサードアフィリエイトリンク:スポンサードアイテムに使われているリンクは、ブランドが追跡し、インフルエンサーは売上から数パーセントを受け取る。
•ドル紙幣 – インフルエンサーによる自己購入:ブランドには関連しておらず、製品の代金はインフルエンサーが支払った。
マーケターらによると、このレベルの透明性はTikTokによって普及した幅広い本物のコンテンツを重視する若い視聴者のあいだで特に高く評価されているという。Z世代は、Google検索ではなく、YouTube、TikTok、Discord(ディスコード)、Telegram(テレグラム)、Twitch(トゥイッチ)などのソーシャルメディアを発見のための検索に使う傾向がある。Z世代は製品の推奨やアフィリエイトリンクを簡単に見つけられるようにしてくれるインフルエンサーに頼っている。
ホライゾン・メディアによると、Z世代の消費者の64%がブランドからのパーソナライズされたエクスペリエンスも望んでいるという。したがって、ブランドは、インフルエンサーが自分のチャンネルの自然な流れに沿って、自分のスタイルやオーディエンスの期待に沿うコンテンツを作成できるようにすることが良いと思われる。
このインフルエンサーグループは、チュートリアルなどの情報ビデオを投稿するのがもっとも一般的である。彼らの動画の40%はチュートリアルか、ヒントのカテゴリーに分類される。一方、この指標内のほかのインフルエンサーはそのようなタイプの動画を24%しか投稿していなかった。この4人のインフルエンサーはオーディエンスから信頼できる美容の専門家と見なされており、製品使用についての詳しいチュートリアルやヒントが求められているため、これらのインフルエンサーは、ブランドにとって親近感と顧客ロイヤルティを構築するための強力なツールとなり得る。
ブランドに広く注目を集めるのに最適
タティ・ウェストブルック氏、アリーシャ・マリー氏、ジェフリー・スター氏、ハイラム・ヤーブロ氏、リア・ユー氏
何百万人ものチャンネル登録者を抱えるこれらのメガインフルエンサーは、認知度を高めて、さらに広範囲で一般的な評判を構築したいと考えているブランドにとって最適なパートナーである。
メガインフルエンサーとのパートナーシップはコストが高くなる可能性があるが、特に小規模なブランドや新規ブランドの場合には、製品やブランドに幅広い社会的認知をもたらしてくれる。このようなクリエイターが動画で獲得する平均視聴回数、コメント数や「いいね!」の多さからわかるように、製品やブランドに対する関心が高まる。
小規模なチャンネルと比較したエンゲージメントスコアを見ると、これらのインフルエンサーの大規模なオーディエンスがエンゲージメントに関してはるかに消極的なことがわかる。小規模ながらエンゲージメントの高いインフルエンサーと比較すると、メガインフルエンサーのエンゲージメント率は低いように見える。しかし、小規模チャネルと比較した総エンゲージメント数を見ると、生の結果ではほかのインフルエンサーグループをはるかに上回っている。以下のグラフに見られるように、平均で4倍のビュー数とコメント、そしてほぼ3倍の「いいね!」の数を獲得している。これらのインフルエンサーの強みは、たとえそのエンゲージメントが最終的には膨大な購読者のうちのほんの少数によるものであったとしても、純粋な数とリーチにある。
広告主にとってのもうひとつの課題は「For You」ページのアルゴリズムである。このアルゴリズムでは、ブランドの動画がユーザーの画面に表示されるかどうかは保証されない。しかし、これらメガインフルエンサーらは人気と平均視聴者数の高さにより、視聴者に対して特定の動画を集中させるアルゴリズムの制限をしばしば回避することができる。YouTubeは「バイラルになるにふさわしい」動画をプッシュする可能性が高い。そのような動画にはスポンサードコンテンツが含まれていることが多い。
インスタグラムはTikTokに対抗するために、最近アルゴリズムを変更し、ユーザーの過去の動画視聴や興味に基づいてインスタグラム上のコンテンツをランク付けして、どのコンテンツがどのような順序で表示されるかを決定した。「大勢の人々がランキングを懐疑的に思っていることは承知している」と、インスタグラムのCEO、アダム・モッセーリ氏は自身のインスタグラムに投稿した動画で述べている。「しかし、インスタグラムを使っているすべての人にとって、ランキングはインスタグラムの価値をいっそう高めるために本当に役立つものだ」。
しかし、別の視点からYouTubeなどのプラットフォームに注目している人もいる。ソーシャルメディア制作会社ハロー・ゼア・コレクティブ(Hello There Collective)の創業者、ジェシー・ルビンスタイン氏は、「TikTokのアルゴリズムのおかげで、ユーザーは少数のインフルエンサーだけに(視聴時間と注目を)投資するのではなく、『For You』ページで新しいコンテンツを探索するようになった」と1月上旬に述べている。「これは、YouTubeでのインフルエンサーとのインタラクションとはまったく異なっている」。
ブランドがある程度コントロールできるように、YouTubeのアルゴリズムはユーザーに表示されるおすすめの70%のみを推進している。残りの30%はトレンド動画やパフォーマンスの高い動画によって決定される。
TikTokやインスタグラムは、スクロール中にユーザーの前に短編コンテンツの無限のストリームを常に表示するアルゴリズムに依存している。それとは異なり、YouTubeのアルゴリズムは、視聴時間を用いた動画パフォーマンスも測定し、メガインフルエンサーと検索との関連性を促進している。人気のあるチャンネル、特に登録者数が多いチャンネルはアルゴリズムのノイズを突破してホームページに表示される可能性がある。教育的な動画や情報動画は簡単に見つけられるようになり、関連性によってフィルタリングも容易になる。
たとえば、ユーザーがガーデニング技術についての動画を検索したことがなかったとしても、マイクログリーン農業に関するバイラル動画がホームページに表示される可能性がある。たとえユーザーが目にしたすべてのガーデニング動画に対して「嫌い」や「興味なし」を示したとしても、そのテーマについてのバイラル動画が表示される可能性はゼロとはいえない。同じように、ここで挙げられているインフルエンサーは、有名な自分の名前により再生回数を集め、アルゴリズムを突破してオーディエンスの興味を超えたバイラルな瞬間を作り出すことがしばしばあり、「視聴者が見たい動画を作れば、アルゴリズムにより報われる」というYouTubeのキャッチフレーズを体現している。
Glossy+リサーチは、セルフレス・バイ・ハイラム(Selfless by Hyram)の創業者であるハイラム・ヤーブロ氏(YouTubeでは@Hyram、登録者数455万人)と対談し、オーディエンスの関心を集めるスポンサードコンテンツの作成について話を聞いた。ヤーブロ氏は次のように語った。「通常、ブランドは私が提案するビデオコンセプトに対しては非常にオープンだ。だが、私は常に(コンセプトが)ブランドと一致していることや、自分のチャンネルですでに取り上げている一般的な内容やトピックとうまく機能することを確認したいと思っている」。
ブランドはこれらのインフルエンサーの専門知識を活用して、オーディエンスの心にもっとも刺さる動画コンテンツや音声のタイプをうまく利用できる可能性が高い。どのタイプのスポンサードコンテンツがもっとも高いエンゲージメントを獲得するかという質問に、ヤーブロ氏は「投稿してオーガニックに取り上げようと自分が計画していたコンセプトに対して、ブランドがもっとオープンマインドであると、そのような動画のパフォーマンスが最高になる傾向があるのに気づいた」と答えた。「これは、ブランドが私にフォーカスしてほしい具体的なトピックがあるときとは対照的だ。そのような動画が必ずしもオーディエンスから求められているとは限らないし、そのトピックがどの程度興味を持たれるかは事前に測定できなかったりして、そのような動画へのエンゲージメントは低くなる」。
YouTubeのアルゴリズムで最高のパフォーマンスを発揮するには、強力なキーワードを使い、クリエイティブなサムネイルで惹きつけ、オーディエンスとの関係を育むことがベストだ。これらメガインフルエンサーの多くは彼ら自身がブランドオーナーでもある。彼らはスポンサードコンテンツの作成とオーディエンスを惹きつけることに精通しており、トレンドのバズワードを使って1つのプラットフォームで紹介されている動画をほかのプラットフォームで宣伝しては、オーディエンスが自分たちの動画を簡単に検索して見つけられるようにしている。
広いリーチを持つこのインフルエンサーグループは、「2022年のベストドラッグストアメイクアップ」や「2022年のオイリー肌に最適なモイスチャライザー」となどのように、タイトルに「ベスト」や「お気に入り」などのキーワードを含むスポンサード動画をもっとも頻繁に投稿している。ほかのグループが(投稿の)26%であったのと比較して、このグループは60%だった。これにより、オーディエンスは特定の製品のおすすめを探しているときにこれらの動画を見ることが可能になり、またブランドパートナーシップを含む長尺動画の宣伝も行われる。指標内のほかのインフルエンサーグループと比較して、このグループは調査対象期間中にレビューやチュートリアルを投稿する傾向は低かった。
有益な無料コラボレーションに最適
キャロリン・ヒロンズ氏とローズ・シアード氏
キャロリン・ヒロンズ氏(YouTubeでは@Carolinehirons01、登録者数25.5万人)とローズ・シアード氏(YouTubeでは@makeupbyrosexoxo、登録者数8.15万人)は、美容教育者であり、業界のベテランだ。訓練を受けたエステティシャンとメイクアップアーティストとして、2人は、飽和度が高くしばしば戸惑いを感じる美容市場において貴重で役立つ技術知識などの美容情報を伝えることに注力している。ファッションと比較して、メイクアップ技術やスキンケアトリートメントなどを含む美容は、新規消費者にとっては学ぶのには労力や時間がかかることが多い。
この指標は2022年に投稿された動画からデータを収集したことを念頭に置いてほしい。ヒロンズ氏とシアード氏両者はデータ収集期間中に投稿した動画の数は非常に少なく、それぞれ3本と4本だった。それゆえに2人のスコア、特にオーディエンスリーチについては、ここで取り上げたほかのインフルエンサーよりもはるかに低かった。結果としてエンゲージメントが散発的になる可能性があるため、Glossyの調査モデルではこの低い投稿率が考慮されている。
それにもかかわらず、プラットフォームのアルゴリズムは個別のユーザーエクスペリエンスとニッチな関心にフォーカスしているため、これらのタイプのインフルエンサーを考慮することは重要である。マーケターにとって、このようなインフルエンサーは、特定のオーディエンスを対象に直接の対話の機会を提供する。「(複数のプラットフォームは)親密なインタラクション、つまりコミュニティの雰囲気をもっと感じられる個人的なつながりにさらに重きを置いている」と、パフォーマンスマーケティングエージェンシー、リプライズ(Reprise)のソーシャル部門グローバル責任者のジェイソン・コトリーナ=バスケス氏は語っている。「誰がもっとも熱心なコミュニティを構築できるかという、ちょっとした競争のようなものだ」。
さらに、ヒロンズ氏とシアード氏は従来のプロモーションコンテンツに自身のプラットフォームを使ってはいなかった。ヒロンズ氏は、JVNヘア(JVN Hair)創業者のジョナサン・ヴァン・ネス氏とオスキア(Oskia)の創業者、ジョージー・クリーブ氏というブランドオーナーらを自分のプラットフォームに招いた。しかし、動画はスポンサードではなく、情報提供のみを目的としていることが動画の説明から明らかだった。たとえば、ヴァン・ネス氏との動画で、ヒロンズ氏は「広告ではない。楽しかった!」と記している。
今年、ヒロンズ氏はすでに、ジョアンナ・バルガス氏、レネー・ルーロー氏、タッチャ(Tatcha)の創業者であるヴィッキー・ツァイ氏、ジョーダン・サミュエル氏らさまざまなスキンケアブランドのクリエイターをチャンネルに迎えている。ヒロンズ氏はレビューやチュートリアルによって従来の製品広告を提供するのではなく、起業家らが自社ブランドのミッションを共有したり、視聴者を教育するためのプラットフォームを提供している。
シアード氏は、データ収集期間中にはYouTubeショートのみを投稿していた。はっきりとした広告掲載はなく、アフィリエイトリンクも含まれていなかったため、これらの動画がスポンサードであったかどうかは不明だった。Glossy+リサーチではこれらの動画をブランドパートナーシップとは見なしていない。ショート動画は彼女のTikTokアカウントにも投稿されている。同氏はTikTokでは130万人を超えるフォロワーと2580万の「いいね!」があり、(YouTubeよりも)もっと頻繁に投稿している。
シアード氏の場合、60秒未満の動画は多くのエンゲージメントを獲得し、オーディエンスベースを拡大している。しかし、この2カ月間は、完全なマスタークラスやメイクアップチュートリアルを含む長尺動画をYouTubeに投稿する頻度が増えている。1年間の活動休止後に投稿した最初のスモーキーアイのマスタークラスは、彼女の復帰を待ち望んでいた視聴者により1.1万回視聴された。
シアード氏のようなインフルエンサーは、フォロワーを獲得してオーディエンスと関与するために短編コンテンツを使っている。動画を一口サイズに縮めることで、それが抜粋された長尺動画に視聴者や登録者を惹きつける機会が生まれる。これは、このようなカジュアルなスタイルの動画を録画したり編集できるクリエイターにメリットがあるだけではなく、ブランドが動画制作の高いコストを回避するのにも役立つ。
この2人は、昨年、スポンサードコンテンツを投稿しなかったが、だからといってブランドが将来のブランドパートナーシップのために彼女らにアプローチすべきではないということではない。このようなインフルエンサーと提携するメリットには、彼らがブランドに提供できる専門的な「お墨付き」と、断片化されたソーシャルスペースのニッチなコミュニティへのアクセスがある。このようなインフルエンサーとのスポンサード動画に代わる方法としては、前述したJVNヘアの例のような無料のコラボレーションがある。このようなタイプのコラボレーションには参加する人々に相互のメリットがあるが、インフルエンサーには高い自由度があり、ブランドのコントロールが低くなる可能性はある。
ニッチなコミュニティを持つインフルエンサーと直接協働することは、オーディエンスの共感を呼ぶものをブランドが特定するのに役立つ。マーケティングコミュニケーション会社、カーマイケル・リンチ(Carmichael Lynch)のソーシャル責任者ケイティ・テネロビッチ氏は、特定のニッチなオーディエンスから見たいと思われているコンテンツの「ルック、トーン、雰囲気」を一致させることが重要だと述べている。「オーディエンスにとってのニッチなパッションポイントが何であるかを特定できれば、コンバージョンにつながる方法で彼らと対話することがはるかに容易になる」。
このようなタイプのインフルエンサーと最大限のコラボレーションを行うためには、ブランドが、インフルエンサーがオーディエンスにとってもっとも自然な方法で彼らに語りかけられるようにすることが有益だ。ヒロンズ氏とシアード氏にとっては、専門知識に裏づけられた詳細なチュートリアルとブランド創業者へのインタビューが最適である。
結論
ブランド戦略に最適なインフルエンサーのタイプ
ーー支出額あたりで高いエンゲージメントを得るのに最適
•小規模な購読者ベース
•動画の再生回数やコメント、「いいね!」による高いエンゲージメント
•スポンサードコンテンツと非スポンサードコンテンツにおいて信頼できる情報源
ーー信頼性が高く確立されたブランドパートナーシップに最適
•中規模の購読者ベース
•YouTubeでの高いオーディエンスリーチとブランドプロミネンス
•確立されたブランドパートナーシップ手段とオーディエンスに向けた透明性
ーーブランドに広く注目を集めるのに最適
•大規模な購読者ベース
•非常に高いオーディエンスリーチ
•経験豊富なブランドパートナーであり、ブランドのガイドラインを遵守
ーー有益な無料コラボレーションに最適
•知識のある小規模な購読者ベース
•動画のコメントセクションでの高いエンゲージメント
•製品やブランドに専門家の「お墨付き」
DANIA GUTIERREZ(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)