春頃になると、書店にプロ野球選手のプロフィールとデータが載った冊子がドサッと置かれているのを目にする。
よくよく見てみると、いくつも種類があるようで、内容も同じようなデータが並ぶものの、その見せ方が若干違っていたりと、個性があるようだ。
こういった「データが収録されている書籍」にめっぽう弱い(好き)ので、どうしても気になってしまう。
内容の方向性は好きだが、野球がまったくわからない
なんと言えばよいのかわからないけれど、プロ野球選手の顔写真、成績、プロフィール、各種データを一冊に集めた本がある。選手名鑑とでもいうのだろうか。
ベイスターズファンの妻が、この選手名鑑を毎年買って来るので、家に数年前のものかから何冊かある。
ぼくは基本的に「情報がずらりと並んでいる本(郵便番号簿、辞書、地図、紳士録など)」が大好きなので、初めてみたとき「こういう本大好き!」となった。しかし、大変困ったことに、野球にまったく興味がなく「本として方向性は大好きなのに、中のデータのおもしろさがわからない……」という、アンビバレンツな心持ちに陥っていた。
そんな、自分にとって好きなのか興味がないのか、わけがわからないものが、毎年春になると書店にずらりと並んでいる。
今までは「あ、あるな」ぐらいの気持ちで眺めていたのだが、よく見ると、選手名鑑にもいくつか種類があるということに気づいた。
同じような情報を載せた本が何種類も出ているということに大変興味を引かれたので、文庫本サイズのものに限って、ぼくが本屋で見かけたものをかたっぱしから全部買ってみた。
ぼくが書店で購入したものは、全8種類。タイトルがどれも似通っていて、なにが何だかわからなくておもしろい。今回買った選手名鑑のタイトルだけを抜き出してみる。
『2023プロ野球選手写真名鑑』
『2023プロ野球プレイヤーズファイル』
『2023スポニチプロ野球選手名鑑』
『2023プロ野球写真&データ選手名鑑』
『プロ野球選手データ名鑑2023』
『プロ野球12球団全選手完全名鑑2023』
『2023プロ野球選手ガイドブック』
『プロ野球カラー名鑑2023』
ほぼ全てに、2023(西暦)、プロ野球、選手、写真、名鑑の文言のいずれかが入っており、バルト三国なみに見分けがつきにくい。表紙も、ひとつを除くと赤っぽいのと黄色っぽいのの2種類しかなく、わかりづらくておもしろい。
いったいどういうことなんだろう。
せっかくなので、各誌見比べてみての寸評を書き添えておきたい。が、これはあくまで、野球の知識がない素人の視点で調べたものであることはお断りしておきたい。
基本的にどの名鑑も、選手の顔写真、名前、生年月日、身長体重、出身地、出身校、経歴、昨年までの成績、生涯成績、年俸などが一覧で掲載されている。
各誌、データの見せ方に違いがあり『2023プロ野球写真&データ選手名鑑』と『2023プレイヤーズファイル』などは、データ部分がビジュアル化されており、若干見やすいかもしれない。
価格はいずれも数百円程度で、600円を超えるものはなかった。
特筆すべきは、中日スポーツ(発行:中日新聞)の『プロ野球選手ガイドブック』。
このご時世にもかかわらず、1冊230円という価格で驚いてしまう。書店で売っている全書籍の中でいちばん安い可能性がある。
『プロ野球選手ガイドブック』は、安いだけではなく、すべてドラゴンズ中心の編集となっており、選手の顔写真もドラゴンズの選手だけ若干デカい。
もちろん、チームの並びもドラゴンズが最初であり、日程表もドラゴンズのみはカレンダー方式、球場案内もナゴヤドームのみ掲載という、ドラゴンズファーストの作りとなっている。
※通常、球団の並びは、どの名鑑も前年のリーグ成績の順位順で並んでおり、日本一になったチームのリーグから並んでいる
今回、ぼくが発見できなかっただけで、デイリースポーツ発行のタイガースファースト版の選手名鑑もあったりするのだろうか? ご存知の方いらっしゃいましたら、お知らせください。
マニアに昔の選手名鑑を見せてもらう
さてここで、選手名鑑を毎年購入している人に登場してもらう。当サイトウェブマスターの林さんと、ライター・イラストレーターのべつやくさんだ。
べつやくさんは、ヤクルトスワローズ、林さんは(どこかと言われれば)千葉ロッテマリーンズのそれぞれファンであり、毎年選手名鑑を購入しているという。
林さんが、自宅に保管してあるとっておきの古い選手名鑑を持ってきてくれた。
いちばん古いものは1988年のものからある。
かつて『ベストプレープロ野球』という、野球選手のデータを打ち込んで、野球をシュミレーションさせるゲームがあった。
林さんは、いちどカセットが壊れて、新しく買い直すほどこのゲームにハマったらしく、選手データを打ち込むときの参考資料として選手名鑑を買っていたという。
べつやく:この時代のものは、データも少なくて、データが一覧表になってて、顔写真もそれだけがズラッと並んでる。
林:(88年のやつは)球場で買ったようなやつかな……。ベン・ジョンソン!
林:(89年のもの)この時代からは、今みたいに、選手別にデータがまとまるようになってるね。
昔の選手紹介にどんな項目があったの見てみると、いわゆる「おおらかな時代だったな」という感想しかでてこない。
まず、選手の住所が、部屋番号まで載っている。べつやくさんの話によると、ファンレターを出したいファンの便宜を図るためのものだという。そのほかに3LDKだとか、1DKといった住宅事情。家族の名前、仲人が誰か、愛車はなにか、お酒の量、趣味など、野球選手になると、そんな情報まで冊子に書かれるのかと思うほどの情報が載っている。
良いとか悪いとかではなく、こういう時代だった、ということだ。
すこし時代が進む(90年代に入る)と、住所が消えた代わりに、特技だとかタバコの喫煙量(おそらく1日)、クセ、小遣い、愛称ひとことという項目が増えている。
林:大洋の田代、オバQってニックネームだったから、オバQって書いてあるけど、続けて「もうひと花」とか書いてあるから、わけがわからない。
古賀:トラ。オバQもうひと花という愛称があったみたいになっちゃってる。
べつやく:これは(引退間近だけど)もうひと花さかせろ、という寸評みたいなことだろうね。
林:加藤博一の趣味が「ゲタ集め」ってどういうことだろうね。
西村:なぜゲタ??
古賀:ゲタって集めるものだったんだ……。
林:(加藤博一は)若くして亡くなっちゃったんですけどね。喋りがうまいからタレント的によくテレビ出てたけど。
べつやく:病気だったかな、足速くてね……足速い顔じゃないけど。
西村:足の速さ顔に出ますかね。