オープンエクスチェンジまたはオープンマーケットプレイスのプログラマティックは、「メディアバイヤーのクライアントを間違った場所へと導く、低品質なインベントリのあいまいで紛らわしい供給源」という評判を覆すことができるのだろうか。
その魅力はもっぱら、オープンマーケットのような規模を持たないことの多いプライベートマーケットプレイス(PMP)に比べて、リーチ当たりのコストがはるかに安い点に尽きるのだろう。それとも、一部の情報筋が言うように、両方の選択肢を組み合わせた「オークションパッケージ」が中間的な解決策となるのだろうか。
米DIGIDAYは、大手エージェンシーや独立系エージェンシーに属する複数のプログラマティック専門家に、オープンエクスチェンジのプログラマティックにおける問題点を回避する方法と、PMPが必ずしも解決策にならない理由について話を聞いた。
Advertisement
なお、この記事において、オープンマーケットのプログラマティックとは、PMPを通じて販売されていないもの全般を指すこととする。オープンマーケットのプログラマティックへの投資は、PMPよりはるかに多くの労力を必要とするが、そのぶん見返りはあるというのが業界の共通認識であることは間違いない。ほとんどのバイヤーはPMPにより多く投資しており、それは今後も変わらないだろうが、オープンエクスチェンジにはオープンエクスチェンジなりの役割があるのだ。
オープンオークションの価値
「オープンオークションに品質上の懸念があることは確かであり、オープンオークションで入手できるインベントリーの質は、ここ数年で向上するどころか低下している」と、ジャウンスメディア(Jounce Media)の創業者でプログラマティック専門家のクリス・ケイン氏は話す。「オープンオークションは、詐欺的なインベントリーやヘイトスピーチなど、低品質または問題のあるインベントリーを事前にフィルタリングする努力がなされているにもかかわらず、依然として非常に質の低いオークションの供給が絶えないとの認識が、バイヤーの側に広がっている」。
バウンテアス(Bounteous)のメディア担当シニアバイスプレジデントであるジリアン・テート氏も同意見だが、「オープンエクスチェンジを最適化して価値をもたらす方法もなくはない」と指摘する。
「『良質な』インベントリーはリアルタイム入札(RTB)の『ウォーターフォール』オークションではなく、ヘッダー入札に投入される可能性が高いため、オープンマーケットにはページプレースメントが下がるリスクがあるのは確かだ。しかし、いかなる種類のオークションや入札ベースのプログラマティックでも、肝心なのはオーディエンスだ。そのため、DSPやアドサーバーを利用して重複を監視しながら、オーディエンスに対して複数のインベントリーソースを試すことは価値があると思う」。
「たとえば、傾向スコアが高いリピーターのオーディエンスに対しては、フリークエンシーキャップ(ユーザー1人に対する広告表示回数の上限)が低いPMPやそのほかの高額なインベントリーより、フリークエンシーが高いオープンマーケットのインベントリーを選択する方法もありだ」としたうえで、テート氏は次のように話す。「オープンマーケットでは、ビューアビリティ(可視性)も重要な指標になるため、ビューアビリティとブランドセーフティの基準を満たしてさえいれば、インベントリーから効果を得ることは可能だと思う」。
オークションパッケージの形成
むろんブランドセーフティの確保は最重要事項であり、プログラマティックの周辺にはその支援に特化した業界も存在する。しかし、ノーバス(Novus)のバイスプレジデント兼マネージングディレクターであるポール・ディジャーナット氏は、「オープンマーケットへの投資で成果を得るためには、担当者とそのチームに、より多くの時間と労力が求められる」と指摘する。
「我々の側でより多くの精査と作業が必要になる。安価なインベントリーであるため少ない時間で済むはずなのに、おかしな話ではある」とデジャーナット氏は言う。「実際には困ったことが起きないように、より多くの時間をかけて精査している。しかし、それがクライアントに価値をもたらしている。インベントリーの構成が向上し、コストとリターンのバランスがとれた、よりよいメディアプランを提供できるからだ。我々としては今後バイイングプラットフォームへの感度を高め、DSPや業界のサードパーティから、さらに多くの利用可能なオプションを取り入れるつもりだ」。
エクスベラス・メディア(Exverus Media)でプログラマティック担当ディレクターを務めるショーン・エドワーズ氏も、「インベントリーのパフォーマンスを確保しつつ、関連性がありキャンペーンに価値をもたらすインベントリーを選別するのはバイヤーの責務だ」と話す。
その結果、一部バイヤーのあいだで「オークションパッケージ」と呼ばれる中間市場が形成されている。ジャウンスメディアのケイン氏によると、オークションパッケージとは数十、あるいは数百の異なるパブリッシャーをひとつのターゲティング可能な供給プールにまとめた「ディールID」であり、高品質の基準を満たすように事前審査された多様なインベントリーを大規模に提供するものだという。
「バイヤーのあいだでは、中間的なソリューションが必要だという意識が高まっており、アドテク企業のあいだでは、そうしたソリューションを提供しようとする動きが活発になっている」とケイン氏は述べ、「DSP、エクスチェンジ、オーディエンスデータプロバイダー、アドネットワークがこぞって、その種のソリューションを提供しようと先を争っている」と指摘する。しかし今のところ、最も有利な立場にあるのはエージェンシーだという。
PMPのさらなる拡大
オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group:OMG)でデジタルアクティベーション担当マネージングディレクターを務めるライアン・ユーサニオ氏も、オークションパッケージには価値があると見ている。「間違いなく、我々のクライアントに今すぐにでも役に立つ。レバレッジとスケールの面で恩恵が大きいからだ。その一方で、個々のパブリッシャーのレベルに至るまで、キュレーションの恩恵を受けることもできる」と同氏は話す。
それでも、OMGはプログラマティック投資の大部分をPMPを通じて行い、すべての主要プレーヤーと取引することでレバレッジを確保しているという。「プログラマティックを手がける大手パブリッシャーのうち、上位100社以内で我々がPMPを設けていないところはひとつもない」とユーサニオ氏は述べている。
そして、PMPこそプログラマティックが今後も成長し続ける場所だといい、「その数は年々増え続け、まだ減少に転じたことはない」と言い添える。「かなり成熟した市場だが、それでもなお拡大を続けている」。
[原文:Media Buying Briefing: Debating the value of open-exchange programmatic vs. PMPs]
Michael Bürgi(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)