前回、いわゆる「島田掛け(島田そば)」について勉強した。現在の「家そば放浪記ランキング」1位のヤマダイ『手緒里 紫峰そば』も島田掛けによる島田そばであり、それは製法であり、スタイルであると──。
そして今回、なななななんと! またもU字構造の “島田掛け” による干し蕎麦が登場。意外とメジャーだったのか島田掛け。
しかし今回の島田掛け蕎麦は、なにも島田掛けだけがウリではない。パッケージには、これでもか! と魅力的な文言が次から次へと並んでいる。
まずは商品名にもある「山都産そば粉使用」。福島県喜多方市の山都町は全国でも指折りの “そばの里”。もちろん名産は山都そば。「やや白っぽく透き通った色合いでしこしことした独特の歯応え」が特徴らしい。
そんな山都産そば粉を使用したうえ「石臼碾き(びき)」。
しかも、とどめとばかりに「島田掛けの低温乾燥」であの形状。こだわりにこだわり、こだわり抜いている雰囲気を感じるが……はたして実力はどうなのか?
それではさっそく……
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
5分〜7分ゆでて……
完成。
して、そのお味は──
……実は、茹でたり、盛り付けている時から「風格」を感じていた。堂々としているというか。ふてぶてしいくらいまでの風格を。
で、食べて、「うおっ……」となった。
「そば」である。
完全に「そば」を食わせに来てる「そば」なのだ。麺という意味の「そば」ではなく、穀物(粉)の「そば」を食わせに来ている蕎麦なのだ。
ものすごく感じるそばの味。集中したら「そば粉そのもの」さえ感じてしまうほど。一口食べるごとに「お〜っと」となる。
また、しっかりパッケージの指示通りに5分茹でたが、それでもけっこう かため であった。しかし、そのかたさもまた孤高の風格につながっている。
気づけはペロリと食べてしまっていた。
これはうなる。うならざるをえない……。
今のプロレス界に、地味な関節技のテクニシャンとして名高かった藤原喜明や木戸修の全盛期バージョンが乱入してくるくらいの本格派というか。
映画「七人の侍」で例えるなら久蔵(きゅうぞう)的な。
そう、つまりは「ガチ」なのだ。震えるほどにガチンコ。
なので万人受けはしないと思う。ただ、モーレツなインパクトはあった。切るか切られるかという意味での「真剣」みたいな迫力。ちょっと変態的なところもあるかもしれない。狂気すら感じるガチンコさ。
もはや “禅” の域に達してる気さえしてくる。己を律するため、一年に一度は食べたい。年越しではなく、年始に食べたい。
いずれにしても、背筋がビシッと伸びる蕎麦である。こんな蕎麦は、初めてだ。
参考リンク:いいでとそばの里「山都そばについて」
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24