D2Cと卸売 、どちらを強化するべき?D2Cに軸足を移したナイキ のその後の結果は?

DIGIDAY

ファッションブランドにとって、D2Cと卸売のどちらに力を入れていくべきかという判断はいまやかなり複雑な問題だ。2010年代初めに起きたD2C革命の頃は、あいだに入る小売業者との提携をやめて直接販売すれば、ブランド側の利益率を高めつつ商品をより安い価格で提供できるというのが一般的な考えだった。

こうした見通しに刺激され、ワービーパーカー(Warby Parker)やオールバーズ(Allbirds)といったブランドが台頭し、さらにナイキ(Nike)のような巨大企業の戦略にも影響が及んで、ナイキは2020年に卸売提携を削減して直接販売を増やしていく計画を実施した。だが、2023年になったいま、現実ははるかに複雑な様相を呈している。

D2C事業の運営コストが上昇したことで、数々の不利な点を持ちながらも卸売の魅力が増している。D2Cの導入が実際に利益増大につながっているか、BMOキャピタルマーケッツ(BMO Capital Markets)が2021年に調査を行ったが、調査結果によると、D2Cのほうが利益率は高くても新規顧客獲得などに余分なコストがかかるため、最終的な純利益は両モデル間でほぼ変わらない場合が多かった。

3月にBMOのシメオン・シーゲル氏は「数多くの調査を実施したが、そこでわかったのはD2Cに軸足を移すことがすなわち利益率の向上ではないということだった」と述べている。「D2Cはあくまでも販売チャネルのひとつに過ぎず、いつでも重要なのはどこで売るかではなく、商品そのものだ」。

ナイキは、同社の卸売の売上高が30%拡大し、25%の拡大を見せた直販事業を追い越したと3月に発表している。過去3年間、D2Cに特に重点的に力を入れてきたにもかかわらずの結果だ。

アルチュザラ(Altuzarra)のCEO、シラ・スー・カルミ氏は5月第3週にGlossyのeコマース・フォーラムで講演し、アルチュザラではD2Cと卸売の両方に価値を見いだしていると語った。その一方で、卸売では割引が厄介な問題になるという。

「卸売では値下げをしない事業展開が本当に難しいこともある」とカルミ氏は述べた。「卸売先の小売業者の価格設定をこちらでコントロールすることはできない」。

もう片方のD2Cの場合はプライスポイントを下げてもどうにかなるため、エントリー商品に都合がいい。カルミ氏の話では、アルチュザラのジェンダーニュートラルな商品ラインであるアルチュ(Altu)をD2Cで販売しているのは、それが若年層を対象にし、スタンダードな商品ラインより数百ドル(数万円)低い価格で設定されているためだという。

だが、D2Cのコストが高くなっていることで卸売に戻るブランドは多い、と話すのはカインドリー(Kindly)とアドアミー(Adore Me)というD2Cブランドを立ち上げたフルストライドベンチャーズ(Full Stride Ventures)だ。同社CMOのキャロライン・レビー氏によると、デジタルマーケティングにかかるコストが2022年75%上昇したのに比べ、卸売は無料宣伝のような役割を果たすため、利益率は低くても自由になる金額は増える。

「市場は変わってしまった」とレビー氏は話す。「いまはD2Cブランドがあまりにも増えてしまい、新規顧客の獲得にかかるコストがとても高くなってしまった。そこで卸売の出番となる。大手の店舗に商品を出すだけで、低コストでたくさんの人の目に触れることができる」。

[原文:As the market fluctuates, fashion brands are weighing the pros and cons of DTC vs. wholesale

(翻訳:SI Japan、編集:山岸祐加子)

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